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「恥ずかしがり屋の女の子が暗唱発表会で“90点”」のとっておき練習法。

夏休みが終わり、新学期がはじまって2週間が経ちました。都内の小学校では、登校かオンライン授業を選択できるケースが多いようですが、対面の授業が再開されはじめていますね。そんななか、先月刊行された、『10歳からの伝える力』(齋藤孝 著)について、さっそくうれしいご報告をいただきました!

小学校低学年の娘が国語の暗唱発表会だったので、漫画にある「緊張しなくなる練習法」で練習して本番を迎えました。
自分で90点の出来と言っていました。
発表しようとすると頭が真っ白になるタイプがここまで言えるのですから効果抜群です。
これを続けて自信をつけさせたいと思います。

ちょうど重版のタイミングでもあったので、著者の齋藤先生に報告すると、「実践報告ありがたいですね。よかったです」とお返事が。

メディア露出が絶えない文化人としても人気でありながら、現役で教育の現場に出ている齋藤先生が教えるメソッドだから効果的なのだと思います。

今回は、いただいたご報告にちなんで、「恥ずかしくて伝えられない」場合はどうしたらいいか、本文から抜粋してご紹介します。

***

緊張の正体を知ろう

 みんなにとって、人前で発表するときの最大の問題は、漫画のなかの理子と同じく「緊張」と「恥ずかしさ」だと思うんだ。自分の意見や考えは持っていても、いざみんなの前に立つと、

 緊張してうまく言うことができない。
        ↓ 
 あせって頭が真っ白になる。
        ↓
 何を言おうとしていたかもわからなくなる。
        ↓
 そんな自分をみんなが見ている! とっても恥ずかしい・・・。
        ↓
 もう二度と人前で発表なんてしたくない!という苦手意識が芽生える。
        ↓
 苦手意識のせいで、次の発表でさらに緊張する。

 となってしまうのではないかな。

 これは、僕が教えている大学でも同じで、大学生になっても、教室の前に出て話すとなると、「心臓がバクバクして口から飛び出しそう」という学生は多いんだ。この「緊張」さえなければ、もっと軽快に話せるのに・・・と思うだろう? でもね、そもそも「緊張」というのは、そう悪いものではないんだ。緊張や不安や恐怖は、良くないもののように思われているけれど、僕たちが生物として生き延びるのに必要な感情なんだよ。運動選手なんかも、ほどよい緊張感があった方がいい結果が出るっていう話、聞いたことあるんじゃないかな? 緊張することで人は慎重になったり、感覚が研ぎ澄まされたりするんだ。だからむしろ、適度に緊張している方が失敗は少ないと言われているんだよ。

「緊張しちゃいけない」と思いすぎて、自分が緊張していることを隠そうとする方が、緊張が良くない方向に暴走してしまうんだ。
「みんな、僕が心臓が飛び出しそうなくらい緊張しているのに気づいているかな」
「声がふるえちゃった。みんなに緊張しているのがばれちゃう!」
「顔が赤くなりそう、どうしよう」

 そう思って緊張を隠そうとすると、逆に「自分は緊張しているだ!」と意識することになって、よけいに緊張してしまうんだ。

 そういうときは、最初に「人前で話すのって緊張しますね」と思い切って自分が緊張していることをばらしてしまってから発表を始めてみよう。聞き手だって自分が同じ立場だったら緊張すると思っているから、「そうだよね。緊張するよね」と共感してくれるし、話しているときに言い間違えたり、言葉が出てこなくなったりしてしまっても、「緊張してるんだもんね」とわかってくれるから。

  それとね、「自分はまわりからどう見られているか」ということばかり気にしすぎないこと。みんなだって君と同じように、先生に指されたら答えなきゃいけないし、発表だってしなきゃいけない。君と同じくらい緊張していて、失敗したら恥ずかしいと思っているんだ。だから、誰も君の失敗を笑ったりする余裕はないし、そこまで君のことを気にしている人はいないよ。そう考えると少しは気が楽にならないかな?

恥ずかしがる姿こそ恥ずかしい!

 緊張していることは無理に隠そうとしない方がいいのだけれど、先生に指されたり、みんなの前で話したりするときに、いちいち恥ずかしがるのはやめておこう。

「え~。そんな急に言われても・・・緊張しちゃう」

 などと言ってモジモジして答えないでいるのは、みんなの時間を奪うことになるんだ。恥ずかしがっている人を見ているほどむだな時間はないんだよ。自分が見ている側になったときのことを想像してごらん。「さっさとやってくれればいいのになあ」と、思うのではないかな? この「さっさとやる」ということが大事なんだ。緊張しても恥ずかしくても、さっさとやって、さっさと去っていく。これが肝心。

 たとえば、カラオケに行ったときに、順番がまわってきても、「え~、あんまり上手じゃないから恥ずかしい」と言って、なかなか歌わない人がいるよね。そういう人がいると、場がしらけてしまうし、その人が恥ずかしいかどうかなんて、まわりの人は全然どうでもいいんだ。いちいち恥ずかしがらずに、「やらないという選択肢はない」と観念して、順番が来たらさっさと歌う。そのために、とりあえず自分のなかで「これなら」という得意の一曲を決めておく(これを十八番おはこと言うよ)。恥ずかしがっていても、物事は先に進まないからね。「自分の役割をこなす」くらいの気持ちでやってしまうのがいいんだ。発表や、先生に指されたときも同じ。どっちみちやらなければならないのだから、むだな時間を使わずに、テキパキとやってしまう。

 授業中に先生が「これ、わかる人いるかな?」と、みんなに向けて質問することもあるよね。これも、いつか順番がまわってくるなら、間違っていてもかまわないから、早めに手を挙げてさっさと答えた方がいいんだ。なぜなら、一番最初に答えた人は、まちがえていてもむしろ勇者としてほめたたえられるからね。これを「ファーストペンギン」って言うんだ。群れで行動するペンギンのなかで、魚をとるために最初に海に飛び込む勇気あるペンギンになぞらえて、リスクをおそれずにちゃれんんじする人のことをそう呼ぶんだ。

 逆に最後の方で全然とんちんかんなことを言うと、「今ごろずいぶんとんちんかんなこと言ってるなあ」と思われてしまうよね。最初の一人はおかしな答えを言っても、みんなのために切り込み隊長となって倒れてくれた「勇気ある者」なんだ。その答えを受けて、先生が「そういう答えもあるけど、こういうやり方もあるかな」と言ってくれたりして、ほかのみんなへのヒントになることもあるからね。自分は倒れても、みんなのためのかけ橋になっている・・・そう思って、ユウキ(※漫画に登場する男の子)みたいなファーストペンギンになってみよう!

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(漫画:『10歳からの伝える力』より)

▼『10歳からの伝える力』のまえがき全文はこちら

(編集部 杉浦)

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