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【読書感想文】『存在しない女たち』

(このnoteは3分で読めます。約2,700文字)
先週、『多様性の科学』という本を読みました。『多様性の科学』の中で引用されていたのが、この『存在しない女たち』でした。エッジの効いたタイトルだと思いましたが、それに惹かれて『読んでみよう』と思ったわけです。

訳者あとがきを読むまで知らなかったのですが、英『サンデー・タイムズ』紙のベストセラー第1位に輝いたり、英『フィナンシャル・タイムズ』紙とマッキンゼー・アンド・カンパニーによる、2019年ビジネスブック・オブ・ザ・イヤーに輝いていた大変話題の名著だったようです。

このnoteでは、キャロライン・クリアド=ペレス氏の『存在しない女たち』についての読書感想を書きます。内容の要約でなく、あくまで私の感想ですのでご了承ください。主観的な感想も多くございますので皆さまの広いお心で読んでいただけますと幸いです。

【総評】
オススメ度:★★★★★
読みやすさ:★★★☆☆

【対象とされる読者層】
・ダイバーシティに取り組んでいる方
・男性全般
・女性に対するバイアスの詳細を知りたい方
・女性管理職を増やす取り組みをされている方

本書は全体で500ページほどありますが、本編は320ページほどで残りは注釈になっています。180ページほどが注釈になっているほど、本編では色々な数値・データ・実験が出てきます。興味深い内容である一方、読むために体力が必要な書籍だと思います。

✅1、総評

1-1、全ての人に読んでもらいたい本

女性管理職の割合を増やそうとしている企業が多くなってきています。ダイバーシティについて語られる文脈の中で、男性が多数を占める組織における女性の推進について議論されることも増えています。

厚生労働省は、女性活躍推進企業認定企業に対して『えるぼし』を付与したりしています。

では、『なぜ女性活躍を推進する必要があるのか?』と質問されたときに、皆さんは明確な回答をすることはできますか?『女性の権利』などいろいろな説明はできそうですが、少なくとも私はエビデンスに基づいた論理的な説明はできませんでした。

本書『存在しない女たち』は、その疑問に答えを出してくれます。企業側が課題図書に設定しても良いぐらい価値のある本だと思いました。

1-2、暗い気持ちになる記述の多い

『なぜ女性活躍を推進する必要があるのか?』という疑問に答えを出す過程で、女性の現状について数値的な説明が出てきます。途上国における性被害件数など、正直暗い気持ちになってしまう記述も多く出てきます。


✅2、印象に残った内容と感想

2-1、第1部 日常生活

第1部では、日常生活における男性優位について、行政の除雪サービスと公共トイレの観点で説明がなされています。

あなたが市の職員だったとして、『除雪をどこから実施しますか?』という議論があったときにどこと回答しますか?私は『交通量の多い道路』と回答します。しかし、ここに既に男性基準が入ってしまっていると本書では述べられます。

『トリップチェイン』というキーワードが出てきます。移動手段が車であるという発想から道路の除雪を思い浮かべますが、女性は徒歩で移動することが多いというデータが出てきます。これは、『トリップチェイン』と呼ばれる、自宅とスーパーマーケット、スーパーマーケットと保育園、保育園と職場など、自宅と職場だけでない交通手順の事です。

『トリップチェイン』の場合、徒歩や自転車が移動手段になることが多く、その場合は歩道を除雪してもらった方がメリットが大きくなるのです。これについての詳細はぜひ本書を読んでみてください。おそらく男性にはない発想で、『なるほどな。』と思うはずです。

2-2、第2部 職場

『無償のケア労働』『データにおけるジェンダー・ギャップ』というキーワードが出てきます。印象的な記述がありました。

天才だと思う人物を思い浮かべてみてほしい。
第4章 実力主義という神話

皆さんは誰を思い浮かべますか?本書ではこのように続きます。

おそらく、男性を思い浮かべた人が多いのでは?(中略)私の頭に浮かんだのはアインシュタインだった。(中略)
現実にはこうした偏見(「優秀バイアス」と呼ぶことにしよう)が意味するのは、男性教授たちの方が博識で、客観的で、才能があると思われているということだ。
第4章 実力主義という神話

私も男性を思い浮かべてしまいました。小説の人物ですが、ガリレオの湯川先生を思い浮かべました。男性を思い浮かべてしまった私自身もバイアスがかかっていると認識しました。

2-3、第5部 市民生活

「GDPには含まれない無償労働」はとても興味深い項でした。国の経済指標として一般的なのは国内総生産(GDP)です。GDPは世界恐慌が起こり、経済崩壊に対処するために現状を把握するために作られた指標ですが、『料理』『掃除』『育児』など家庭における無償労働はその要素に入っていないのです。

GDPができたころに第二次世界大戦が起こったこともあり、戦時中に必要な指標であったため無償労働は除外されたのではないかということが記載されています。しかし、これも男性基準の話で無償労働を現在のGDPに含めない論理的な理由になりません。


✅3、書籍紹介

※冒頭部分に記載した内容を再掲します。

【総評】
オススメ度:★★★★★
読みやすさ:★★★☆☆

【対象とされる読者層】
・ダイバーシティに取り組んでいる方
・男性全般
・女性に対するバイアスの詳細を知りたい方
・女性管理職を増やす取り組みをされている方

本書は全体で500ページほどありますが、本編は320ページほどで残りは注釈になっています。180ページほどが注釈になっているほど、本編では色々な数値・データ・実験が出てきます。興味深い内容である一方、読むために体力が必要な書籍だと思います。

過去の読書感想文はマガジンでまとめております。ぜひ読んでみてください。


✅おまけ。今後読む予定の本。

『プレゼント』

スペンサー・ジョンソンの新しい著書。書店に行った時に陳列されているのを発見。

『リーダーの仮面』

盛岡で働く知人の紹介。

『本日はお日柄もよく』

盛岡で働く知人の紹介。

『Z世代マーケティング』

最近、マーケティングちっくな仕事をし出したので、勉強のために読みたい本。

『日本の「運命」について語ろう』
会社の同じ部署の大先輩がオススメしてくれた本。浅田次郎の他著書『世の中それほど不平等じゃない』は『地元の図書館でレンタルして読むのがちょうどよい』とのこと。

皆さんもおすすめの本がありましたら、ぜひ、コメント欄で教えてください。

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