ヒデ(Hide)

3年ほど前、脳幹部の「橋」から出血。生死の境を彷徨い、生還。その時の体験はこちらに綴り…

ヒデ(Hide)

3年ほど前、脳幹部の「橋」から出血。生死の境を彷徨い、生還。その時の体験はこちらに綴ります。元公立中学校英語教師。英会話スクールの講師、マネージャーなどを務め現在に至る。

最近の記事

闘病記(68) いつか全てが思い出になる日。

「ん〜っ。」 「あったま痛え…。」 「あぁ…。 夢か。」 「まじ!?遅刻じゃん!」 「学校(仕事)行きたくねー。」  「寝起きの第一声」と言うと大げさになってしまうが、目が覚めたときによくありそうな一言を、思いつくままにつらつらと書いてみた。(テレビドラマや映画で聴いたセリフが混ざっているかもしれない。)  因みに自分の寝起きの一声は、 「今日はどんな素敵な出会いがあるだろう?ワクワクするなぁ。」 「朝の空気って最高だ。肺が洗われるようだなぁ。」 「新しい朝だ‼︎よしっ。

    • 闘病記(67) ガッツポーズ。  

       書きたい(伝えたい)テーマを決めて、タイトルをどうするかで悩み、決定したら、タイトルやテーマにあったできるだけ多くの人の目に留まりそうな素敵な画像を探す。 このテキストを書くときに、いつも最初に行う、ちょっとした儀式のようなものだ。   今回もいつものように進めていたのだが、画像を探すところで行き詰まってしまった。「ガッツポーズ」で写真を探したのに、「これだ!」と思えるものが見つからなかった。と言うよりも、示された画像があまりに少なかったのだ。 「??」気づくまでに数分かか

      • 闘病記(66)人生の宿題の産物。

        このテキストのシリーズ64回「人生の宿題」が、思っていた以上にたくさんの人たちに読んでもらえてとても嬉しかった。   それに気を良くしたわけではないが、今回のテキストにも同じようなタイトルをつけた。いつもと少し趣向を変えて、後半に動画を2つ貼り付けてるので、忙しい方そちらだけでもご覧になっていただけるとうれしい。  あのテキスト「人生の宿題」の中で記した通り、自分はお世話になった理学療法士Tさんから、 「体の痛みは消えないかもしれないけれど、それを忘れてしまえる位に夢中に

        • 闘病記(65) 塵も積もれば山となり、埃のような些細な出来事の積み重ねが誇りの獲得につながる。

           リハビリ病院の朝は静かにやってきて、にわかに活気づく。起床の時刻とともに、それぞれの患者の「朝のルーティーン」が始まるからだ。 患者達のルーティーンが頭に入っているらしい看護師、介護福祉士の皆さんは、決して多いとは言えない人数で病棟を担当しているのに、流れる水のようにスムーズにサポートをしていく。  着替えをしていて、うまく動かない右腕が服の袖に入らないでいると、 「赤松さん、すぐそっちに行ってやってあげるからちょっと待っててね。」 と、斜め前のベッドに座ったおじいちゃんの

        闘病記(68) いつか全てが思い出になる日。

          闘病記(64)人生の宿題。

          「そろそろタイトルを変えようかな?それともサブタイトルがイカンのか…。」 「そもそも、『闘病記』と名付けているにしては病と闘っている場面が少ないし、サブタイトルは自分でもシュールすぎると感じることがあるな…。」 「もっと目を引いて、読めば必ず役に立つといった感じのタイトルにすれば良いのかな?例えば、『あつまれ脳出血サバイバー!リハビリ病棟徹底解剖!!』とか。」 などと、天井の木目を見つめてシワの数が少ない脳内で独り言をつぶやくうちに眠りに落ちていて、目が覚めたら午前11時だっ

          闘病記(64)人生の宿題。

          闘病記(63) 教粗誕生!?

           「涙を流し祈る君に俺は一体何をしてあげられる?そうさ、何もしてあげられない。何も。」  いやまぁ、ラブソングでも何でもないんだけれども。詳しくは後に譲るとして…。  リハビリ病院回復期病棟退院まで約1ヵ月を切った頃のことだ。自分を担当してくれる3名の療法士の方々は、さらに(それまでと比べても)「物分かりの良い人たち」になっていた。  なんというか、自分のことを、「◯び太くんを温かい眼差しで見守る◯ラえもん」みたいだった。  具体的には、退院を前に「あれもやってみたい。これも

          闘病記(63) 教粗誕生!?

          闘病記(62)ラッキーかもしれない。

           今回のテキストは、いつもの 「リハビリ病院入院生活について」的 なものではなくて、つい最近の出来事で「これは忘れないうちに書いときたいな。」と思ったことを記します。  もうかれこれ27年前のことになる。自宅のアパートで、とある保険会社の人から説明を受けていた。というのも、ある日、双子の兄から電話があり、 「生命保険の人にヒデのことを紹介した。連絡があると思うけど びっくりしないでね。外資の会社なんだけど、保険の内容が良かったから俺は 加入する。」 と、5秒後に自動消滅をしそ

          闘病記(62)ラッキーかもしれない。

          闘病記(61) 暴れん坊指将軍

           脳の「橋」と言う部位から突然出血し、約3週間の急性期救命救急病棟での入院生活を経て、リハビリ病院に転院してから約5ヶ月の月日が過ぎようとしていた。  ちなみに「橋」は「きょう」と読む。脳幹に位置し、「生命活動の全てを司る。」と言われている。出血をしてしまった場合、残念ながら亡くなる方が多い。助かったとしても重篤な病態になる場合がほとんどの中、自分は奇跡的に右半身の感覚麻痺と痛み、複視、眼振、右耳の聞こえ辛さという後遺症だけで済んだ。だけ、と書きはしたものの、結構たくさんある

          闘病記(61) 暴れん坊指将軍

          闘病記(60)真夜中のベリーロール

          「ベリーロール」と言う言葉をご存知だろうか。 「あー、ブル◯ンから発売されている焼き菓子ね。白くておいしいやつ。」と、思ったあなたはとても素敵。ただ残念ながらその焼き菓子は多分ホワイ◯ロリータではないかと。そんな素敵な勘違いをする皆さんのために、タイトルの写真をロールケーキにしてみました。  さてさて、本当の「ベリーロール」は走り高跳びの飛び方の1つだ。助走をしてきて踏み切った足とは逆の足を高く上げ、上体はほぼまっすぐに伸ばし、バーをちょうど顔の真下に見ながら越えていくと

          闘病記(60)真夜中のベリーロール

          闘病記(59) 出血。

           「赤松さん、昨夜どこかに頭ぶつけた?それとも、痒くて頭を掻き毟ったかな?」 介護福祉士の女性が心配そうに聞いた。ベッドで寝ぼけていた意識が急にしゃんとした。 「どちらも記憶にないなぁ。頭をぶつけてもいないし、特に頭が痒かったと言う記憶もないよ。」 そう言いながら上体を起こそうとすると、 「だめだめ、頭を強く打っている可能性もあるから動かないで。」 と言われ、元の体勢に戻された。「まずいことになった。これが脳幹からの再びの出血のトリガーになったらどうしよう。」自分は最悪の状況

          闘病記(59) 出血。

          闘病記(58) 信じてまうやろ。

           「回復などない。あるのは、喪失と絶望、そしてそれを乗り越えるための獲得だけだ。」  そう悟った。自分の能天気さと馬鹿さ加減に嫌気がさすとともに。ようやく腑に落ちた。いや、蹴り落としたといった感じだった。  リハビリ病院や、リハビリという治療において「回復」と言う言葉がよく使われる。病院や治療だけではない。ごく一般に用いられることが多い。(自分に電話をしてきた友人も、「若いから回復も早いだろうし。」と言っていた。)    自分にとって「回復」とは、「損われてしまったものが、元

          闘病記(58) 信じてまうやろ。

          闘病記(57) 巻き笛ピーヒャラ。

           前回紹介した、リハビリに使う「巻き笛」のことについて書く。  ある日の言語療法の時間。いつも通り、顔のマッサージ、顔の筋肉の運動、言葉の発音練習などを終えた後、言語聴覚士のMさんが、無邪気な笑顔とともに、 「懐かしいでしょう。ちょっと吹いてみてください。」 と、自分に巻き笛を手渡した。早速くわえて吹いてみた。少し強めに。 「ピー」と言う音にあわせて巻かれた紙の部分がシュルルと勢いよく伸びていくはずだった。が、実際には、 「プへー」と、間抜けな音がするだけで、巻かれた紙の部分

          闘病記(57) 巻き笛ピーヒャラ。

          闘病記(56) 巻笛

          「巻笛」をご存じだろうか。そう、手元の笛になっている部分を口にくわえ、強く息を吹き込むと、先端のくるくると巻かれた紙の部分が「シュシュシュシュッ」と伸びていき、息を吹き込むのを止めると「クルリンパ」と、元の巻かれた状態に戻るあれだ。昔は、縁日などで口にくわえて走り回る子供たちを見かけたものだった。中には、色違いの3本を口にくわえ、全力で走っている強者もいたなぁ。  ちなみに、タイトル上部のイラストで、少年が満面の笑顔で吹いているのがその「巻笛」。皆様、イメージを共有していただ

          闘病記(56) 巻笛

          闘病記(55) だめじゃん。

           リハビリ病棟にあるモデルルーム、ユニットバスの中で、少なくとも3回は声に出してつぶやいた。 「だめじゃん。」  前回記した「ぬるっと」に引き続き作業療法士Nさんの入浴のアドバイスは続いており、シャワーの浴び方について説明をしてくれていた。 「ところで赤松さんは椅子にドッシリ派ですか?床に直接ペタっと派ですか?」 「ペタっと派ですね。」(「ぬるっと」と言う表現で妙な免疫がついてしまった自分は、「ペタっと」はもはや普通の言い回しという感じ。) 「よかった。僕もペタっと派

          闘病記(55) だめじゃん。

          闘病記(54) ぬるっと

           学校の体育館の2倍はあろうかという大きさのリハビリ病棟。その中央に位置する生活訓練用のモデルルームの一角にあるユニットバスで「退院して、家庭に帰った後のための入浴の実習」を行っていた時のこと。 「今日はとても暑いですから、湯船にお湯を張るのはやめて、シャワーを浴びる実習だけにしましょう。」 と作業療法士のNさんが言う。 「浴槽の縁のところに湯船に出入りする器具がある時はそれを使ってくださいね。」 と、身振り手振りを交えながら手すりの持ち方などを説明してくれて、自分も「退院し

          闘病記(54) ぬるっと

          闘病記(53) お風呂together.

           ある日の午後、作業療法士のNさんと自分は、「モデルルーム」の中にいた。「使い終わった食器を、安全に食器棚に戻す。」という練習のためだ。なんとリハビリ病棟には患者の「退院して家に帰ってからの生活」がスムーズに行えるように訓練をするために、家の中を模したスペースがある。畳の間を含む1LDKの広さで、家具もセットされていて。初めて療法士のNさんから「モデルルームに行ってみましょう。」と言われた時は、「コントに使われるセットみたいな場所なのだろう。」と勝手に思い込んでいて「モデルル

          闘病記(53) お風呂together.