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“いい化粧品”が次々開発されているのに、なぜ肌の悩みはなくならないのか。

プロの理美容師の方々を中心に、皮膚の構造や化粧品化学について、「皮膚美容科学」として講習会を行っている東京美容科学研究所の小澤貴子さん。皮膚科学をベースにした〝正しい手当〟について伝えている小澤さんのもとには、毎日のように、

「石けんで洗えないくらい、肌がヒリヒリします。使っている化粧品の成分を調べてもらえませんか?」
「オーガニックの自然なものを使っているのに、どうしてかぶれるのでしょう? 私の肌が悪いんでしょうか・・・」

といった悩みが寄せられるそうです。

こうした切実な悩みに接しながら、小澤さんが実感されていることを『ウソをつく化粧品』(2015年刊行)から抜粋・編集してご紹介します。

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本当にいい商品なら悩みはなくなるはずなのに

 連日、多くの女性の疑問や質問に答えるなかで、感じることは、女性たちの肌が年々弱くなっている、ということです。
 アトピー性皮膚炎やアレルギーが増えているとよく報道されますので、みなさんもなんとなくはお気づきかもしれないですね。
 実際、昔に比べて女性たちの肌は弱くなり、健康問題にまで発展している人も多いと実感しています。だから、スローライフやロハスといった、自然回帰的な動きが高まり、ヨガやランニング、マクロビオティックやグリーンスムージーなどといった、ナチュラルなものが多くの支持を得ているのだと思います。
 それは、私たちが身を置く、化粧品の世界も同じです。
「オーガニックコスメ」「ナチュラルコスメ」「自然派化粧品」といったコピーで、たくさんの製品が売られています。ほんとうに最近、増えています。
 自然のものなら当然体にやさしいし、肌にもやさしいはず。
 そう思って、みなさん、積極的に「オーガニックコスメ」や「ナチュラルコスメ」といわれるものを使われているのでしょう。
 それでも、私たちの研究所に寄せられるお悩みは、一向に減ることがありません。おかしな話ではありませんか? いい化粧品がたくさん売られているなら、悩みは減るはずです。

「オーガニックだから安全」ではない

 ではそもそも、「オーガニック化粧品」とはなんでしょう?
 どういったものを「自然派化粧品」というのですか?
「ナチュラルコスメ」ってなに?

 ちなみに、食品でいう「オーガニック」は、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないで、自然界の力で生産された食品のことです。表示には規制があって、「有機JASマーク」のない農産物と農産物加工食品に「有機」「オーガニック」などの名称の表示をしたり、紛らわしい表示をすることは法律で禁止されています。
 化粧品に関しては、正確に答えられる人はいないかもしれません。それもそのはずです。
 明確な定義はないのです。産経新聞によると、オーガニックコスメとは

「ハーブなど天然素材を化粧品の材料にし、化学合成物質をできるだけ使わない、自然派の中でも環境に配慮し、有機農法で育てた植物を原料にして製造過程も含めて環境に配慮した化粧品のことを言う場合が多い。基礎化粧品だけでなく、海藻や鉱物を使ったヘアケア用品やメーキャップ用品もある」(平成25年4月8日)

 ということだそうです。
 ですが、私からすれば、「自然食品」や「オーガニック食品」などといった食品から連想してつくられた化粧品のように思えてなりません。
「自然食品はいい。オーガニック食品は体にやさしい。だから、化粧品も自然なもの、オーガニックのものでつくったほうがいい」という考え方の化粧品です。
 父も「自然食品はありえるが、自然化粧品なんてありえない」と長年主張していました。

化粧品と食品はまったく別のもの

 自然食品は食べ物であり、粘膜から吸収するもの。
 それに対して、化粧品は食べ物ではなく、皮膚に塗るものです。
 肌はバリア機能であって、吸収する器官ではありません。肌から栄養を摂るなんてことはありえないのです。
 それから、パッケージなどを見ると、化粧品の成分の一部にしかオーガニックのものを使っていない場合でも、オーガニックコスメを名乗っていることもあります。定義がよくわからないノンケミカルという言葉を多用している化粧品会社もよく見かけます。
 こうした企業による改ざんはもってのほかですが、化粧品に使われる成分が「オーガニックかどうか」など、肌の生理を考えるとたいした問題ではないのです。
 前回前々回の記事でもお話ししましたが、オーガニックコスメや自然派化粧品に配合される成分が「植物由来であること」に、そして「成分を肌の内部まで届ける浸透剤と併用されていること」に問題があります。 

 消費者はだまされないように、目を見開き耳をそばだてて、自分でも、化粧品をよく見る必要があります。
 化粧品には、耳当たりがよく、イメージのいいものがとくに多いからです。

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(編集部 杉浦)

Photo by Chris Knight on Unsplash


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