『オッペンハイマー』は音で自己矛盾を描く
2024年3月30日(土)朝の6:00になりました。
我は死なり、世界の破壊者なり。
どうも、高倉大希です。
日本では、公開されないのではないか。
そんな噂が出回っていましたが、どうにか2024年3月29日に公開となりました。
クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』の話です。
休暇をとって、公開初日に観に行ってきました。
タイトルにもなっているオッペンハイマーとは、原子爆弾の開発者の名前です。
「原爆の父」として知られる、アメリカの理論物理学者です。
アメリカ兵の命を救い、戦争を終わらせるきっかけをつくった自分。
中性子の破裂を連鎖されて、世界を破壊しうる兵器をつくった自分。
近くの人から称賛されて、気持ちよくなる自分。
遠くの人から恨まれて、自責の念にかられる自分。
純粋に、物理学を極めたかった自分。
その先の結果を、目の当たりにした自分。
オッペンハイマーというひとりの男が抱える矛盾を、見事に描いた作品でした。
映像はもちろんですが、音がとにかく印象的な映画です。
光から遅れてやってくる音。
大衆が足を踏み鳴らす音。
映像と音との差異が、絶妙な違和を生み出します。
そんな違和を、登場人物どうしの膨大なダイアログが繋ぎます。
スタンリー・キューブリック監督のことが、よっぽど好きなんだろうな。
クリストファー・ノーラン監督の作品を観るたびに、毎回こう思います。
神はサイコロを振らない。
あらゆるものごとは、必然性の先に生じる。
そんなことはわかっているはずなのに、自己矛盾に苛まれます。
オッペンハイマーという天才もまた、わたしたちと同じ人間でした。
サポートしたあなたには幸せが訪れます。