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GⅠ皐月賞


序文:ローカルより愛を込めて

🍃北からやってきた馬

2023年のJRA年間売り上げは約3兆2754億円。前年22年度を僅かだが上回った。競馬場の開催入場人数は462万人。新型コロナ期こそ来場人数は制限されていたが、売り上げは12年連続で増加し続けている。既存の競馬ファンに加え若年層の取り込み、新規ユーザーに競馬の魅力を伝えながら、競馬産業は隆盛の一途を遂げている。
翻って地方に目を向けてみよう。全国15か場で実施される地方競馬の23年の総売上金額は、1兆888億円。2年連続の1兆円越えで、こちらも過去最高を記録した。
まさに競馬人気ここに極まれり、である。
とはいえ週末2日間の開催で行われる中央競馬に比べ、地方競馬はほば毎日、日本全国のどこかで開催開催されている。一開催あたりの収益を考えた場合、数字の上でも人気の上でも、中央に水をあけられているというのが現状だろう。

さて、そんな地方競馬界において、かつて中央競馬へ、そして世界へと挑み続けた一頭の馬がいた。

コスモバルク
ホッカイドウ競馬所属の「道営のエース」は
2004年のクラシックを熱く沸騰させた。

この馬を語る前に一人の人物にスポットを当てたい。
岡田繫幸。馬主業を営む法人クラブ「サラブレッドクラブ・ラフィアン」の創設者にて、生産牧場コスモビューファームの前代表である。
冠名に”マイネル”の馬名をつけることからメディアやファンからは「マイネル軍団の総帥」の通り名で知られる一方、生産業者からは「相馬眼の天才」とも言われていた。
そんな岡田氏はかねてより「日本ダービーを勝つことが夢」と公言しており、自らの所有馬をダービーに送り出し続けていた。また一方で「地方競馬の人に夢を持ってもらいたい」とも語っていて、コスモバルクはそんな岡田氏の夢を形にしたような馬だった。

🍃夢を背負って

2001年コスモバルクは北海道の加野牧場にて生まれた。父・ザグレブは目立った産駒を出せず、種牡馬として全く結果を残せていなかった。コスモバルクも当初はほとんど期待されておらず、岡田氏が購入した時の金額は400万という安値だった。
03年8月旭川競馬場でデビューし2着、次走で初勝利を飾った。その後2戦を1着・2着とした後、本格的な中央挑戦が始まる。
少し話が逸れるが、当時ホッカイドウ競馬は経営難により存続の危機に瀕していた。その時岡田氏が提案したのが「認定厩舎制度の導入」。簡潔にいうと外厩制の実施である。これによりレース当日に各牧場から競馬場へ直行することができる。当時はなにかと批判も多かったこのやり方だが、岡田氏はこの制度の先に中央競馬への挑戦を夢見ていた。コスモバルクはその第1号であり、ビッグレッドファームの坂路で徹底的に鍛え上げられたその脚は、中央の芝で暴れる瞬間を待ちわびていた。
03年11月、その日はやってきた。東京・百日草特別、岡田氏は自信満々だったが周囲の反応は懐疑的だった。というのもこのレースの1番人気はサンデーサイレンス産駒のハイアーゲーム。馬主が臼田浩義氏ということもあり、スペシャルウィークの再来とも言われていた超良血馬だ。対するバルクは失敗種牡馬のザグレブ産駒、ましてや北海道からやってきた「田舎者」。11頭立ての9番人気と完全に穴馬扱いだった。
結果は単勝1.2倍ハイアーゲームの追撃をものともせず、1馬身半差で完勝。
勝ち時計はコースレコードを更新、府中に詰めかけた観衆をどよめかせた。
バルクの主戦騎手を長らく務めた五十嵐騎手は後にこう語っている。
「芝が合いそうな馬だな、500万下くらいのレースなら勝てるだろうなと思っていました。ただ、まさかレコードで勝つとは思いませんでした。」
次走12月GⅢラジオたんぱ杯2歳Sでは、武豊騎乗、難敵ブラックタイドが立ちはだかった。後のGⅠ馬にして、あのキタサンブラックの父である。
ミスティックエイジ、ハイアーゲームにつづきバルクは4人気、北海道から阪神までの長距離輸送が懸念されていた。
結果は2着の福永騎乗ミスティックエイジに、1馬身差をつけ鮮やかな逃げ切り勝ち。そしてこの重賞制覇により、コスモバルクへ徐々に注目の視線が注がれはじめる。
ラジオたんぱ杯を制した時点で獲得賞金は2200万円に到達。JRA所属の馬であれば確実にクラシック出走が可能となる額である。しかしバルクは地方競馬所属。皐月賞に出走するにはトライアルで優先出走権を獲得する必要があった。そのため次走は3月のGⅡ弥生賞。ここでもコスモバルクは規格外の走りを見せる。1人気は横山典弘騎乗フォーカルポイント、京成杯勝ちの強豪だった。バルクは発馬を決めると先行好位を確保、直線では逃げ粘るメイショウボーラーを差し切った。3着内に優先出走権という条件ながら、鮮やかに重賞2勝目をあげ、皐月賞への出走を決めたのだった。
弥生賞の勝利により、いよいよ地方馬によるクラシック制覇の現実味が帯びてきた。バルクの周囲はざわつきから喧噪へ、明らかに変わっていった。
そして迎えたクラシック初戦、皐月賞。並みいる強豪を抑えてきたコスモバルクは遂に1人気に支持された。レースはメイショウボーラーが逃げの一手で、緩みのない流れを作る。バルクは中団で様子を窺っていた。最終コーナーを曲がり直線へ、溜めていた末脚が爆ぜる。

栄光まで残り200m。五十嵐の視界が一瞬、白黒に変わる。
すべての人馬がまるで歩いているように感じた。

気づいたときには、バルクの前に一頭、巨躯の栗毛が走っていた。
馬の名はダイワメジャー、鞍上M・デムーロ。
前走スプリングS3着、当日は10番人気と完全な伏兵扱いだった。後のGⅠ5勝を挙げる名馬は、この時ほとんどノーマーク。皐月賞男とのコンビによって、バルクの快挙は打ち砕かれる格好となってしまった。

とはいえクラシックは残り2戦ある、バルクの挑戦は始まったばかり。
5月日本ダービー、後に「死のダービー」と言われる程ハイペースになってしまった一戦で、コスモバルクも展開の"あや"に巻き込まれてしまう。
控える競馬をするはずが、直線で早々と先頭に立ってしまった。
結果キングカメハメハの後塵を拝し、1.2秒差の8着に終わった。
次走、菊花賞を目指すも地方馬であるバルクはトライアルから走らなければならない。9月、ライバル不在のセントライト記念を制すと、クラシック最終戦へ駒を進める。当日は2番人気、ここにはダービーで戦ったハイアーゲーム、ハーツクライが出走していたが、伏兵デルタブルースに敗れ4着に終わってしまった。
こうしてコスモバルのクラシックへの挑戦は幕を閉じたのだった。

🍃夢の果て

しかしコスモバルクの戦いはまだ終わらなかった。
05年4歳、天皇賞春への出走を目指し日経賞へ参戦するが6着と惨敗。5月の香港GⅠは10着、宝塚記念12着…。秋初戦、毎日王冠11着で敗けると、続くGⅠも全て惨敗。結局この年は勝鞍なしの試練の一年となった。この頃には「地方馬によるGⅠを」、などとはあまり話題にならなくなっていた。

だが岡田もコスモバルクもまだ諦めなかった。
06年5歳、日経賞でスタート、ここでも敗戦を喫しまたしても天皇賞への切符を逃がしてしまう。次走、選択したのはシンガポールにて行われる国際GⅠ、インターナショナルカップ。
皐月賞以来の芝2000m、3番人気に見込まれたバルクは海外の強豪を蹴散らし、このレースを見事勝利。ゴール後、鞍上の五十嵐は右手で大きくガッツポーズを行った。セントライト記念以来、1年8か月ぶりの勝利を悲願のGI初勝利で飾り、地方所属馬による、史上初の海外G1と芝GIの制覇を達成した。

その後もバルクの飽くなき挑戦は続く。
07年6歳、徐々に下降線を辿っていく。
「英雄」ディープインパクトが去った競馬界で新時代のスター候補たちが名を挙げてきたが、そこにコスモバルクの名前はなかった。ファンの心も徐々に離れていった。天皇賞での斜行に始まり、「老害」「枠潰し」とまで言われるようになっていた。

それでもコスモバルクの闘志が消えることはなかった。
08年7歳、中央はウォッカ・ダイワスカーレットら牝馬の新時代を迎えていた。この年もバルクは挑戦し続けたが、全盛期の強さは見る影もなかった。

コスモバルクはまだ走る。
09年8歳、4度目の出走となる日経賞で11着。地方の盛岡競馬重賞に活路を見い出すも2着。応援でも批判でもない、ファンの声は次第に哀れみへと変わっていった。「もう、十分だろう」と。

10年9歳、アイルランドへ転厩の話が出たが、骨折により断念。今度こそ引退を決めた。しかしその翌年、コスモバルクの姿は日本ではなくアイルランドにあった…。
11年10歳、この歳になってから現役復帰の話が持ち上がったのだ。
古傷が祟り、結局この話は立ち消えに。コスモバルクは今度こそ本当に引退となった。長きに渡る、コスモバルク挑戦の日々はついに終わりを告げた。

コスモバルクの競走生活は国際GⅠ勝利という快挙を遂げる一方で、日本のクラシックGⅠ勝利という大願を成就させることはできなかった。その走りに衰えが見え始めた時、岡田氏も、五十嵐騎手も、もしかしたらコスモバルク自身でさえも、再びGⅠを勝てるなど、思っていなかったかもしれない。
それでも彼は諦めることが出来なかった。
そしてその姿は多くの人々に勇気を与え、衰退の一途をたどっていた地方競馬に再び火を灯した。バルクの挑戦により知名度の上がったホッカイドウ競馬は売り上げも回復、息を吹き返したのだ。

21年、岡田繫幸は自身の誕生日に71歳で死去。クラシック制覇の夢は叶えられなかったが、亡くなってから2か月後、ユーバーレーベンがオークスを制覇。実弟の岡田牧雄氏ら親族が志を受け継ぎ、今も有力馬をターフに送り出し続けている。
クラシック全3戦で主戦騎手を務めた五十嵐冬樹は、道営のトップ騎手として活躍し続け22年に引退。その後調教師に転身した。娘のひなさんが昨年春にJRA競馬学校に入学。父の足跡を辿り、騎手過程の道を歩み始めている。

そしてビッグレッドファームへと帰ってきたコスモバルク。今は特別功労馬として、ゆっくりとその余勢を過ごしている…。

大志を抱いた男の意思を受け継ぎ、
最後まで走り続けた馬。
その栄光と挫折の日々は輝き続け、
地方競馬に携わる多くの人々の心を突き動かし、
今日も新たな挑戦へと駆り立てている。

「第84回皐月賞、まもなく出走です。」

この仔はコスモバルク、
ではなくホッコータルマエ。
関係はないですが、
北海道繋がりということで…笑

はじめに~皐月賞展望~

お疲れ様です。今回も長文の冒頭となりましたが、お読みいただいた方へは御礼申し上げます。
コスモバルクは地方馬ながら本当に強かったと思いますし、シンガポールGⅠ勝利までのストーリーは痛快そのものであり、ヒーローと呼ぶに相応しい活躍だったと思います。
また、その後の話には哀感があり、勝負の世界の難しさや残酷ともいえる一面が垣間見えるようで、競馬とは本当に奥深いなと書きながら思った次第です。
今回の皐月賞はビッグレッドファームから一頭、前走弥生賞勝ったコスモキュランダが出走しますね。当初は気にしていなかったですが、この記事を書いてなんとなく気になる存在に…。買い目に入れようか検討中です笑
ここから先は、毎回通り皐月賞の展望と、勝利への必須条件、好走データ、推奨馬を挙げていきたいと思います。どうぞ最後までお付き合いください。

今年も混戦模様?そんな時こそ実績重視で!

この記事を作成している火曜時点で、皐月賞のオッズは割れに割れています。1番人気シンエンペラーで想定単勝5.6倍。流石にこのまま行くこともないかと思われますが、今年も素質馬が多く、人気を分けそうな感はあります。昨年も1人気のファントムシーフが3.8倍、勝ったソールオリエンスが2人気で5.2倍と混戦模様でした。そんな年こそ大荒れに賭けるのではなく、前走までで重賞勝ちを積んだ実績上位の馬に白羽の矢を立てたいと思います。
目安としてはキャリアが浅い2戦~3戦の馬なら全勝+重賞勝ち実績が欲しいところです。昨年のソールオリエンスは2戦2勝の京成杯勝ち馬で、京成杯からの直行は18年のジェネラーレウーノもいました。4戦以上の臨戦過程を積んできた馬も重賞勝ちは必須で、勝ちきれなかったレースがあったとしても、連対を外していないことが最低条件になると思います。
またXの方でもポストしましたが、当日の仕上がりには十分注意が必要で、馬体重増で挑んできた馬は、有力馬であっても過去10年で1勝もしていません。必ず馬体重減、もしくは増減なしで仕上げてきたメイチの馬を選びたいです。初戦とはいえクラシックには相違なく、ダービーを見据えて余力を残してきた馬が勝てるほど、容易なレースではありません。

皐月賞戴冠へ向けた、必須5箇条


ここからは、過去10年データに基づく、勝利への必須条件を挙げていきます。

🍃サンデーサイレンスの血統が入っている

過去10年9頭に該当、スピード勝負になるクラシックはこの血統はまさに必須条件。21年王者エフフォーリアはサンデー4×3の「奇跡の血量」の持ち主でした。

🍃連対率が50%以上である

過去10年全頭に該当、先述しましたが3歳春という少ない臨戦過程の中で、崩れを見せていないことは非常に重要です。2~3戦の経験であっても勝っていれば問題なし。過去4年は連続して無敗の皐月賞馬が誕生しています。

🍃前走が重賞で2着以内

過去10年全頭に該当、シンプルな理由ですが前走結果を残せていない馬は本番も勝てていません。格式あるレースにつき、巻き返しの逆転勝利はほぼ期待できないでしょう。21年1番人気だったダノンザキッドは3着に敗れましたが、前走の着順は3着でした。

🍃前走が4角で7番手以内、
且つ上り3Fで1位もしくは2位だった

過去10年7頭に該当、昨年はソールオリエンスが最後方から一気に駆け上がりましたが、重馬場且つ展開のあやもありました。
小回りコースの中山2000mでは後ろ過ぎると届かないことが多く、反面先行力だけでは粘りこむことができないので、末脚の性能も必要。20年のコントレイルは4角2番手から上がり最速で制しました。鞍上の能力含め競馬の巧さがクラシック勝利、3冠への道と繋がるわけです。

🍃前走が中山か東京で出走

過去10年9頭に該当、共同通信杯組、ホープフルS組の活躍が目立ちます。昨年ソールオリエンスも京成杯。関西馬を選ぶ際には関東への遠征を経験しているかは重要なファクターになります。

恒例の過去10年好走データ集

共同通信杯連対馬に注目

前走共同通信杯を勝った馬は【3-0-2-4】で2着だった馬は【2-0-0-3】、連対した馬が5番人気以内の場合【4-0-2-4】で、共同通信杯を連対し今回人気になった馬の優勝が多いです。

目安は5番人気以内

1人気は【2-1-3-4】で3連対で、連対馬20頭の内15頭が5人気以内でした。残る5頭は7~9番人気。上位人気陣が堅実な競馬をします。二桁人気の馬は過去10年で3着が1回のみ。期待はできませんね。

穴狙いならこれ

6人気以下で連対した5頭の前走は、それぞれ弥生賞1、4着。共同通信杯1着。毎日杯1着。スプリングS2着。と、しっかり好走しています。
狙い目として、前走重賞で好走したけど今回人気にならなかった馬、に注目したいです。今年も何頭かいるはずです。

直線一気が勝つのはまれ

18年以降の連対馬14頭の内、13頭が前走で道中5番手以内につけてました。昨年後方一気を見せたソールオリエンスも京成杯は道中5番手でした。前走が9番手から本番で好走した馬は22年イクイノックスのみ。前哨戦でしっかりとした先行力を見せていた馬に注目したいです。

馬体重別成績

ホットゾーンは460~500㌔までに集中。15連対しています。
小柄な馬では中山の急坂はこなせません。一方で馬格のありすぎる馬では、狭いコースで立ち回りが不利に。トリッキーな中山においては器用さとパワーの双方が求められるため、バランスよく仕上がった馬を推したいですね。

目指すは三冠!皐月賞推奨馬の解説

🍃北米血統、皐月を制す

昨年2歳王者、朝日杯FSを制した外国血統の超エリート馬、ジャンタルマンタルです。昨年10月京都1800mでデビュー勝ち、その後GⅡデイリー杯2歳S、GⅠ朝日杯FSを立て続けに勝利。無傷の3連勝で2歳王者に輝きました。年明け府中のGⅢ共同通信杯ではジャスティンミラノの2着に敗れましたが、捲土重来。本番である皐月賞を照準に万全の状態で中山へと乗り込んできます。
ジャンタルマンタルの父パレスマリスは、現役時代に米3冠競走のベルモントSなどGⅠを2勝後、米国で種牡馬入り。日本では現3歳世代が、のべ16頭の出走ながら6勝を挙げる快進撃を続けています。朝日杯勝ちのジャンタルマンタルは昨年のJRA最優秀2歳牡馬となり、年明けにはノーブルロジャーがシンザン記念を優勝。注目度が急上昇しています。
母インディアマントゥアナは米で2200mのGⅢ勝ちの実績があり、母父ウィルバーンは米GⅡインディアナダービーを制したエーピーインディ系の血統、マイラー体型と見立てられることの多いジャンタルマンタルですが、その血統は幅広い距離で活躍しており、中距離なら全般的に適性は高いでしょう。府中で見せた追走力だけでなく、機動力も兼ね備えていそうで、個人的には中山内回りは合うと思っています。
管理の高野厩舎は定期的に芝中距離へ重賞馬を送り出しています。最も勝鞍を挙げている川田騎手とのコンビでは、GⅠ大阪杯を制したレイパパレがいますね。事前の会見で川田騎手は「距離に関してはトライ」と発言していましたが、陣営側からは「騎手に一任」と信頼を感じる言も。朝日杯勝ちということでマイル色が強く思われがちですが、22年ドウデュースも距離延長を克服しました。いずれにしろ、前走で超スローの1800戦を経験したのは大きな武器になるはずです。
皐月賞では過去10年前走共同通信杯から向かった馬の連対が最も多く、
共同通信杯の連対馬が5番人気内なら【4-0-2-4】。血統、鞍上、データと3拍子揃った俊英が、"まずは"一冠目を狙いに定めました。

🍃クラシック戴冠へ、ジャスティン軍団急先鋒

デビューから2戦して2勝、共同通信杯勝ちのジャスティンミラノが無敗の皐月賞馬へ向け快調です。11月の東京新馬戦でデビュー勝ち。続く前走共同通信杯で、先述の2歳王者ジャンタルマンタルに勝ち、一気に評価を高めてきました。新馬戦で破ったヘデントールは、その後中山で2戦2勝しており、その点からも素質の高さが窺えます。
ジャスティンミラノはキズナ産駒。言わずと知れた名馬キズナですが、その産駒は距離・馬場の適性を問わず、芝であればどのクラスでも満遍なく好走しています。昨年のソングライン然り、中山よりも広い府中の方が走っているイメージが強く、皐月賞は20年に3頭出走していますがいずれも2桁着順で、今年は4年ぶりの産駒出走となります。キズナ産駒は中山の重賞を過去6回勝っていますが、その内3勝は昨月にあげたもの。コンクシェル、シックスペンス、パラレルヴィジョンと、なんとなく産駒の勢いを感じます。
また過去を振り返ると2000mでは京成杯でクリスタルブラック、紫苑Sでマルターズディオサが勝っていましたね。
前走共同通信杯は、超スローペースになったところを抑えきれず、早めに抜け出して勝利。基本、府中のような大箱でのスローに向いた中距離馬というような感じがします。初となる狭い中山で、ミドルペース以上の展開になったらどうかという疑問もありますが、前走では2歳王者のジャンタルマンタルと同じ上り32.6秒という末脚も披露しており、この切れ味は今回のGⅠでも活きてきそうです。3戦目にして初の中山内回りに一抹の不安もありますが、鞍上を務める戸崎騎手は、過去5年得意の中山2000mで連対率29%と安定した成績を誇り、18年にはエポカドーロでこの大舞台を制しています。管理の友道厩舎は近年ではドウデュース、マカヒキがダービーを、かつてはアンライバルドが皐月賞を制しており、その手腕に疑いの余地はありません。鞍上、調教師ともに久々の皐月賞戴冠へ、優勝待ったなしです。

🍃京成杯2着からの伏兵

シルクレーシングから1頭、前走京成杯2着アーバンシックが出走します。昨年8月、真夏の札幌でデビュー。その後11月府中の出世レース、百日草特別を勝ち上がると、年明けGⅢ京成杯で2着の好走。今回皐月の大舞台に名乗りを挙げてきました。皐月賞と同条件で行われる京成杯、ここからの皐月賞直行は長らく結果が残せていませんでしたが、昨年
ソールオリエンスが京成杯勝ちから無敗の皐月賞馬に。また18年にはジェネラーレウーノが8人気から3着に入り、穴をあけています。
アーバンシックは今をときめくスワーヴリチャード産駒、先週も解説しましたが、昨年新種牡馬リーディング1位の実績です。注目すべき点は牝系で、祖母にランズエッジの名前があります。この馬から生まれた牝馬、ロカはホープフルS勝ち馬レガレイラの母、ブルークランズは桜花賞勝ち馬ステレンボッシュの母で、アーバンシックはこの2頭とは従弟の間柄にあたります。また曾祖母がウインドハーヘアでこの馬はあのディープインパクトの母、曽祖父ダンスインザダークの父はサンデーサイレンスと、アーバンシックは21年の皐月賞馬エフフォーリアと同じ、サンデーサイレンス3×4「奇跡の血量」の持ち主。この舞台を制する血統として、その資質は十分に兼ね備えています。
特筆すべき点としてもう一点、前々走の百日草特別ですが、このレースではスタート直後に不利を受けながら、大外最後方から差し切る強い競馬を見せました。上り3F33.2秒の切れ味は上り最速。本質的には広い府中の方が合うとは思いますが、前走の中山でもしっかりと伸びていましたし、京成杯でも上りは最速でした。
心配なのがゲートで、過去3戦全てで出遅れています(2戦目は不利でしたが)。しっかり発馬さえ決めれば上位陣に迫れる実力は間違いなく持っていると思います。鞍上横山武史騎手は昨年ソールオリエンスでこの舞台を制しており、あの時も京成杯からの直行でした。武史騎手は先述の戸崎騎手以上に中山2000mを得意としており、過去5年の連対率は30%超で、今回不在のルメール騎手に次ぐ成績です。
前走敗けたことにより今回は下位人気になっています。個人的にはダービーも狙える大器だと思っていますので、期待を込めての馬券購入を検討中です。

🍃76年ぶりの牝馬Vへ…

勝てば76年ぶりの皐月賞馬に。GⅠホープフルSを圧巻の勝利、レガレイラが歴史的偉業に挑みます。前走師走のGⅠでは16頭立ての紅一点として出走し、並みいる牡馬たち相手に差し切り。ホープフルSからの直行は20年の3冠馬、コントレイルと同じローテです。
レガレイラの管理は木村厩舎、美浦の名門ですが近年はイクイノックスの活躍が目覚ましかったですね。彼が引退後も管理馬の多くに重賞クラスの名馬がいますが、特に牝馬に関してはチェルヴィニア、アルセナールと豊富な陣容が揃っています。その中でも本馬は牝馬のエースといえる存在でしょう。
レガレイラは先述のアーバンシックと同じスワーヴリチャード産駒、この産駒の魅力はすでに説明しましたが、牝系の血統も非常に似ており、祖父・祖母は一緒の全姉の関係に当たります。当然サンデーサイレンス3×4ということになり、このレースへの適正は高く評価できます。
先に述べた通りレガレイラは76年間勝ちの無かった、牝馬での皐月賞を目指していますが、1980年以降で3頭が参戦し一度も馬券内がなかったです。近年では17年にファンディーナが1人気に支持されていましたが、7着に敗れており、やはり他頭数の牡馬に牝馬一頭で立ち向かうことは、容易なミッションではないと思われます。また周知の通り、ルメール騎手が欠場になったため代役は北村宏司騎手が務めます。全く信頼できない騎手ではありませんが、リーディングのルメール騎手に比べるとどうしても見劣りしてしまう感は否めません。レガレイラの素質に疑いの余地はありませんが、あまり人気し過ぎてしまうようだとちょっと手を出しにくいな、というのが正直なところです。
とはいえ歴史的な勝利がかかった一戦ですから、夢を乗せて期待をするのも悪くないでしょう。勝ち目は十二分にあると思います。

おわりに~その他の馬を添えて~

お疲れ様です。今回も長丁場となりましたが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。現在金曜早朝5時ジャスト…。なんとか書きあがりました。
こんな大変な思いをして作成しているのも、やはり読んで感想をくださる方がいるからだと思います。いつもご愛読いただいている方には重ねて御礼申し上げます。

さて今回は投稿が大幅に遅れてしまったので、推奨馬は4頭までにして、最後にそのほかの有力馬の短評を添えて今回のnoteを了とさせていただきます。

🍃コスモキュランダ

皐月賞馬アルアインの初年度産駒、今回コラムで取り上げたビッグレッドファームの馬なので頑張ってもらいたいがどうでしょう。未勝利戦突破までに4戦要しており、弥生賞が終わった時点で7戦消化、大きな上積みはないと思います。また弥生賞組は過去10年0勝と相性悪く入れても紐までかなというところです。ただ前走の勝ち時計は優秀で、過去10年最速でした。鞍上モレイラ騎手というのも非常に魅力的です。

🍃シンエンペラー

外国血統であまり詳しくは知りませんが、半兄には凱旋門賞勝ちのソットサスがいます。同じ条件で行われたホープフルS、弥生賞と2着に入っておりコース適正の高さはあると思います。ただ気性難な側面が大きく、もたついたり、斜行したりと過度に期待をかけるには不安が大きいです。成長著しい坂井瑠星騎手が巧く御せるかどうかに、かかっていると思います。

🍃ダノンデサイル

京成杯勝ち馬、エピファネイア産駒なので21年エフフォーリアの活躍は未だ記憶に新しいです。エピファネイア産駒はSSの3×4の血統が多いのですが、この馬は違いますね。ちょっと珍しい。
能力的には足りていると思いますし、鞍上も含め非常に面白い存在なので、アタマは難しくても複穴候補としては適しているかもしれません。

🍃ビザンチンドリーム

こちらもエピファネイア産駒、きさらぎ賞の勝ち馬です。牝系の近親にはフサイチリシャール、ライラブスなど若くに活躍した馬がおり、この馬も早熟の可能性が高いかもですね。そう意味ではクラシックの主役を張れる資質はあるかもしれません。過去2戦で上がり最速をたたき出しており、スピード勝負で見劣りするということはまずないでしょう。ただデビューが遅く、他馬に比べると完成度の面で後れを取っており、気性難の一面も含め悪い意味で幼い馬だと思います。個人的には買わない一頭です。



今回参考にさせていただいたサイト


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