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[書評]『勉強の哲学 来るべきバカのために』/千葉雅也(文春文庫)

本著はフランス現代思想を手掛かりとして、「勉強」という一つの大きなテーマについて考察したものである。前半では主に「勉強をする」とはどういうことか、ラディカルに勉強する過程でどのようなことが起こるか、そして勉強するにあたって覚悟すべきことは何かなどについて著者なりの考えが詳らかに述べられており、後半においては前半で説明された勉強に関する原理を我々がどう実践すべきかについて、特に技術的な視点から丁寧に書かれている。哲学そのものについて解説したり、自らの思想を説いてそれを哲学史の中に位置付けたりするな類の書とは異なり、本著は「誰にでも関わりのあること」について「哲学者の視点で見る・考える」ということをコンセプトにしているように感じられた。著者の文学的才たる豊かな表現力に裏打ちされた、一般的には難解なイメージもある「哲学的知」の鮮やかな記述には目を見張るものがある。分量・内容の双方に鑑みて大学一年生であっても読み進めやすく、「勉強」に関わる、あるいはこれからそこに気持ち新たに踏み出し「来るべきバカ」になろうとする全ての人にお勧めしたい一冊だ。(P)

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