タイツ・競馬ライター【無料予想と馬のお話】

主にJRA重賞の記事を書いてます。 ①序文で名馬やレースにまつわるコラムを掲載。 ②過…

タイツ・競馬ライター【無料予想と馬のお話】

主にJRA重賞の記事を書いてます。 ①序文で名馬やレースにまつわるコラムを掲載。 ②過去10年のデータによる、当該レースの分析を行います。 ③推奨する馬を数頭紹介、イラストや数値で戦力比較。 初心者にわかり易く、玄人にもなにか気がつけるように、がモットーです。

マガジン

  • 優駿たちと「あなた」の物語

    主に今年に入ってから、予想とともに掲載してきた「序文」。 この馬のコラムをまとめてマガジンにしてみました。過去のものには一部加筆修正を加えてお届けします。 競馬ファンの「あなた」に読んでいただきたい。スターホースたちと読者の距離を近づけさせれるような、競馬をより身近に感じられるような、 そんな記事を目指します。

最近の記事

GⅠスプリンターズステース

序文:あの日見た花の名前を僕達は 唐突だが、貴方にとっての"特別な一頭"とはなんだろうか。 歴史に残る三冠馬か、壮絶な叩き合いを制したGⅠホースか、それとも初めて訪れた競馬場で払戻金をもたらしてくれた1勝クラスの馬か。 それぞれの楽しみ方がある競馬において、人それぞれに思い出に残っている馬がいる。それはどれだけ時を経ても、たとえ競馬を離れたとしても忘れることはない。思い出は思い出として残り続けるだろう。 ひとえに、サラブレッドの競走生活は短い。あっという間に終わりの時を迎え

    • GⅡオールカマー

      序文:君は無邪気な鉄の女王競馬の寄稿文において度々目にする言葉に「無事之名馬」がある。これは読んで字のごとく、競走馬を指して「能力が多少劣っていても、怪我なく無事に走り続ける馬は名馬である」という考え方を表した格言である。 この格言は昭和の作家であり、馬主としても活動していた菊池寛によるものとして有名だが、実際は時事新報社(福沢諭吉創設の戦前5大新聞)の岡田浩一郎によるものだった。岡田氏はこの造語を臨済宗の語録の中にある『臨済録』に求めており、その中の「無事之貴人(ぶじこれき

      • GⅡセントライト記念

        序文:暁の三冠馬 空の彼方に最後の軌跡。 2020年10月25日、京都競馬場で行われた牡馬クラシック3戦目、菊花賞を制したコントレイルは史上8頭目の三冠馬に輝いた。未だ記憶に新しい、新型コロナウイルス感染拡大下で行われた未曽有の年の出来事だった。無観客開催措置が解除されたものの、解放された席数は僅か700余り。関係者を含めても例年とは比べるべくもない、静けさ漂う京都競馬場になってしまった。 歴代三冠馬の中ではシンボリルドルフ、ディープインパクトに次ぐ史上3頭目の無敗による達成

        • GⅡ札幌記念

          序文:奔流の因果律 サラブレッドの血統は川の流れによく似ている。 競馬はブラッドスポーツである。その競技が産声を上げてから間も無くして、源泉から「血統」というひとつの流れが生まれた。最初それはごく僅かな、小川にも満たないような小さな流れだった。競馬が続けられていく中で、流れもまた脈々と血を繋ぎ、いくつもの支流と重なり合い、次第に大きな流れへと変貌を遂げていった。父から子へ、子からそのまた子孫へと受け継がれ続けるその「血統」という流れは、いま多くの者を熱狂させる激流へと進化し

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        • 優駿たちと「あなた」の物語
          20本

        記事

          GⅢアイビスサマーダッシュ

          序文:照星と照門 第二次世界大戦の勃発からちょうど3か月目にあたる1939年11月30日。北欧諸国への圧力を強めていたソビエト連邦は、この日フィンランドへの侵攻を開始。ソ連側は和平を求められること想定し一大戦力を投入したが、フィンランド軍は徹底抗戦の構えをみせた。 世にいう「冬戦争」の幕開けである。 この戦いにおいて講和条約が締結されるまでの4か月間、フィンランド国防軍に「白い死神」の通り名で、ソ連軍を恐怖の底に陥れた一人の兵士がいた。 シモ・ヘイヘ “人類最強の兵士”

          GⅠ宝塚記念

          序文:能事畢れり 能事【のうじ】畢る【おわ-る】 とは「できることは、すべてやり尽くしてしまうこと」を意味する。 明治44年「三田文学」に寄稿された森鴎外の自伝的短編「妄想」のなかに、「日の要求に応じて能事畢るとするには足ることを知らなくてはならない」の一文がある。この「能事」という言葉の初出は儒教の経典の一つ『易経』に由来を発している。これは「八卦」、現代でいう東洋占術の起源であり、ここでは「天下の能事畢る(この世界で起こりうるあらゆることを、すべて占うことができる)」と述

          GⅠ安田記念

          序文:“Cross the Rubicon” 歴史が変わるその瞬間というのは、往々にして当の本人が逆境に置かれていることが多い。 BC49年、古代ローマ。 政敵ポンペイウスとの対立が露わになった将軍ユリウス・カエサルは、元老院から自らが統治するガリア属州総督解任および本国召還を命じられ、窮地に立たされていた。 命に従えば自らの立場を追われ、最悪死罪に断罪されるかもしれない。 刃向えば自身は国賊としてみなされ、元老院との衝突は避けられないだろう。 カエサルはルビコン川の畔で

          GⅠ日本ダービー

          序文:英雄の条件 英雄の死は突如として訪れる。 競走馬の世界の話ではない。 ギリシア神話に登場する英雄アキレウスは、大詩人ホメロスが作ったとされる一大叙事詩「イーリアス」の主人公であり、不死身の肉体を誇った超人だった。誰よりも速く戦場を駆け抜けたその姿から「駿足のアキレウス」の二つ名で呼ばれた。 アキレウスが生まれたとき母である女神テティスは、彼に不死の肉体を与えるべく冥府を流れる川ステュクスの水に息子を浸した。そのとき、テティスの手はアキレウスのかかとを掴んでいたためにそ

          GⅠオークス

          序文:マイ・フェア・レディ 映画『マイ・フェア・レディ』をご存じだろうか。1964年に公開された同名ミュージカルの映画化で、米アカデミー賞を8部門受賞。日本でも公開され大ヒットを飛ばした。 物語のあらすじはざっとこうだ。 言語学が専門のヒギンズ教授はひょんなことから、下町生まれの粗野で下品な言葉遣い(コックニー訛り)の花売り娘イライザと出会い、彼女をレディに仕立て上げられるかどうかを巡り友人のピカリング大佐と賭けをすることになる。 教授は初めから義務感でつきあっていたものの

          GⅠヴィクトリアマイル

          序文:夢幻のごとく 幸若舞(こうわかまい)の演目の一つ『敦盛』の中に、有名な一節がある。 人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり 人間(=「じんかん」と読む)の生涯は約50年。 下天とは幾つもの層に分かれた天界における一番下の階層、つまり人間界に最も近いとされる天上で、ここでの1年は人間の世界における50年に相当するといわれている。 この『敦盛』はかの戦国武将、織田信長がこよなく愛したことでも知られる。 もの凄く長いと思われる人間の生涯も、見方を変えればほんの一

          GⅠ NHKマイルカップ

          序文:二刀流の神髄 「真の勇者は、戦場を選ばない。」とはJRAがとある1頭の馬へ送ったキャッチコピーである。馬の名前はアグネスデジタル。競馬ファンならいわずもがなご存じであろう、芝・ダートGⅠ制覇を達成した二刀流の名馬だ。99年~03年の現役期間で32戦して12勝。その活躍は芝・ダートだけでなく、中央・地方・世界とまさにボーダレスに戦い続け結果を残した、歴史に残るオールラウンダーだった。 さて今週末に控えた3歳GⅠ『NHKマイルカップ』。かつてこのレースを制し、後に芝・ダート

          GⅠ天皇賞春

          序文:そして伝説へ… 今から遡ること34年前、1985年4月29日。天皇賞春。 単勝1.6倍断トツ1人気に支持されたシンボリルドルフは、残り200mを過ぎると一気に加速、ライバルミスターシービーを尻目に独走するとそのまま1着でゴールイン。危なげなく当時最多の八大競争5冠を達成。鞍上の岡部幸雄は壇上で大きく5本指を立てた。今の時代になってもなお語り継がれる日本競馬史の名場面である。 さらにそこから18年前、1967年のことである。 春の天皇賞、同じくしてシンボリ牧場で生を受け

          GⅠ皐月賞

          序文:ローカルより愛を込めて 2023年のJRA年間売り上げは約3兆2754億円。前年22年度を僅かだが上回った。競馬場の開催入場人数は462万人。新型コロナ期こそ来場人数は制限されていたが、売り上げは12年連続で増加し続けている。既存の競馬ファンに加え若年層の取り込み、新規ユーザーに競馬の魅力を伝えながら、競馬産業は隆盛の一途を遂げている。 翻って地方に目を向けてみよう。全国15か場で実施される地方競馬の23年の総売上金額は、1兆888億円。2年連続の1兆円越えで、こちらも

          GⅠ桜花賞

          序文:葉桜の季節に君を想うということ 春4月、桜の季節である。 この記事を書きはじめたその前日、例年より少し遅い桜の開花宣言の報が届いた。 今年も花見の予定などは一切ないが、なんとなく心が軽やかになる。そんな季節である。 桜という花の名前の由来には諸説があり、「咲き群がる」という言葉が変化したなど、様々だ。 数ある説の一つに日本神話「木花之佐久夜毘売(コノハヤサクヤヒメ)」がルーツになっているものがある。 神話に登場する女神の中で最も美しいとされた「サクヤヒメ」が転じて「さ

          GⅠ大阪杯

          序文:画竜の見た夢 遠い昔の話、中国は南北朝時代の話…。時の皇帝・武帝は当代きっての高名な画家・張僧繇(ちょう そうよう)に、「安楽寺の壁に竜の絵を描いて欲しい」と命じた。 命を受けた張僧繇は寺の壁に4匹の竜の絵を描いた。それはそれは見事な竜の姿だったが、竜の瞳は白いまま、眼が書き入れられていなかった…。 人々は張に尋ねた。「どうして眼を描かないのか」と。 張はこう答えた「竜は眼を書き入れられると、空へと飛んで行ってしまうのです。」 人々は張に懇願した。「どうか竜の眼を書き入

          GⅠ高松宮記念

          序文:うつろわざるもの達へ 川田将雅という騎手をご存じだろうか? 2004年デビューから順調に勝ち星を積み上げ、2016年に日本ダービー制覇。 2022年に史上4人目となる騎手大賞に輝き、昨年23年にはリバティアイランド騎乗で3歳牝馬クラシックレースにおける3冠を達成。24年に入り通算2000勝をマーク、と今や日本を代表するトップ騎手である。 …当然、このページを訪れたなら知らない人はいないはずだ。 そんな川田騎手のJRA重賞初制覇になったのが2006年の小倉大賞典。11番人