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GⅠ宝塚記念



序文:能事畢れり


能事【のうじ】畢る【おわ-る】
とは「できることは、すべてやり尽くしてしまうこと」を意味する。
明治44年「三田文学」に寄稿された森鴎外の自伝的短編「妄想」のなかに、「日の要求に応じて能事畢るとするには足ることを知らなくてはならない」の一文がある。この「能事」という言葉の初出は儒教の経典の一つ『易経』に由来を発している。これは「八卦」、現代でいう東洋占術の起源であり、ここでは「天下の能事畢る(この世界で起こりうるあらゆることを、すべて占うことができる)」と述べられている。
「能事畢る」とは、耳慣れた言葉にすれば「人事を尽くして天命を待つ」とも言い換えれるだろう。

さて今年で65回目を迎える伝統のグランプリレース「宝塚記念」。かつてこのレースにおいて、全てを出し尽くし、その勝利を天命からもぎ取った人馬がいた。

スイープトウショウと池添謙一は、
05年宝塚記念を制覇。
エイトクラウン以来39年ぶり、
史上2頭目となる牝馬による宝塚記念優勝を達成した。

スイープトウショウを語る上で不可欠なのが、その血統と牧場の物語である。1965年4月、北海道静内町の奥地にサラブレッド生産牧場が誕生した。「藤正牧場」、オーナーは実業家の藤田正明。同年より参議院議員を歴任し、東京馬主協会の会長を務めていた。競馬とサッカーを好んだ藤田氏は「藤正牧場」と「藤和不動産サッカー部」(後の湘南ベルマーレ)を創設した人物だった。
同年、藤正牧場は一頭の繁殖牝馬を輸入した。ソシアルバターフライである。この米国産牝馬は多くの産駒を世に送り出したが、その中でも飛び抜けた存在だったのが「天馬」と称されたトウショウボーイである。皐月賞、宝塚記念、有馬記念を制覇。種牡馬入り後もクラシック三冠馬ミスターシービーらを輩出。84年にはJRA顕彰馬にも選ばれている。
ソシアルバターフライ系の血統と、トウショウボーイの活躍により大いに発展を遂げた藤正牧場だったが、以降は緩やかに下降線を辿っていく。
トウショウボーイ産駒で活躍した馬の多くが他牧場での生産だった。またソシアルバターフライが77年に死去、その後は仔のソシアルトウショウが4頭の重賞勝利馬を輩出し、ソシアルバターフライを起点とする血統は「戦後屈指の名牝系」との評価を得たものの、徐々に活躍する産駒は減っていった。そんな中、91年にその晩年の産駒・シスタートウショウが桜花賞を制し、トウショウボーイ以来となるクラシック競走制覇を達成した。93年引退後に繁殖牝馬となったが、シスタートウショウは子育てに熱心さを欠く牝馬で、活躍する産駒は現れなかった。この頃「藤正牧場」は代替わりし「トウショウ産業トウショウ牧場」へと改称していたが、その実経営は不振に喘いでいた。
トウショウボーイの仔で85年に生まれたサマンサトウショウはエプソムC制覇などで活躍した後、91年に繁殖牝馬になった。この時配合相手に選ばれた種牡馬がダンシングブレーヴで、英2000ギニーや凱旋門賞を制した世界的な名馬だった。この2頭の間に生まれたタバサトウショウは下級戦で1勝を挙げたのみに終わったが、この牝馬から2001年に生まれた3頭目の産駒がスイープトウショウである。父であるエンドスイープの名前からそう命名された。
この頃のトウショウ牧場は先述したとおり、すでに低迷期の真っただ中。
スイープトウショウはもう後がない名門再建を託された、最後の希望だったのである。

スイープトウショウは03年の京都新馬戦でデビュー。渡辺栄厩舎管理で、鞍上は同厩舎の主戦騎手を任されることの多い角田晃一が務めた。01年には同厩舎のジャングルポケットで日本ダービーを制していた。
10月の新馬戦は出遅れて最後方からのスタートとなったが、ロングスパートから一気に追込み勝利。その素質の高さを遺憾なく発揮すると、続くGⅢ阪神ファンタジーSで重賞初勝利。このレースでも出遅れ、しかも折り合いを欠いた道中となったが直線に入るとスパート開始、内側を突いて抜け出していた3番人気ロイヤルセランガーを差し切った。スイープトウショウは前途洋々の門出を飾ったようだったが、すでにこの頃から気性難の問題を抱えており、厩務員や鞍上角田の手を度々焼かせていた。
同年12月阪神JFでGⅠ初出走。このレースではすんなりとゲートを発したが、鞍上はここでも後方から追走の展開を選択。1000メートルを60秒台で通過するスローペースに加え、直線では外から仕掛けるも進路を塞がれてしまう。懸命に追い上げたが短い直線では得意の差し脚をも届かず、敢え無く5着敗戦となった。後々この追込み脚質は、気性難の性格と共にスイープトウショウを苦しめる呪縛となっていった。
明けて1月、京都の紅梅ステークス(OP)で始動し3勝目を挙げた。翌2月渡辺栄氏の定年による厩舎解散が間近に迫り、1月23日付で栗東の鶴留明雄厩舎に転厩となった。渡辺と鶴留は、共にシンザン、コダマらの調教師として知られていた武田文吾の兄弟弟子という経緯があった。
この機を境に主戦騎手を務めることになったのが池添謙一である。
98年にデビュー、同年にトウショウオリオンでGⅢ北九州記念を制しており、02年アローキャリーでの桜花賞、03年にはデュランダルでGⅠ制覇。若手騎手のエース格として、その地位を確固たるものとしていた。「どんな癖のある馬でも向き合って乗る」を信条に掲げ、いかなる騎乗依頼にも真摯に向き合っていた。鶴留氏とは旧知の師弟関係だったとはいえ、この依頼には「正直ビックリした」と後に語っている。
そしてこの日から池添謙一、苦難の日々が始まった。

気性難といえばそれまでだが、とにかくスイープトウショウはわがままな性格だった。気位が異様なまでに高く機嫌を損ねたら最後、ピタッと動かなくなってしまう。またゲートに入ることをこの上なく嫌った。
コンビ初戦のチューリップ賞は勝ちこそしたが「枠入り不良」とされ、トレーニングセンターで行われる発走調教再審査いわゆる「ゲート試験」が義務付けられた。試験は難なくこなせたが、結果これがストレスになり桜花賞は調整不足で5着敗戦。次走迎えたオークスも最後に猛烈な追込みを見せたものの、先頭のダイワルシエーロに届かず2着に敗れてしまった。
春のクラシックを無冠で終えることになったが、池添はこの牝馬に確かな素質を感じていた。気難しいが、間違いなくその末脚の威力はGⅠ級だ。オークスでは肌でそれを感じることができた。
だからこそ思うように調整が進まない、彼女の気性の悪さに歯がゆさを感じ得なかった。
秋は秋華賞前哨戦ローズSで始動。オークスで届かなかったダイワルシエーロとの再戦になった。夏の休養を経て精神面で成長したと、池添はこのレースで脚質転換を試みた。前を行くダイワルシエーロを捉えるため、先行グループにつけそのまま押し切るつもりだった。が結果としてそれが仇となる。いつもより早めに先頭に立ったが、それで気が抜けてしまい後続に差されてしまった。またしてもこの馬の脆さが出た。こうしてローズSは3着に終わった。
次走、やはり賭けるべきはその末脚の可能性、とGⅠ秋華賞では再び後方からの競馬を選択した。どれだけ早い上がりを繰り出したとしても、前残りの展開になってしまえば勝つことはできない。追込み馬の宿命ともいえるが、池添は腹を括った。
「届かなかったらしょうがない」。現役屈指「勝負師」池添謙一の精神はこの頃にはすでに完成されていた。
レースでは武豊騎乗のダンスインザムードが1人気に支持、スイープトウショウは2番人気だった。最終直線、早めに抜け出したダンスインザムードが内から先頭に立つと、真ん中ヤマニンシュクル、大外からスイープトウショウが追い込みに掛かる。ヤマニンシュクルが一瞬先頭に入れ替わったが、大外から豪脚一閃。スイープトウショウが差し切り、待望のGⅠ初制覇を達成した。このレースでは中間の調教から当日の返し馬、ゲートまで順調に進み、厩舎チーム・人馬とも、全ての歯車がかみ合ったようだった。
これはトウショウ牧場にとって、シスタートウショウで制した1991年桜花賞以来13年ぶりとなるGⅠ優勝だった。池添は師匠鶴留の管理馬を初めてGⅠタイトルに導き「先生の馬でGⅠを勝つことが僕の夢のひとつでした。」と涙ながらにインタビューに答えた。

とはいえスイープトウショウの難しさは、以後も池添と周囲の人間を困らせ続けた。成長したと思ったのも束の間で、ますます酷くなっていく節が見られた。決して向き合おうとしてくれないこの人間嫌いの牝馬に、池添はただただ辛抱強く向き合うしかなかった。
11月にエリザベス女王杯に挑戦、古馬勢との対戦となった。アドマイヤグルーヴや前年3冠馬のスティルインラヴが立ちはだかったが、スイープトウショウはここでも出遅れて後方からの競馬に。直線ではスムーズに追い上げたが、5着敗戦となった。
年明け、古馬となったスイープトウショウは距離適性の問題もあり天皇賞を見送ると、長期休養を経て安田記念と宝塚記念に照準を定めた。
始動戦は5月の都大路ステークス(OP)に出走。格下相手にダントツの1人気だったがここでも出遅れ癖を発症、必死に追い上げたがスローペースもあり5着に敗れた。
6月、目標の一つだったGⅠ安田記念に出走。香港から遠征してきた3頭を含めた18頭立て、牝馬は2頭のみだった。上位陣にはテレグノシス、皐月賞馬ダイワメジャー、同期でライバルのダンスインザムード、香港のサイレントウィットネス、ブリッシュラックなどが続いた。スイープトウショウは前走の敗走もあり、単勝17.6倍の10番人気だった。人気は割れていて、12番人気までが20倍を切る混戦状態。スイープトウショウは、スタートで再び出遅れて後方を追走。最終コーナーでは外に持ち出しながらカーブ、直線では大外から追い上げを開始。内から抜け出したサイレントウィットネスを捉えた。鞍上池添の脳裏に勝利の二文字がよぎったが、馬場の真ん中から割ってきたアサクサデンエンに並ばれた。横一線となっての叩き合いを演じたが、アサクサデンエンが一歩抜け出して優勝する。スイープトウショウはサイレントウィットネスにアタマ差先着する2着だった。池添はこのレースの後「牡馬相手でも通用することもわかりました」と悔しさを滲ませながらも、手応えを口にした。

そして中2週で宝塚記念に臨む。この恒例のグランプリレースには古馬中長距離の一線級が顔を揃えた。前年の宝塚記念優勝馬で、金鯱賞3連覇達成を果たしたタップダンスシチーが1.9倍の1番人気。前年の秋古馬3冠のゼンノロブロイが2番人気。前年のダービー2着ハーツクライが続く3番人気だった。以下、リンカーン、「道営のエース」コスモバルク、同牧場出身のトウショウナイトと続いていた。牝馬は、アドマイヤグルーヴ、スティルインラブ、そしてスイープトウショウだったが、連敗したこともあり11番人気の支持に留まっていた。

レースへ臨むに際して、池添は逡巡していた。この大一番をどう戦うべきなのかと。考えを巡らせ続け、レース前夜はほとんど眠れなかった。「どんな癖のある馬でも向き合う」という池添の信条には今まで結果がついてきた。真摯に向き合っていれば、馬はいずれ心を開いてくれる。だからこそ自分は勝利を積み重ねることができていた。馬と騎手との信頼関係を築き上げることが最も大切だと、競馬学校でも厩舎に所属してからもそう教えられてきた。己の根幹にあるポリシーだった。
だがこの馬だけは違った。まるでこちらの方を見ようとしない。どんなに優しくしても、辛抱強く待っても、向き合ってなどくれなかった。
スイープトウショウはすでにGⅠを勝利した。だからなんだというのだ。
結果が伴っていようとも、到底納得いくはずなどなかった。

俺はまだこの馬と、
信頼関係を築き上げることが出来ていない。

果たして宝塚記念のゲートは開かれた。
スイープトウショウは問題なくスタートを切った。ゲート入りから全く問題がなかった。スタートを切っただけだが、池添の頭には厩舎のみんなが喜ぶ顔が浮かんでいた。道中はこれまでよりも前目につけ、15頭中8番手という好位を取り中団を追走。前半の1000メートルは、60秒を切るスローペースだったが、その後のペースが緩まず先行勢がスタミナを消費しながら先導する展開となった。とはいえ馬上の騎手たちには正確なタイムなど分からない。感覚的に差し追い込みに向きそうな、そんな展開になりそうな気もしたが、池添の中で核心には至らなかった。
もし届かなかったらどうしよう、そんな思いが去来する。早めに仕掛けることも考えたが、池添は辛抱した。この馬には辛抱させられ続けた、今さらどうということはない。コーナー付近から余力がなくなる馬がではじめる。タップダンスシチーもその1頭だった。「前が崩れる」と察知した池添とスイープトウショウは、3コーナーから外に持ち出して進出を開始、進路を確保した。後続から殺到する馬たちは皆、失速するタップダンスシチーを射程圏内に入れ、追込みを開始していた。池添も遅れじと相棒に鞭を入れた。
とどのつまり「馬と人の信頼関係」などと綺麗事を言っても仕方がなかった。どんな癖のある馬だろうと、自分を嫌っていようと関係ない。馬の能力を信じて全力で戦う。それが己に課せられた職務だと、池添の中で何かが吹っ切れた。
たとえ一方通行だろうとかまわない。
ここまできたら、最後まで信じ抜いてやる。

スイープトウショウはまず先に行ったリンカーンを捉えると、さらにゼンノロブロイも封じて先頭に立った。池添は猛然と鞭を入れ続けた。大外からハーツクライが迫ってきたが問題なかった。しっかりとクビ差をつけ、スイープトウショウはこれに勝利した。
GⅠ2勝目。1966年エイトクラウン以来39年ぶり史上2頭目となる牝馬による宝塚記念優勝。また、日本調教牝馬として初めて牝馬限定戦以外の2100メートル以上のGⅠ勝利。さらに99年グラスワンダー、02年ダンツフレーム以来3例目となる安田記念2着からの宝塚記念優勝だった。名門復活を掲げていたトウショウ牧場にとっては、トウショウボーイで制した77年以来28年ぶりとなる宝塚記念優勝だった。そして同年のJRA賞で、スイープトウショウは最優秀4歳以上牝馬に選出された。
牝馬に生まれ変わった「天馬」の子孫は、その気性の悪さから匙を投げられかけ、それでも辛抱強く向き合う者たちに支えられ、とうとう大仕事をやってのけたのだった。

その後スイープトウショウは同年のエリザベス女王杯を制し、GⅠ勝利数を「3」とした。以降6歳まで走り続け、その後に続いたウォッカ・ダイワスカーレットら「牝馬の時代」の先駆けともいえる存在となった。07年4度目の参戦となったエリザベス女王杯3着を最後に引退。繁殖牝馬となった。
トウショウ牧場は生産地不況の影響を受けて徐々に規模を縮小。2015年9月に閉鎖を発表。スイープトウショウら6頭の繋養牝馬と当年出生した21頭の馬たちはノーザンファームへ売却されることになり、翌10月をもってその歴史に終止符を打った。中央競馬の馬主登録(トウショウ産業株式会社名義)は現在も存続しており、所有馬も数頭登録されている。
池添謙一はその後も一線で活躍を続けた。スイープトウショウの主戦を務めたことから「どんな癖のある馬でも向き合って乗る」という彼の信条は、いつしか「癖馬は池添に預けろ」と認知され、数々の問題児たちと苦楽を共にすることになっていった。
2010年夏、池添は気性に問題を抱えたとある牡馬に出会うことになるが…。その話はまたの機会にしたい。

夏の到来を告げる、伝統のグランプリレース「宝塚記念」。今年も例年に負けず劣らず、スターホースたちが集まった。きっとそれぞれの馬、それぞれの支える人たちにドラマがあり、この舞台へと立つのだろう。果たしてどの人馬に天運は傾くのか。人事を尽くし、天命を待つだけでは足りるはずもない。
自ら欲し手を伸ばした者だけに、勝利の二文字はもたらされるだろう。

そう、あの日の若き騎手のように…。

能事畢れり。

人事を尽くした。やれることは全てやった。

それでも、天命を待ってるだけの競馬じゃ、

少々退屈だ。

「第65回GⅠ宝塚記念、まもなく出走です」

スイープトウショウの引退時まで主戦は池添謙一が務めた。
24戦8勝。2020年繋養先のノーザンファームにて死去。
池添は「思い入れの深い一頭」とその死を悼んだ。R.I.P

~ はじめに ~

皆さまお疲れさまです。安田記念以来の当noteとなりますので、3週間ぶりでしょうか。少し間隔があいていたため、今回の冒頭コラムは相応に力を入れて書き上げました。多くの人が知っている、そして愛していたスイープトウショウと池添謙一騎手の物語はかなりの長編になってしまいましたが、最後までお読みいただいた方、御礼申し上げます。ありがとうございました。

さて、ここからは恒例のGⅠ攻略noteということで、今回はもちろん宝塚記念となります。この項目の展望からはじまり、勝利への必須5箇条、過去10年データ、推奨馬の紹介といつも通りの流れになっています。
春GⅠはオークスでガミってからというもの、不的中が続いていますので、夏の到来の前に、最後に大きく的中させて読者の方のお役に立ちたいと思っています。最後までお付き合いの程、なにとぞよろしくお願いいたします。

ところ変われども実績重視、今年の宝塚

で、今年の宝塚記念ですが阪神競馬場のスタンド改修に伴い、今年は京都競馬場芝2200mで開催されます。いろいろと予想に加味しなければいけない要素はあるかと思いますが、GⅠグランプリレースであることには変わりません。1着馬の選定は人気を集める実績上位馬へ集中するのが吉であると、素直にそう思います。
キーになるポイントはまず「GⅠ連対実績」で、GⅠレースでの成績が当然のことながら直結してきます。また昨年は10人気のスルーセブンシーズが2着に入り波乱を演出しましたが、前走はGⅢ中山牝馬を勝っており、まったく実績がなかったかというと全然そんなこともなく、2~3着候補は別定GⅡやハンデGⅢで勝ち上がって来た実力馬から選べば問題ないと思います。
従って順当に考えるのであれば、イクイノックス引退後の競馬界において、現役で最も実績のあるドウデュースが、人気通り最有力候補で間違いないでしょう。昨年末のグランプリホースで、今回は海外帰りの一戦になりますが、状態に問題がなければまず勝ち負け必至です。
秋天2着のジャスティンパレスは有馬とドバイで4着と不覚をとったものの、逆転候補の筆頭です。舞台が京都に変わったことも、昨年春天と同じ競馬場ということでプラスに働きそうです。
一方「危険な人気馬」になりそうなのが大阪杯勝ちのベラジオオペラです。当noteでも再三指摘していますが、現4歳世代はその実力に「?」がついている状態。大阪杯は勝ちましたが、そこで負かしたプラダリアにGⅡ京都記念では完敗しています。今年は京都開催ということで、その辺りの力関係の見直しも必要になってくると思います。
またもう一点注意しておきたい点として、当日の馬場コンディションをあげておきます。毎年梅雨入り前後の開催になっていますが、過去10年で4回稍重での開催になっていました。宝塚記念ではディープインパクト産駒の成績が【1-1-5-27】と、他のGⅠよりも圧倒的に悪いです。これは単にコース相性の問題でなく、芝に含む水分量が多い場合にこの産駒はキレ敗けする傾向が高いです。ディープ系の血統は少し割り引き対象とします。それ以外にも大まかな傾向で言うと、一瞬のキレや瞬発力で勝負する馬よりも、持続力がありロングスパートを得意するようなタイプに、有利に傾いてくると思います。これはおそらく阪神よりも京都になったことでより色濃く反映されるでしょう。従って当日の馬場コンディション及び、血統等から推察されるコース相性を過分に加えて、予想を組み立てていきます。


春のGPホースへなるため
勝利への必須5箇条

関西馬である

昨年は圧倒的1人気のイクイノックス(美浦)が戴冠を果たしましたが、傾向的には関西馬が有利です。宝塚記念は上半期最後のGⅠレース、連戦の疲れが各馬出始める頃。このタイミングで輸送をこなさなければならない関東馬より、地元関西馬の方が基本優勢です。関東馬を推す場合は外厩調整等でしっかりと仕上げられているか、事前にチェックしておきましょう。

4~5歳馬

過去10年全頭に該当しています。ゴールシップは13年、14年連覇を達成しましたが、3連覇がかかった6歳時には、単勝1倍台に支持されるも例の事件を起こしました笑笑
高齢馬は基本割引でいいと思います。

ノーザンファーム生産馬

過去10年8頭に該当。現実的に考えてJRA芝中長距離GⅠはノーザン一強体制。非該当馬はゴールドシップと、22年タイトルホルダー。22年はエフフォーリアがコケたとはいえ、あまりにも強すぎる伝説級の一戦だったと思います。

上がりタイム35~36秒以上掛けての勝利経験

過去10年で全頭に該当しています。末脚自慢に越したことはないですが、例年比較的荒れた馬場で開催されていて、スタミナが問われる展開になりがちです。京都開催でもその傾向は変わらないでしょう。切れ味よりも持続力が求められるレースでの勝利経験が、勝敗を分けることもままあります。スタミナ自慢の馬、それから道悪適正の高い馬に注目しておきましょう。

1~3番人気

荒れるイメージの強い宝塚記念ですが、勝ち馬に限ってはそんなこともなく上位人気馬がきっちり結果を残している印象です。過去10年では7頭が3人気以内から勝っています。
非該当馬は15年6人気ラブリーデイ、16年8人気マリアライト、17年7人気ミッキーロケットで、この内16、17年は稍重馬場での開催でした。また15年はゴルシ120億事件の年で、この年は良馬場でしたが水分量の多い馬場で時計がかかっていた点に注目です。現時点で週末に雨が降るかどうかわかりませんが、穴狙いの方は稍重以上の馬場、もしくは良馬場であったとしても時計のかかるコンディションになっていることが絶対条件だと思います。


今年は京都を掘り起こす
過去10年好走データ集

1人気の成績と穴馬の傾向

1人気は【3-2-0-5】で5連対。3番人気まで含めると上記の通り、勝率70%まで上がります。6番人気以下で連対した馬は9頭いて、その内7頭に芝2000m以上のGⅡもしくはGⅠでの勝利経験がありました。下位人気から選ぶとしても重賞での実績はやはり重要だと言えます。
昨年2着のスルーセブンシーズはGⅠ・Ⅱでの連対経験はありませんでしたが、前走でGⅢを勝っていました。

注目は春天組、前走の着順は不問につき

過去10年の連対馬全20頭の内13頭にGⅠ勝ち経験があり、2頭にGⅠ2着の経験がありました。さらに3頭にGⅡ勝ちの経験があり、しつこいようですがGⅠ・GⅡの実績は最重要視すべきだと思います。ただし前走が春の天皇賞だった馬に限っては、着順は不問で構いません。過去10年で前走春天4着以下から宝塚で連対した馬は5頭います。18年ミッキーロケットは前走春天4着から(稍重でしたが)優勝。15年デニムアンドルビーは前走春天10着から2着に入っています。

今年は京都2200m、適性に注視を

過去10年は阪神芝内回り2200mでしたが、今年は京都芝外回り2200m、距離は同じであってもコースへの適正は全く異なるものが要求されます。直線の長いコースで差し追い込み馬が台頭しやすいので、京都コースで実績のある差し・追い込みタイプに注目です。
また1人気のドウデュースは初の京都となりますが、鞍上武豊騎手にとって京都外回りは得意とする舞台なので、大きな心配はしていません。
騎手適正という観点から考えると、過去5年で当該コースにおける最も実績のある騎手は川田将雅Jで、連対率は40%を超えてきます。GⅠレースであればやはりルメール騎手も上位の成績、また条件戦まで含むと岩田望来騎手、池添騎手の成績が良いですね。

前走クラス別成績まとめ

前走春天組は3着以内だった場合【1-0-2-12】とやや不振。ディープボンドとブローザホーンは少し怪しいかも。春天4着以下の場合【2-3-1-21】と距離短縮で巻き返してきてますが、今年は該当馬がいません。
となると気になってくるのが前走大阪杯組です。大阪杯優勝馬は【0-0-1-3】で不振傾向に。むしろ大阪杯2着馬が【1-1-0-1】でローシャムパークの方に部がありそうです。前走が海外、ドバイシーマCの馬は過去イクイノックスとクロノジェネシスで2勝挙げています。ジャスティンパレスがシーマC4着でしたが、ドウデュースはドバイターフでしたね。前走ドバイターフは前例がなかったと思いますが果たして…。

また、それ以外のレースからだと鳴尾記念組が気になります。鳴尾記念1着、1着、4着の馬が宝塚記念でそれぞれ連対した過去があります。
14年カレンミロティック、15年ラブリーデイ、21年ユニコーンライオンです。この3頭の共通点は道中3番手以内につけていたということ。
脚質は異なりますが、超惑星枠としてカラテ、ヤマニンサンパを馬券に組み込むのもありではないかと、個人的には思っています。馬券購入の際は自己責任でお願いします笑

枠番別成績について

最後に枠番成績について触れておきます、これは過去5年、未勝利戦まで含めた京都芝2200mデータで、5枠が圧倒的で連対率25%超・勝率17%超の上位を占めています。また1~3枠の人気薄の激走も多くみられます。最下位は4枠で、勝率・連対率ともに低く不安要素が高いです。


森タイツ式推奨馬の解説

レジェンド騎手と共に伝説再始動

馬場適正・・・極端な不良馬場でなければ可

今年の春のGⅠシリーズは先日の安田記念まで11戦行われてきましたが、1番人気の馬が勝利したのは春の天皇賞と安田記念だけです。堅めの決着に終わったレースも少なからずありましたが、今年はどのレースにも素質馬や穴をあける馬が多く、事前のオッズが割れているのが印象的でした。
そんな中、そろそろ絶対王者による圧巻の競馬を見たいと思っているのは私だけでしょうか?
現役では最強、今回1番人気ドウデュースの圧勝劇に期待をしています。
昨年古馬になってから春のGⅡ京都記念で勝利、その後目標だったドバイターフでは直前で出走取り消しになりました。夏の休養を挟んで秋古馬3冠ルートを選択するも、武豊騎手の直前負傷などにより満足な競馬ができず。天皇賞・JCは連続して同期ライバルのイクイノックスへ花道を譲ることになってしまいました。思うような競馬が出来なかった23年でしたが、年の瀬の有馬記念では復活した鞍上と共に、鬱憤を晴らすかのような勝利。多くの競馬ファンへ感動を届けてくれました。
今年の春もドバイへ参戦、直線では不利もありまたしても不運に見舞われた格好になりましたが、裏を返せば度外視可能の評価といえます。再度調整して、国内へ復帰。GⅠ4勝目を狙い、このGPレースへ賭ける思いは相当に強いと思います。

ドウデュースはハーツクライ産駒。07年に種牡馬入りしてから数々の産駒を世に送り出してきました。昨年にこの世を去ったため、23年度のデビュー馬がハーツクライのラストクロップとなりました。ハーツクライの産駒からはスワーヴリチャードなどが種牡馬入りし結果を残しており、その血統はこれからも続いていくでしょう。
母のダストアンドダイヤモンズは米GⅡ勝ちの実績があります。牝系の近親馬には凱旋門賞勝ちのダンシングブレーヴがおり、大一番での底力、脚を溜めてからの爆発力には大きな魅力を感じさせます

ドウデュースは必須5箇条で挙げた勝利への条件を満たし、出走馬の中では最上位の実績を誇る最右力候補です。特に昨年末、古馬の一線級が顔を揃えた有馬記念を制したことは、最大限に評価できると思います。最後の直線一気だけでなく、3コーナーからポジションを押し上げて機動力の高さを見せつけてくれました。奇しくも18年前の京都開催で勝利を飾ったのはあのディープインパクトでした。同じ鞍上に導かれ、伝説級のレースを目の当たりにできるかもしれない、そんな淡い期待を抱きながら声援を送るのも悪くないと思います。


「借りは返す」京都開催で浮上する英雄の直仔

馬場適正・・・稍重までは可

前走ドバイシーマCで4着、前々走有馬記念で4着、悔しい惜敗が続いているジャスティンパレスが、自身得意とするコースに戻って反撃開始です。
昨年の天皇賞春以降4戦して勝鞍を挙げれていないですが、最後に勝ったルメール騎手との相性は良く、これまで4戦4勝です。また関西圏の競馬場を得意としており阪神・京都で5戦していまだ馬券内を外したことがないことも大きな強みです。今回の圧倒的1人気はドウデュースですが、最大の対抗候補がこの馬になることは、多くの競馬ファンからも異論のないところでしょう。

ジャスティンパレスはディープインパクト産駒。昨年のクラシック世代からその直仔は絶たれましたが、古馬戦線ではいまだ数頭の素質馬がおり、この馬もその中の一頭です。展望の項目で述べましたが、ディープ産駒と宝塚記念の相性はイマイチで、今回の京都開催においてもその傾向は少なからず不安な要素ではあります。
とはいえ、この馬がディープインパクト産駒と言われれると正直それらしい印象はあまりなく、当初は中長距離で脚を長く使える馬、という印象が強かったです。実際春の天皇賞を制した際の走りは、瞬発力というより、失速せずに長く脚を使った勝利でした。一方、昨年秋の天皇賞では、イクイノックスに敗れはしたものの、プログノーシスと、テン乗りとはいえドウデュースに先着しています。道中ポジション取りに失敗したものの、初めての「上り33秒台」で2着に肉薄しました。
長距離でも失速しない持続力に加え、ディープ産駒特有の末脚を併せ持った本馬。ストライドが大きい走りも大箱向きで、昨年3着に敗れた阪神ではなく京都で走れる点も好材料と言えるでしょう。

地力で言えば本命馬ドウデュースにも劣らないジャスティンパレス、唯一大きな不安と言えるのが今回のレース展開で、スローの前残りになった際に末脚が届かなくなる危険性があります。とはいえ鞍上は相性抜群でトップジョッキーのCルメール騎手です。スタートさえ決まればある程度ポジションを取りに行くことは想像できます。昨年の宝塚記念と有馬記念。グランプリで敗走を重ねた雪辱を返す、絶好の機会が到来しました。注目しましょう。


初のGⅠ制覇はグランプリで!

馬場適正・・・重馬場でもある程度やれる

22年クラシック世代において、その素質を高く評されながらいまだGⅠへ届いていない馬、ローシャムパークに待望のチャンス到来です。
前走大阪杯では関東馬のレース相性の悪さという点から、当note予想時に割引評価を入れましたが、予想を裏切る激走振り…笑
外厩調整でしっかりと仕上げられてきた走りで、2着に好走しました。
幼駒時代からその素質を高く評価されてきたものの、陣営は慎重に育成に時間を割いてきました。同期がクラシックで戦っている中、3歳秋のセントライト記念で重賞初挑戦。3着に収まるとその後は条件戦を走り、昨年夏の函館記念、秋初戦のオールカマーを連勝し、一線級に名乗りを挙げてきました。セントライトからOP入りまで8か月、重賞勝ちまでは10か月要しており、順調ながら、かなり時間をかけてきたなというのがこの馬に対する所感です。

ローシャムパークはハービンジャー産駒ですが、直近では先日のオークスを制したチェルヴィニアの活躍が記憶に新しいところ。また同産駒における母父キングカメハメハ産駒との配合は、有馬記念を制したブラストワンピース、エリザベス女王杯を制したモズカッチャンなど、非根幹距離のGⅠレースを勝っている点にも注目です。同じく非根幹GⅠ、京都2200mを獲る器として期待が高まります。

昨年末の香港遠征で振るわなかったのは調整不足で、本調子になかったのが敗因。前走大阪杯の好走で、再び人気を集めそうです。というのもこの馬が国内の芝中距離戦において連対を外したのは、3着に敗れたセントライト記念だけ。芝2000~2400m実績は8戦して連対率87.5%と、今回初めての京都コースであっても十分に期待が出来ます。基本使い込めないタイプなので、今回短期休養明けでどれだけ仕上がっているか気になっていますが、中間の内容では好タイムを連発し問題はなさそうです。唯一の懸念材料が、過去唯一馬券対象を外したのが重馬場でのレースという点。当日雨で重たくなるようだと心配です。ただハービンジャー産駒ですし、血統的には重馬場までだったら問題はないとも思っています。…この点に関しては少々悩ましいですね。
とはいえ引き続き上昇気配で、GⅠ奪取まであと一歩のところまで来ているのは間違いないです。前走以上にライバルたちは強力ですが、遅れてきた素質馬が大輪の花を咲かせるその瞬間に刮目です。

次の”GⅠ初制覇”はこの人馬で決まり

馬場適正・・・重馬場大歓迎

前走天皇賞2着。勝ちきれないまでも好走を続け、調子を上げたまま波に乗るブローザホーンに注目です。春の天皇賞同様に個人的な単穴候補として強く推したいです。
21年11月にデビュー、初勝利を挙げるまでに9戦ものレースを要しましたが、1勝クラスになってからは【5-2-2-2】と馬券内を外したのは2戦だけで、安定感ある走りを続けています。24年初戦の日経新春杯では、定年を控えた中野厩舎のまさにメイチといえる仕上げで、人気の4歳馬たちをまとめて差し切りました。その後厩舎解散の前に栗東・吉岡厩舎に転厩しましたが、新しい環境に速やかに慣れると阪神大賞典で3着、GⅠ天皇賞春では並みいる強豪を抑え2着と、確かな成長を辿っています。GⅠ制覇はお預けを食らっている現状ですが、ここでの戴冠も決して非現実的な話ではないでしょう。

ブローザホーンはエピファネイア産駒、種牡馬リーディングでは近年常に上位にいます。デアリングタクト、エフフォーリアの活躍はまだまだ記憶に新しいところ。今年も桜花賞をステレンボッシュが制しています。産駒の特徴として、早熟傾向が強く古馬になってからの活躍は見込めないと、多方面から言われ続けてきましたが、先月のヴィクトリアマイルでは6歳馬のテンハッピーローズが勝利し、大波乱の立役者に。古馬でのGⅠ実績も打ち立ててくれました。今回はブローザホーン自身にとっても実績のある得意コースで、大いに期待できそうです。

本馬は馬体重430㌔に満たない非常に小柄な牡馬です。天皇賞のnoteでも述べましたが、データを集計して確認したところ、430㌔未満の牡馬でGⅠを勝ったのは、日本調教馬では93年皐月賞のナリタタイシンと09年有馬記念などを勝ったドリームジャーニーだけです。この馬がGⅠを制すれば新たな快挙と言えるでしょう。転厩してきた吉岡厩舎ではここで3戦目を迎えます。転厩初戦の阪神大賞典では掛かり気味の仕草を見せ、正直不安も感じていましたが、次走ですぐに修正してきました。厩舎の調教技術は十分評価に値すると思います。また今期はGⅠの初制覇や、若手騎手の重賞初勝利が散見されていますが、今回鞍上の菅原明良騎手もまた、GⅠ制覇を成し遂げるだけの資質に足りる騎手であると思います。
本馬は重馬場にも強く、当日の天気や馬場が荒れるようであれば追い風になるでしょう。爆発の瞬間を待ちわびている、この小柄なステイヤーに期待しましょう。

平成から令和のグランプリ男へ

馬場適正・・・極端な不良馬場でなければ可

今年のGⅡ京都記念覇者。前走大阪杯では惨敗を喫しましたが、「平成のグランプリ男」池添謙一に導かれ、プラダリアが起死回生の一鞍を狙ってます。
22年1月の冬の新馬戦でデビューすると、4戦目となる4月のGⅡ青葉賞で重賞初制覇。次走日本ダービーに出走。「青葉賞勝からダービー馬は生まれない」の定説の通り敗れはしたものの、イクイノックス、ドウデュースら同世代の強豪を相手に5着掲示板を確保しました。

プラダリアはディープインパクト産駒。先述のジャスティンパレスと同じで、当noteでも再三に渡り解説をしてきました。ディープインパクトは奇しくも06年京都開催にて行われた宝塚記念に勝利しています。引退後、大種牡馬として多くの名馬を生み出してきましたが、母父クロフネとの配合は非常に特徴的で、ステファノスやGⅠ大阪杯を制したレイパパレなど、叩き良化型の馬が多く見受けられます。

プラダリア最大の特徴は、歩んできた臨戦過程そのものにあり、使い込まれればその分だけ好走を重ねていく点にあります。プラダリアよりもデビューが早かった同期のローシャムパークは現時点で12戦していますが、プラダリアは既に16戦走っています。青葉賞からダービーだけでなく、翌年には目黒記念→宝塚記念→新潟記念→京都大賞典1着と、間隔が詰まっていく中で好走を見せています。近走は暮れの大一番・有馬記念に参戦し、短期放牧を挟み京都記念を制覇。在厩のまま挑戦した大阪杯で敗れています。その後3か月間空けているので、この間隔をどう評するか、叩き良化型だけに仕上がりにはよくよく注意が必要だと思います。
現時点でGⅡを3勝しており、うち2勝が京都外回りコースで行われたもの。京都巧者なのは誰が見ても明らか。今回京都開催になった宝塚記念はこの馬にとってまさに渡りに船と言えるでしょう。
今回冒頭コラムで取り上げた鞍上・池添謙一騎手は宝塚・有馬で7勝挙げている「平成のグランプリ男」。大舞台には滅法強いことで知られており、昨年の当レースでもスルーセブンシーズの2着で穴をあけました。
平成から令和を経て、今一度大波乱レースの主人公となれるか否か、この大一番に賭けてみるのもまた、一興かと思います。

~おわりに~
他の馬の評価を添えて

お疲れ様です。ここまでお読みいただいた皆様、本当にありがとうございました。この時点で15,000文字突破。いつも以上のボリュームとなりましたが、この長文を飽きもせず読んでくださる読書の方には、本当に感謝しかないです。
さあ、いよいよ春GⅠも大詰め。この宝塚記念が終われば当noteも暫しの間お休みに入る予定です。復帰予定は札幌記念です。まあ、その頃にはこんなnoteがあったことも大半の人間が忘れてるような気もしていますが笑
それでも日々感想を届けてくれた方々、熱心にイイねをくれた方々がいるのも事実。秋以降も継続していく予定ですので、忘れないでいただけるとありがたいです(夏どこかで書くかもしれません。その時はヨロシクです)。

では最後に今回ピックアップした5頭の推奨馬、以外の馬の短評(いや書くんかい)を添えて締め括りたいと思います。ありがとうございました。
では、また…。

📝ディープボンド

ファンも多く、どうにかGⅠを勝たせたいとの声も強いが果たしてどうか?
前走の天皇賞春の舞台では、乗り替わった幸騎手の積極策が功を奏しました。前目の競馬からあわや押切という、見せ場も十分の3着。血統的には今年キズナ産駒は勢いがあるので、そこには期待できそう。ズブさが特徴ですが、剛腕が売りの鞍上とは引き続き手が合いそうです。
ただ最近は以前にもまして長い距離で使われているので、京都コース向きといえど、明らかに距離が短いです。スタミナ勝負にならないと展開は向いてこないと思います。過去の連対時の馬体重は480~510㌔。スピード勝負に対応するため、ギリギリまで絞ってくることが理想だと思います。

📝ベラジオオペラ

素質を疑われていた4歳世代ですが、べラジオオペラが大阪杯を制したことにより論争に一矢報いた恰好となりました。これまで8戦して5勝1連対と安定した成績を誇っており、芝2000m以上では2勝1連対と、適性は悪くないと思います。ただし道悪の高速決着になった皐月賞では大敗を喫しており、重馬場以上のコンディションになった場合は注意が必要です。
ロードカナロア産駒で、昨年は同産駒のブレイディヴェーグが同じコースのエリザベス女王杯を勝っています。血統的には問題ないでしょう。
前走、会心の走りでGⅠを勝利し今回人気を集めそうですが、レベルはもう一段上がります。先行策で好位取りの競馬をした際は、後ろで控えるGⅠホースたちの目標にされ、長い直線で差される危険性大です。枠順と和生Jの手綱裁きが命運を分けると思います。

📝ルージュエヴァイユ

昨年のGⅠエリ女では勝ち馬のブレイディヴェーグにコンマ1秒差の2着と、ほとんど差のない競馬をしておりその素質は本物。2番人気と高評価で迎えた京都記念で8着に敗れると、人気を落とした大阪杯では牡馬たちの間を割って3着に飛び込んできました。やや安定感を欠くきらいはありますが、牝馬にあってかなりの勝負根性を有しています
血統を探ると父はジャスタウェイで、産駒にはホープフルS制覇のダノンザキッドや、今年の金杯を制したコレペティトールなどがいます。母ナッシングバットドリームズは不出走に終わりましたが、父が米の怪物フランケルで、母は凱旋門賞馬デインドリームと、超がつく良血統です。
今回は昨年2着だったエリ女と同コースのため、今回も大いに期待できそう。一方で美浦所属でありながら、今年に入ってすでに3回目の関西遠征になります。馬体重の変動にかなりバラツキがあり、体調面が憂慮されます。ここでの増減は最低でも1ケタ台に済ませて欲しいですし、前走からさらに減ってくるようだと危険ではないかなと思います。
追記ですが今回乗り替りで川田将雅騎手になるのはやはりプラス材料だと思います。馬と手が合うかは別として、前述したとおり京都芝2200mの実績は、過去5年において現役騎手では最も優れた実績を残しています

それ以外にも目黒記念でベストパフォーマンスを披露したシュトルーヴェ。武史J騎乗で復活を期すソールオリエンスも怖い存在かもしれませんね。

📝カラテ&ヤマニンサンパ

前述した超惑星枠の2頭ですが、前走鳴尾記念組ということで念のため警戒しておきたいなと思っています。データ上は好走例もあるわけですし、VMにおけるテンハピーローズのようなケースも、無きにしも非ずですから。
カラテは8歳を迎え全盛期を過ぎてしまったことは明らかですが、ファイティングスピリットに溢れる牡馬なので、例えば不良馬場などになった際などには大駆けを期待してもいいのではないかなと。またヤマニンサンパは前走では森タイツ式本命でした。ヨーホーレイクとボッケリーニという実力馬にしっかり負かされた訳ですが、位置取りが後方過ぎたため届かなかった印象が。純粋な走力だけで言えば今回の出走馬たちにも決して引けを取らないと思うので、引き続き鞍上の団野騎手に期待してもいいのかなと、まあそれぞれ複勝100円くらい買っても罰は当たらないと思います笑


今回参考にさせていただいたサイト


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