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GⅠ NHKマイルカップ

序文:二刀流の神髄


「真の勇者は、戦場を選ばない。」とはJRAがとある1頭の馬へ送ったキャッチコピーである。馬の名前はアグネスデジタル。競馬ファンならいわずもがなご存じであろう、芝・ダートGⅠ制覇を達成した二刀流の名馬だ。99年~03年の現役期間で32戦して12勝。その活躍は芝・ダートだけでなく、中央・地方・世界とまさにボーダレスに戦い続け結果を残した、歴史に残るオールラウンダーだった。
さて今週末に控えた3歳GⅠ『NHKマイルカップ』。かつてこのレースを制し、後に芝・ダートの二刀流で長く活躍した馬がいた。

イーグルカフェは00年NHKマイル、
02年ジャパンカップダートを勝利。
芝・ダート制覇のGⅠ馬としてその名を競馬史に刻んだ。

今回はイーグルカフェ全46戦激闘の歴史を振り返っていきたい。

イーグルカフェは米国産馬だった。父ガルチもまた米国馬で、かのミスタープロスペクターの仔として米GⅠを7勝を挙げ大種牡馬になっていた。ガルチはわずか2年半の競走生活で32戦をこなし、そのほとんどがGⅠ競争であり、掲示板を外したのが2回のみと抜群の安定感を誇っていた。そんな父の血を継いだカフェもまた、故障や病気の少ない頑健な馬として競走生活を送った。
カフェは99年11月、東京競馬場ダート1200mの新馬戦でデビューした。
米国血統として大きな期待を寄せられていたが、3着に敗戦。ちなみにカフェの長い戦歴の中で1番人気になったのは、この新馬戦1回のみであった。
2戦目で勝ち上がり、明けて2000年になるとGⅢ共同通信杯4歳Sを勝つ。このレースの歴代勝ち馬には名馬が多く、翌年のジャングルポケットもここを制してから日本ダービーへ挑んでいった。しかしカフェの年代、2000年まではクラシック競走に外国産馬の出走枠が無く、日本ダービーへの出走権は与えられなかった。改定された「マル外開放元年」は、皮肉なことに翌01年からだった。従いその他の4歳外国産馬と同様に、当時「マル外ダービー」と呼ばれていたNHKマイルカップ路線を歩んだ。

前哨戦のGⅡニュージーランドトロフィー4歳Sでは4番人気で7着と敗れる。この時の勝ち馬はエイシンプレストンだったが、この世代では最も早く頭角を現した1頭で、3着には覚醒前のアグネスデジタルがいた。やはり両馬ともに外国産馬「マル外」である。
続いて挑んだ本番GⅠ NHKマイルカップでは2番人気と支持を集め臨んだ。1人気は武豊騎乗のマチカネホクシン。レースでは中団に構え直線で先に抜け出したトーヨーデヘアを大外から差し切り、ハナ差でGⅠ制覇を成し遂げた。鞍上の岡部幸雄はNHKマイルカップ初制覇、調教師の小島太と馬主の西川清にとってはGⅠ初制覇であった。その年の秋は天皇賞に挑戦し、テイエムオペラオーの4着。続く次走はさらに延長し2400mのジャパンカップでは15着と大敗したものの、クラシック年度の成績としては上々といえるものだった。

しかし、ここからイーグルカフェに長い低迷が訪れる。

イーグルカフェの管理調教師は小島太、騎手時代には中央通算1000勝を数えた名人。さくらコマース代表の全演植、調教師・境勝太郎とのトライアングルで日本ダービー2回を含む数々の重賞で勝利を挙げていた。
調教師に転身後は実業家・西川清の所有馬を多く管理し、「カフェ」の冠名を持った馬を多く手掛けた。最も有名な馬はマンハッタンカフェだろう。
この頃小島氏には思惑があり、イーグルカフェをデビュー戦の舞台ダートレースに戻した。芝・ダート、二刀流への可能性を感じていたのである。

年明け始動戦としてGⅢ根岸Sを選択したが大敗。翌月のGⅠフェブラリーSにも出走したが結果を残せなかった。再度芝に戻す契機としてドバイ遠征を企図し国際GⅡに挑戦も完敗。GⅠ馬らしからぬ連敗街道を歩み続けた。
この頃になって頭角を現したのが同期のアグネスデジタルで、交流重賞の勝利を皮切りに重賞5連勝を達成することに。またこの年のクラシックではクロフネ、キングカメハメハら怪物級の優駿が台頭。イーグルカフェの存在感は日増しに薄くなっていった。
結局次の勝利は、マイルカップから20連敗後の02年7月のGⅢ七夕賞だった。田中勝春鞍上で、直線上がり最速を繰り出すとコイントス、アメリカンボスら強豪を抑え2年2か月ぶりの勝利を飾った。

そして次走札幌記念を2着で終えると転機が訪れる。

同厩舎の後輩馬マンハッタンカフェの帯同として渡仏遠征、国際GⅡドラール賞に出走し3着に入線したのだ。帰国後、戦いの場として選んだのはダートレース。栄えある国際GⅠ・ジャパンカップダートに出走した。
このレースはゴールドアリュールとアドマイヤドンの2頭が人気を分け合っており、イーグルカフェは5番人気だった。
この時のカフェにとって最大の僥倖、それは鞍上に全盛期のフランキー・デットーリを迎えたことだった。イーグルカフェは世界一の騎手を背に、この日を待ちわびていたかのような走りを見せる。
カフェはスタートから終始、1人気ではなく2人気だったゴールドアリュールをマークしていた。アリュールの鞍上は武豊。デットーリは世界にその名を知らしめる、日本代表の存在を最も警戒していたのだ。
この選択が功を奏した。カフェは直線でアリュールの背後から勢いよく飛び出すと、そのままゴールまで突き進んでいった。
後にデットーリはこう語った。
「ドラール賞でイーグルカフェを見ていた。いい末脚が使えることは分かっていた」
仏遠征時に出走したたった1度の走りを、同レースに出ていた鞍上は記憶し、把握していた。「神がかった」という形容が当てはまるまさに世界一の騎乗だったが、兎にも角にもイーグルカフェは念願のGⅠ2勝目を挙げることができたのだ。

イーグルカフェはその後04年まで現役を続行、勝利を重ねることはもうなかったが、同世代で活躍したGⅠ馬たち…アグネスデジタル、キングカメハメハ、クロフネ、同厩で後輩のマンハッタンカフェまでもが皆、すでにターフを去っていた後だった。
日本競馬の長い歴史のその中で、芝とダートのGⅠを両方制した馬は5頭のみ。アグネスデジタル、クロフネ、アドマイヤドン、モズアスコット、そしてイーグルカフェである。
46戦5勝、内GⅠ2勝。長い長い戦いの中で信念を背負い、幾多の敗戦を味わいながら走り続けてきた先には、他の名馬たちにも決して劣らない「泥まみれの栄光」が輝いていた。

今年のNKHマイルカップは重賞馬、素質馬が揃い例年以上の盛り上がりが期待される。若きマイルホースたちの行く末は誰にも知る由がないが、それぞれの未来を温かく見守っていきたい。サラブレッドの可能性は、いつの日も無限である。

最後に、冒頭に話を戻そう。
JRAがスターホースたちに送ったコピー。
もしイーグルカフェに与えるのなら、
どんなものが相応しいだろうか。

こういうのはどうだろう…?
『数えきれぬ敗戦の先に掴んだ " 二刀流の神髄 "』

「GⅠ NHKマイルカップ。まもなく出走です」

マンハッタンカフェは2015年17歳で没、
翌16年にはイーグルカフェも19歳で…。
同じ冠名の2頭、天国でも仲良くね。R.I.P

はじめに

お疲れ様です。今回もお読みいただき誠にありがとうございます。いつも予想のパートだけでなく、序文のコラムまでしっかりと目を通してくれる方々がおり、非常に嬉しく思っています。今回のイーグルカフェはGⅠ馬の中にあって少々マイナーな気もしていましたが、NHKマイル勝ち馬の中では断トツに好きで、なによりフランキー騎乗で優勝した旧JCDの復活劇は本当に圧巻だったので、今でもとても印象に残っています。
さて今回のマイルカップ攻略noteですが、「イーグルカフェはマイナー」と自分で書き記した通り、優勝馬でその後華々しい活躍を遂げた馬があまりいないのが特徴的なレースだと思っています。
何故なのか?
そこを着眼点として以下にレース展望をまとめました、好走データ集も健在、推奨馬の紹介までどうぞお付き合いください。


今回のテーマは「早熟性」
より完成された馬を狙えば勝てる?!

今年のマイルカップは素質馬の出走が多く、大変面白そうなレースになりそう。そんな中、今回も過去の傾向から有力馬を探っていきたいと思います。これは多くの予想家の方々がけっこう昔から言っていることではありますが、NHKマイルカップの勝馬においては早熟傾向が強い、という特徴が挙げられます。昨年勝利したシャンパンカラーは、レース後休養を挟み調子が上がらないままダートGⅠフェブラリーSに参戦、その後単距離GⅠの高松宮記念で17着と迷走気味に。
それどころか過去10年を遡るとマイルカップ勝利後、古馬になってから再びGⅠを制した馬は14年のミッキーアイルのみと、歴代の勝利馬はみなパッとしない印象が強いです。
3歳春に行われる1600mスピードレースは、その時点でのサラブレッドとしての完成度をより求められます。これが今回のテーマに掲げる「早熟性」というキーワードにつながるわけです。勝利馬の多くは春~夏にデビューした馬が多く、血統的にもダイワメジャー産駒等の早熟傾向の強い種牡馬が見られます。またノーザン、社台といったトレンド以外の、比較的マイナーな生産牧場や個人馬主の活躍も散見されますので、普段とは視点を変えて予想に臨むのも面白いかもしれません。
今回は粒揃いの出走馬にあって、想定1人気のジャンタルマンタルの素質は群を抜いています。なにせレコードを記録した皐月賞で3着ですからね。ただ10月デビューからの朝日杯優勝は、「早熟性」というテーマからは少し乖離しています。デビューが早かった想定2人気アスコリピチェーノ、3人気ゴンバデカーブースの方が現時点での完成度としてはより高く、このトレンドに対する背反性をどう捉えるかが的中へのカギになると思います。


これを買えば勝てる!
今週の「勝利へ必須条件」

さてここからは毎度おなじみ勝利への必須条件をお届けいたします。
皆さんの推しに当てはまっているかどうか、ご確認ください。

新馬戦を勝っている

今回のテーマのスタートラインというべき部分です。早い段階で完成されている≒デビュー戦で活躍できる、という簡単な理屈です。またスピードを求められるマイルGⅠですから、早い勝ち時計もしくは上がりタイムで勝っている馬は評価を上げたいです。早めに動ける先行力・機動力も重視したいですね。

東京・中山での出走経験がある

これは全馬に該当しており、過去10年をみると関東馬4勝と関西馬6勝と少々意外な傾向が。今回も栗東所属の中に有力馬がいますが、関東への輸送経験を済ませていれば問題ないと思います。逆に初遠征の馬は割り引くべきでしょう。

重賞勝ちもしくは連対を経験している

マイル重賞に限定する必要はないと思いますが、重賞実績はやはりここでも重視したいです。GⅡ~GⅢなら連対、GⅠでの実績は5着以内が好走の目安になると思います。19年2着だったケイデンスコールは朝日杯13着、毎日杯4着で人気を落としていましたが、8月の新潟2歳S勝ちの重賞馬でした。ここにも早熟性というカギが垣間見えますが、こういった穴開けパターンはマイルカップにおいてはままあります。

上がり3F最速での勝利経験

森タイツ式指数およびnoteでは常日頃から「上がり最速を使える馬を」という注意喚起を行っています。とりわけスピード勝負になる東京マイル戦において、上りを使えるか否かは重要なファクターだと思います。今回穴馬候補で気になっているのがロジリオン。1400m戦ですが東京では3戦2勝、京王杯2歳Sで2着に入った際の上がりタイムは33.0ジャストで、これはアスコリピチェーノの1400新馬戦上りタイムよりも0.3秒早かったです。
その他にも上りが使える末脚自慢をピックアップしてみましょう。

1分33秒台までの持ち時計

過去10年の1着走破タイムの平均を計ったところ、
「1分32秒7」で、最も速かったのが21年シュネルマイスターが勝利した年で「1分31秒6」でした。この傾向からも近年は高速決着になることが多く(昨年は稍重で遅かったですが)、スピード勝負について行ける脚を持っている馬を選びたいです。14年勝ち馬ミッキーアイルは未勝利戦で1分32秒3を計測。このことからも分かるように、新馬戦・未勝利戦も物差しの尺度になるということです。
この観点から穴馬候補として挙げたいのがキャプテンシー。比較的レベルの高かった中山マイル・ジュニアCの勝ち時計が1分32秒5と大変優秀でした。前走NZTでは直線で不利(接触)があり無理をさせずに終えましたので、人気落ちした今回マイペースで刻めれば面白い存在になりそうです。


データで斬る!
NHKマイル好走データ集

1人気の成績

過去10年【2-1-1-6】、過去7年だと【0-1-1-5】で信憑性は薄いです。
注目ポイントは前走が桜花賞だった1人気は【1-1-0-2】と信頼度が多少アップ。もともと牝馬の好走が目立つレース。アスコリピチェーノが1人気に変わるようなら一考です。

かつてのマル外ダービー

冒頭コラムで外国産馬の活躍が多かったことに触れましたが、現在でもその傾向は息づいています。15年アルビアーノが2着、21年シュネルマイスターが1着と、人気どころが堅実な結果を残しています。今年の外国産馬はノーブルロジャーが一頭出走予定、4番人気以内なら狙ってみる価値は十分あるでしょう。

馬場にもよるが前残り展開も

逃げ馬の成績は【2-1-1-6】、1人気なら連対率100%です。追込み馬も過去7連対で両極端な印象ですが。内枠は逃げ先行、外枠は差し追い込み、でそれぞれ区分けしておくといいかもしれません。基本的なことですけどね。

前走勝ち馬を疑ってかかる

前走GⅡのNZT勝ち馬は過去10年で馬券内がゼロ。狭い中山と広い府中ではコース適正が異なるため当然と言えば当然です。他コースで勝ち上がって来たからと安易に印を打つのは危険。むしろ荒れやすいレースにつき、前走敗けの馬に妙味を見い出したいですね。ポイントとなるのは前走よりも2~3走前の成績。前項でも述べましたが、ケイデンスコールの例では3走前で重賞勝ちしています。あくまでも今回のテーマは「早熟性」ですから、2歳時夏~秋にかけての活躍、重賞で好走した馬に再度注目してみましょう。


森タイツ式推奨馬の紹介

サンデーレーシングの深窓令嬢

前走GⅠ桜花賞2着、昨年の阪神JF覇者の2歳女王アスコリピチェーノが、3歳マイル女王の座を狙いに来ました。
昨年末のJFでは2着のステレンボッシュにクビ差の勝利。そして前走桜花賞では、そのステレンボッシュと人気を分け合った結果3/4馬身差で敗北。乙女の熾烈な争いにはっきりとした決着がつかないまま、それぞれが別路線を歩むことに。アスコリピチェーノはデビューの東京1400m以外の3走は全て1600mを走っており、その適性の高さからNHKマイルCに臨んできたことと思われます。思い返せば阪神JFは1分32秒6のレコードタイムで優勝。東京マイルは初出走となりますが、今回は輸送もなく、阪神・京都よりも広い府中でこそ差し脚が活きてきそうな気がします。

アスコリピチェーノはダイワメジャー産駒。芝1200~1600mを得意としており、ことマイル戦においては高い連対率を誇ります。以前にXの方でポストしましたが、産駒の傾向は早熟で知られ、5歳以降になってGⅠを制したダイワメジャー産駒は今まで1頭もいません。逆に言えば早熟傾向が目立つ本レースにはうってつけの血統といえます。実際過去10年の中で、アドマイヤマーズ、メジャーエンブレムがそれぞれ勝利しており、アスコリピチェーノも大いに期待できそうです。

本馬のデビューは6月の東京でした。その後新潟2歳SからのJF連勝と、早い段階での完成を求める今回のレース傾向に完全にマッチしています。またルメール騎手の復帰も決定的で、デビュー戦以来の騎乗になりますが、信頼度は一段と高くなるでしょう。NHKマイルもシュネルマイスター、メジャーエンブレムで過去2勝を挙げています。馬券妙味は薄まるでしょうが…笑
一つ懸念点を挙げるとすれば、デビューから4戦全て間隔を空けて使われており、1か月の短いスパンで出走するのは初めてです。ましてや激走のGⅠレースですから、最終追いなど仕上がり具合いは十分チェックした方がよさそうです。
いずれにしろ好走条件は整ってますので、前走2着からの挽回を託すには打ってつけのシチュエーションだと思います。今度こそ、2歳女王の激走に酔いしれる準備をどうぞ。

マル外からの急先鋒

GⅢシンザン記念覇者、バリバリの外国血統ノーブルロジャーの参戦です。
11月東京マイルでの新馬戦であっさり勝利すると、年明けのシンザン記念では川田騎手に乗り替り。前走とは異なり中団に控え、直線で外へ出されると一気に伸びてきました。このレースでは川田騎手の好騎乗が目立ちました。ここで馬群の中で抑える競馬を覚えさせたことは大きかったと思います。前走毎日杯では逃げを打ったメイショウタバルを捉えることができませんでしたが、当日は重馬場で展開も向かなかったことを考慮すれば、そこまで悲観する内容ではなかったと思います。

ノーブルロジャーはパレスマリス産駒で、JRAでは実績皆無のまごうことなき米血統です。本国ではGⅠ2勝を含む重賞6勝を挙げており、実績は十分。今回出走するジャンタルマンタルも同産駒です。持ち込み馬だったジャンタルとは異なり、米国のファームで生産されたノーブルロジャーは今回唯一のマル外馬として出走します。母系の血統をみると母父にモアザンレディがおり、この馬はドゥレッツァやカフェファラオの母父にもあたります。ヘイロー系のスピードタイプの馬で、どちらかというとノーブルロジャーもドゥレッツァのようなオールラウンド型の中距離馬のような気がしています。従ってマイルでの切れ味勝負になると少々分が悪いかもしれません。
話が少し変わりますが今回のnote序文ではイーグルカフェと「マル外」の馬について語りましたので、時は変われど外国血統が強いGⅠという観点から注目していても良いかもしれませんね。森タイツ式のセルフサインという訳です笑

NHKマイルは春~夏にデビューした早熟の馬を推奨、と言っておきながらこの馬は11月デビューの遅咲き馬。まだまだこれからの成長を見込んでいます。ただ、だからといって今回のトレンドから外れるかというと決してそうではなく、この馬は新馬戦時からレースセンスの高さを垣間見せています。
出遅れ必至といわれている新馬戦でしっかりと発馬を決めている点もそうですが、初戦から長距離輸送をこなしての勝利というのも非常に有望だと思います。シンザン記念では馬群を経験させ、毎日杯では伸びきれなかったものの好位を追走するという競馬、この2戦で行った川田騎手の「教育騎乗」はマイルカップだけでなく後々まで生きてきそうで、流石だなと舌を巻きます。今回は川田騎手が1人気のジャンタルマンタルに騎乗するため、復帰した松山騎手に乗り替りとなりますが、代打としては申し分ない人選だと思います。かつての「マル外ダービー」で外国産馬の逆襲に期待しましょう。

復活のヤングマイラー

ここまで2戦2勝、この馬の登場を待っていたファンも多いはず。ゴンバデカーブースが復帰初戦からGⅠ戴冠を狙います。昨年6月に東京新馬戦でデビュー。勝利を飾ると、2戦目にして10月のGⅢサウジアラビアRCを制覇しました。この重賞では少頭数ながら、ボンドガール・シュトラウスといった大器を直線で一気に撫で斬り。2歳重賞戦線へ一気に名乗りを挙げました。その後、ホープフルSへの出走を予定していましたが直前の感冒により急遽取り消し。およそ7か月半の時を経て戦線へ復帰してきました。

ゴンバデカーブースは新種牡馬ブリックスアンドモルタルの初年度産駒です。この種牡馬は米血統で現役時代にはBCターフを含むGⅠを5勝しており、その父ジャイアンツコーズウェイもGⅠ6勝で全欧年度代表馬に選ばれている、超がつく良血馬です。昨年はゴンバデカーブースの他2歳戦で14頭の勝ち馬を出しており、2歳リーディングでは9位にランクインされました。現3歳世代ではアンモシエラやイーグルノワールらダートでの活躍馬が目立ちますが、本来の適正は芝と考えて良いでしょう。母アッフィラートはディープインパクトの直系で、ディープ×米ストームキャット系の配合は切れ味鋭く、マイルから芝中距離くらいであればこなせそうな印象を受けます。

ゴンバデの6月デビューという臨戦過程もまた、今回のテーマである早期熟成に沿っており期待はできると思います。反面、長期休養からのぶっつけ本番なので、ポテンシャルが高いとはいえ不安は残ります。つい先日の例でいうと桜花賞に参戦したチェルヴィニアも同じうような状況でイマイチな出来でした。陣営側も控えめな発言に終始しており、その点からも不安要素を少なからず感じます。とはいえ管理の堀厩舎は東京マイル戦を最も得意としており、過去5年における出走回数は75にわたり、その連帯率は40%を超えています。次点の手塚厩舎が出走回数90で連帯率25%前後であることを考慮すると、これは驚異的な数字であり、まさに「府中マイルに堀厩舎あり」といって過言ではないでしょう。そして鞍上に「雷神」Jモレイラ騎手を配したことが何よりも心強く、この騎手の実力は記事をお読みの方ならよくご存じだと思います。休養明けという大きな不安要素はあるものの、それ凌駕する素質は余りあるほど。マイル界のニューヒーロー誕生に刮目したいと思います。

最高峰の頂へいざ

現在、野田順弘氏及びダノックス社が所有する冠名「ダノン」の3歳馬は18頭、その中でクラシック戴冠へ近いと言われている馬がダノンデサイル、ダノンエアズロック、そしてここで解説するダノンマッキンリーです。
昨年9月に阪神でデビューすると2連勝、早くも重賞制覇の期待がかかりましたが12月の朝日杯では8着の大敗。道中掛かり気味でスローになったマイルの流れに全く対応しきれていませんでした。続く東京のクロッカスS(L競争)でも存外な内容でしたが、3月の中京ファルコンSで覚醒、最後方から上がり33.6秒の末脚で差し切り勝ち。クラシックへ向け立て直してきました。

ダノンマッキンリーはモーリス産駒、その数は多く昨年も179の出走頭数で勝利回数は29、昨年の種牡馬リーディングで9位を記録しています。重賞活躍馬ではジャックドール、ピクシーナイト、ノースブリッジ、マテンロウスカイら、先行脚質で脚を長く使えるタイプが多いです。後方から差し脚を伸ばすマッキンリーのようなタイプは少し珍しいですね。母ホームカミングクイーンはアイルランド馬で、英クラシックマイルGⅠ勝ち馬。父方にデインヒルの名前があり、モーリス×デインヒルの配合は持続力と瞬発力を兼ね備えた面白い血統構成だと思います。

この馬の強みはファルコンSで見せた末脚の爆発力ですが、あの時の上がりタイムを改めてみると、上がりタイム2位のシュトラウスに0.5秒差つけており、驚異的なスピードで差し切っています。前走ファルコンSの出走馬は過去10年で1勝のみ(2着0回)と奮いませんが、20年にラウダシオンが酷似したローテから優勝しています。ここでマッキンリーが上位争いを演じても、なんらおかしくはありません。
今回課題になるのはマイルへの距離延長で、今まで5戦してマイルを走ったのは8着に敗れた朝日杯のみ。掛かり気味になっていたあの時と同じ過ちを犯すわけにはいかないでしょう。折り合いの問題は前走である程度目途が立ったはず。当日はハイペース気味の、早い流れのマイル戦になった方がこの馬には好ましいと思います。鞍上は継続して北村友一騎手が務めます。近年GⅠ勝ちからは遠ざかってますが、かつてのクロノジェネシスの様に、手が合う馬と出会えれば好走を連発します。
「マッキンリー」とはアラスカに位置する北米最高峰の山脈。そびえる壁は果てなく高いですが、その頂を目指しダノンマッキンリーが今駆け上がります。


おわりに~気になるあの馬の評価は?~

ここまでが今回のNHKマイルカップ攻略noteです。
今回は穴馬寄りの1頭を含む計4頭まで掲載させていただきました。
個人的には大穴枠でキャプテンシー、ロジリオンも狙ってみたい1頭に数えていますので、ご興味のある方はチェックしてみてはいかがでしょうか?
ぶっちゃけこれ以上は書けません、GWも仕事です笑

まあ、本来であれば全頭書いてみたいところではありますが、小生の能力と限られた時間ではここまでが限界です。同じ界隈で全頭診断・全馬チェックで記事を書いている方は本当に凄いなあと感心してしまいます。
では最後になりますが、気になる想定1人気のあの馬について少しだけ触れて締めさせていただきます。

2歳王者堂々の凱旋

ジャンタルマンタルは近年の中でもハイレベルだった皐月賞で3着、川田騎手の好騎乗もあり直線ではよもや、というところまで見せ場を作りました。私の本命でもありました。もともとマイラータイプであることは早い段階で示唆されており、皐月賞の舞台である中山2000mでその限界を露呈した感はあります。それでもあの内容ですから、川田将雅恐るべし、です。 
ということで陣営が選択したのはクラシック2戦目の日本ダービーではなく、より適性の高いNHKマイルカップでした。 
共同通信杯は1800mだったので東京マイルの舞台は初になりますが、この馬にはより適性が高いコースでしょう。ジャスティンミラノには2戦して敗れてはいるものの、力関係からいけば今回優勝最有力候補なのは間違いないです。
不安な点として、コースレコードを記録するほどの激闘だった皐月賞から約1ヶ月でのGⅠ出走であることが挙げられます。
皐月賞からNHKマイルのローテを選択した馬は過去54頭いて、NZT組に次ぎ2番目に多いです。が、過去10年では15年クラリティスカイ、19年アドマイヤマーズのみで、2頭ともにここで勝っています。現実的にはかなり厳しいローテーションにつき出走は減少傾向にあるも、ダービーから逃げたといわれない為に是が非でも勝ちに来る。そんな傾向でしょうか。もちろんジャンタル陣営もここは本気で獲りに来るでしょう。
 いずれにしても疲労の蓄積は最も心配するところで、どこまでやれるのか追切・陣営のコメント・当日のパドックや返し馬の状態まで追ってみてもいいかもしれません。森タイツ式では有力候補ではあるものの、今回は本命にはしないという評価にとどまっています。
また1人気は過去10年で2勝とデータ上はやや不安があります。基本荒れ模様になることの多いレースですから、素質馬なのは間違いないですが、やはり過信は禁物だと思います。

それでは今回はここまで、次回はヴィクトリアマイルですね。
また来週お会いしましょう…。


今回参考にさせていただいたサイト


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