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オーム・マリウスの華麗なるキャラ変〜映画『アクアマン』二部作への愛とツッコミが止められない1

映画『アクアマン/失われた王国』鑑賞をきっかけに大好きすぎた前作への愛が再燃し、今作含めツッコミが止まらなくなってしまいました。偏愛に満ちたひとりごとを記録してみます。まずは今作でちょっと引っかかった「オームのキャラ崩壊」について。

ヒーロー映画もアメコミもほとんど知らないが、たまたま見に行きハマりにハマった映画『アクアマン』。2024年1月には続編『アクアマン/失われた王国』が日本で公開された。とても楽しみにしていたが、度重なる公開延期の間に不穏なニュースあれこれを目にしてしまい、「見てがっかりになりませんように……」と願いつつ劇場に足を運ぶこととなった。結果、まずは普通におもしろくてほっとした!のと、1回ではよく分からなかったところもあり、ScreenX含め3回も見てしまった。

初回鑑賞直後の印象は以下のようなものだった。
「歳上の弟、いいキャラ出してる」
「完結編として、あっけないほどきれいにまとまっちゃった」

オーム、君、そんなキャラだったっけ?

「Born to Be Wild」鳴り響く前作おさらいも子育て夫婦の日常も、家族総出のファーストバトルも良いのだけれど、主人公アーサーが俄然生き生きと暴れ出すのは弟オームとの再会以降。「え、こんな仲良かったっけ?」という感じでわちゃわちゃしながら兄弟2人旅。言い争ってるのかじゃれてるのかよく分からないやりとりをかましつつ、潜水艇ドライブ、遠泳、かけっこ、妙に息の合ったコンビネーションバトル。見ていて楽しいし、本人たちも楽しそうで非常にけっこうなのですが、君たち、前作のラストでは本気で殺し合ってたよね?

「オーム、いいキャラ出してる」と思ったのは確かだけれど、そのキャラというか兄弟の関係に、当初はちょっと違和感もあった。排他的な自国第一主義の侵略者でやることなすことえげつない*けど、「地上人の破壊行為から海を守る」という強い決意を抱き、彼なりの信念を貫いてアーサーと死闘を繰り広げたはずのオームが、再登場したときにはそこそこ素直な弟(メインお笑い担当も兼任)になってるって、いくらなんでも都合良すぎん?君の信念どこ行った?

*戦争の口実欲しさに小芝居打ったり、実の兄をぶっとい鎖につないで衆人環視のもと愚弄したりはまあいいとして(よくない)、婚約者をだまして発信機を付けたあげく殺そうとするとか、他国の幼い王女の目前でその父王を殺し、無理やり王位に就かせて戦争に駆り出すとかまあまあクソ中のクソですな

地上と海とをつなぐアーサーの対極を成すよう、しかるべき存在に描かれていたのに、今度は「ヴィランが改心してヒーロー側につく」を体現するため、何の説明もなくキャラ改変されたように見えてしまった。それではあまりにかわいそうというか扱いがザツというか……、初めのうちは釈然としなかった。

よく見たら前作で説明ついてた?オームのキャラ変

しかし、前作『アクアマン』をよくよく見返してみたら気がついた。

オームの身に「アーサーとの対決と敗北」「アトランナとの再会」が立て続けに起きたとき、彼はそれまで拠り所としていたものの多くを失った。王としての正統性、純血としての優越感、人生を懸けて自国に尽くすという強い意志。父の教えに盲従し母の教えを否定する必要性、母が処刑される要因となった兄と地上への憎悪。

彼をひたすら駆り立てていた「地上人の破壊行為から海を守る」という決意も、根拠があやふやになってしまった。アーサーに突っかかる理由もなくなっちゃった。そして母の愛だけが残った。

オームはこのとき、力による闘争で完敗しただけでなく、なんていうかイデオロギー的にもアーサーに全面降伏せざるを得なかった。いい換えると世界観、ものの見方に考え方、行動理念が根底から覆った。そして過去の自分の信念、それに基づいた行為は間違っていたのかもしれないと考え始めた、と見るのが自然なのだろうと思えてきた。であれば、今作では初めからお兄ちゃんとじゃれてても不自然ではないのかなと。

だから皮肉は言いつつも終始アーサーを仲間として扱うし、世界の危機と聞かされて進んで協力する。裏切るフラグ*立てられまくっても最後まで裏切らない。むしろ律儀にけなげにみんなを助ける。あ、操られてアーサー殴って魔物復活させてたけど。

*音楽の使い方を見ると、やっぱり操られた結果ちょっと裏切るフラグだったのかとも思います

追記:操られた状態から脱した後は完全にアーサー側の存在として描かれるので、それと対比させるための裏切るフラグだったのかな?と思えてきました

オーム、いきなりアーサーべた褒めの真意

にしても表面上はツンツンしてたのに、退場直前に急にアーサーべた褒めスピーチ始めたのには、「どうしたいきなり」「いや一緒にかけっこして魔物倒してもそこまで分からんだろ」と思った。真の王とか正しいことをするとか、劇中のどこと呼応しているのか不明だったので。

こっちは初回鑑賞時に受けたもう1つの印象「完結編として、あっけないほどきれいにまとまっちゃった」と合わせて考えてみた。前作でアーサーは、マンタとオーム2人のヴィランに勝利し彼らを退けたが、それぞれが投げかけた問い「救えたはずの人間を、理由はどうあれ見殺しにする行為は許されるのか?」「止まらない地上人の海洋汚染に、地上と海の双方にルーツを持つ者としてどう向き合うのか?」には答えないままだった。今作はまさに、アーサーがその答えを出して2人に提示するまでを描いており、それゆえ物語がすごくきれいに閉じたと感じた。

アーサーの宿題提出、マンタとオームの採点

回答へのさらなる返しとして、マンタはアーサーが差し伸べた手を拒否し、オームはアーサーを真の王と認めたのかなと。その構造を踏まえると、オームが退場時にアーサーに語った内容は、前作今作合わせた物語全体を示していると考えていい気がしてきた。「アーサーは自分=オームと異なり、安易な愚策に流れず正しいことを行う」は、海洋汚染を続ける地上を悪と決めつけて攻め滅ぼそうとするのではなく、協力を呼びかけて共に問題解決の道を探ることを指し、「アーサーこそが真の王であり、橋を架けるという暗喩で世界*を救った」は、やはり海と地上を団結に導いたこと、前作のオームと今作のマンタの行動を阻止して世界を救ったことの2つを指していると(劇中ではオーム退場直後にアーサーが地上へのアクションを起こすので、ちょっとフライングなんだけど、内容からいって誤差の範囲ってことでいいかな)。橋の暗喩は、メラが前作ですでに使っていたね。

*お兄ちゃんのマネして 「world’s ass」なんて悪い言葉を使っていましたね!兄弟のこのラストシーンでは、2人してジャングルでの相手のセリフをなぞり合い、笑みを交わしてるの非常に愛しいです

がんばって自分を納得させたので、後はひたすら楽しく見られたよ!でもまたつっこみたいところが出てきてしまった。

ところで、オーム・マリウスのマリウスってミドルネームですかファミリーネームですか?(映画ではこの名前、前作のコロシアムの決闘シーンのプロコン表に書いてあるだけ)原作を当たれば分かるのかもしれないけれど……

まだまだつっこみたいリスト(多すぎ)
オーム、メインヴィランからメインお笑い担当に
トライデントから3回手を離すオーム
アーサーとオームの音楽的な融合(ライトモティーフの話)
音楽に見るオームの変容
2人の父親、トムとオーバックス
最強地上人シン博士(と彼のメガネ)とIWC案件
長いものには率先して巻かれに行く男、ネレウス
2度目も海中で戦ったらアーサーは負けていた?
メラ最強伝説オームとマンタは音符が同じ
アトランナはバルコになんて言って指示出ししたのか?
カラゼンとの対話
めっちゃ迷うアーサー、迷わないけどぽきんと折れるオーム
おまけ メラとオーム


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