【就職活動】『やりたいことがないので、色々な案件に触れられるコンサルが良いと思っています。』

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Matcher(社会人と就活生をつなぐマッチングアプリ)で就職活動中の大学生とお話する機会があります。コンサル業界志望の方で『やりたいことがないので、色々な案件に触れられるコンサルが良いと思っています。』と言う方に何人かお会いしました。

業界の選び方は人それぞれですし、キャリアに正解はないため、そういった志望動機でも全く問題ないと思います。しかし、実際にコンサルタントとして働いている身からすると『本当にその理由で大丈夫なのかな?』と心配になってしまうことがあります。

このnoteでは、『経験を積むため』や『どこでも通用するスキルを身に付けるため』、『やりたいことがないので、色々な案件に触れられるコンサルが良いと思っています。』などの理由でコンサル業界を志望することについて私の主観を書きます。

✅1、『いろいろな案件に触れられるのでコンサルが良いと思っています。』

前述の通り大前提としてキャリアの選び方は人それぞれで、そもそも正解はありません。十人十色の選択があり、その一つ一つが正解です。そのため、ここから先はあくまで私の主観ということをご承知おきください。

就活生の中には『まだ自分が何をやりたいのかはっきり決めることができない』という方が少なからずいらっしゃいます。私もその1人でしたので、お気持ちはよく分かります。『まだやりたいことは決められないけど、コンサル業界に入れば色々な案件に触れることができるため、色々経験した後に何をやりたいか決めよう。』と考えているようです。

また、『とりあえずコンサル業界に入っておけば、ロジカルシンキングなどどの業界でも使える必須スキルが身につくから、コンサル業界にしよう。』と考える方もいらっしゃいました。

コンサル業界に就職することを、一種のモラトリアム期間と捉えているような感じでしょうか。『そういった考えもアリだな』と思う一方で、『実態とは少しかけ離れた予測なのではないか』とも思います。


✅2、生半可な思考ではクライアントを満足させられない

コンサルタントは自分たちの知識や考えなど目に見えないものを顧客に対してサービスとして提供します。メーカーのように製品を持ちません。コンサルタントはクライアントが『自分たちではできない』と判断してコンサルタントに投げられた問題を知識や考えを使って問題解決していくわけです。

ということは、少なくともクライアント以上にその問題に対して知見を持っている必要があります。そもそもクライアント自身で解決できる問題であれば、コンサルタントに案件として依頼はしないので。

ITシステムに詳しくないコンサルタントが、ITシステムのことがある程度分かるクライアントに対して、ITシステムに関する有用なアドバイスを提供することはできないわけです。(アドバイスしてるっぽく見せることはできますが、メッキはすぐにはがれてしまいます。)

知らない業界・業種の案件にアサインされたときに、クライアントに対して期待以上の価値を提供するためには必死になって知識をインプットしなければなりません。

たしかに、コンサルティングファームに入ったら色々な案件に触れることができるかもしれませんが、それは言い方を変えると、常に勉強し続けないといけないということです。それも生半可な勉強ではなく、クライアントの知識レベルを超えるほどの勉強です。

駄菓子屋で安いお菓子を買い物かごに入れていく感覚と同じだと思っていると痛い目を見るかもしれません。


✅3、『経験した』と言えるまでには何年もかかる

たしかに、コンサルティングファームに入ったら色々な案件に触れることができると思います。数か月単位の案件もあるので、例えば3か月の案件であれば1年間に4つの案件を経験できるわけです。

それはそれで素晴らしいと思うのですが、『その業界のことなら、そのビジネスのことなら十分理解できた。』と言えるようになるためにはそれなりの時間が必要だと思います。

以前、上司に『○○業界に10年以上いると思うのですが、その業界のことを1周できましたか?』と聞いてみたら、『1周どころか、おそらく1/4周ぐらいしかできていないと思う。』と返されました。10年選手ですらそう感じるそうです。数か月の期間でその業界・業種を分かった気になるのは少し早いのかもしれません。

『期間が長いから良い』という安易なことは思いませんが、『経験した』と言えるためにはそれなりに時間を費やすことが必要なのではないかと思うのです。

『とりあえず、3~5年コンサルタントをやってから、何をやりたいのか考えよう。』と考えていたとしても、3~5年ぐらいでやりたいことを決められるほどの経験が得られるのか少し疑問です。


✅4、コンサル業界で得られるスキルは、どこの業界でも得られるスキル

『コンサルタントのスキルを身に付ければ、どこの業界でも転職できる。なので、いったんコンサル業界を目指している。』という意見に対して私が思うのは、『結局、コンサル業界で得られるスキルは、どこの業界でも得られる。』ということです。

『コンサルタントで身につくスキルって具体的にどういうものをイメージしているの?』と就活生に聞いてみると、高確率で『ロジカルシンキング』という回答が返ってきます。正直、『ロジカルシンキング』はコンサルタントでなくとも、どの業界でも求められるスキルです。

そして、どの業界であってもちゃんと仕事をしていれば、論理的・構造的に考え・伝える『ロジカルシンキング』のスキルは身につくと思います。結局、コンサルタントになってから身につくスキルで、他の業界でも通用する共通的なスキルは、他の業界に就職しても身につくはずなのです。


✅5、『会社は学校じゃない』

『会社を自分の都合の良いように使い倒す』という考え方には基本的に賛成ですが、と同時に『会社は学校じゃない』とも思います。

もちろん、コンサルティングファームに新卒で入社すれば、会社は手塩に掛けてコンサルタントとして育ててくれるでしょう。『自分の得意な分野を見つけるために、まずはいろいろな案件に触れてください』というコンサルティングファームも少なからずあります。

しかし、企みなく流されるがままにアサインされた案件をこなしていたら、結局人が足りていない案件にばかりアサインされるようになり、会社にいいように消費されて終わってしまいます。

会社が学校ではありませんので、自分の意思をもって案件を選択していかなければ、本質的な意味での『いろいろな案件』には触れられないでしょう。


✅6、まとめ

コンサル業界を目指す理由は人それぞれだと思いますので、私がとやかく言うことではありませんが、もし『いろいろな案件に触れられて経験値が貯まりそうだから、とりあえずコンサル業界に就職活動をしてみよう。』と考えているのであれば、『本当にその理由で大丈夫なのだろうか。懸念すべきことはないのだろうか。』と一歩下がって俯瞰してみると良いかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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