オーム、メインお笑い担当への道〜映画『アクアマン』二部作への愛とツッコミが止められない2
映画『アクアマン/失われた王国』にて華麗なるキャラ変を遂げた元ヴィラン、オーム。前作とのギャップありすぎな彼のお笑い担当っぷりについて、偏愛に満ちたひとりごとを記録します。
映画『アクアマン』でメインヴィランとしてアーサーの前に立ちはだかった弟、オーム。目的のためには手段を選ばない非情なアトランティスの王。海を汚す地上人を憎み、地上侵攻を企んだがアーサーに阻止され、王座を剥奪され幽閉された。
続編『アクアマン/失われた王国』でオームは再登場するが、そのキャラはがらがらと音を立てて崩壊する。今作の魅力の1つは、彼の身体張りすぎなお笑い担当っぷりにあるといえよう(?)。冒頭のアーサー回想シーンで、前作のお返しとばかりに脱がされてぶっとい鎖につながれているのがすでに笑える。ぶすっとした表情も笑える。この時点で役割は確定である。オーム、メインヴィランからメインお笑い担当へ。
身体張りすぎなオーム
代わってメインヴィランに昇格したマンタを探し出しその企みを阻止するため、アーサーは手掛かりを知るオームを脱獄させる。砂漠の牢獄でかぴかぴになっていたのが、海水につかるとぱつぱつに戻って追っ手を一掃するのは普通に笑えた。
しかしオームがメインお笑い担当の本領を発揮するのは、なんといっても「悪魔の深奥」に上陸してから。まずアーサーにだまされてGを食う。揚げたて熱々の春巻き食うみたいに、こわごわだけどナチュラルにGを食う。前作から見ている人はもれなく思っただろう、「(アトランナは金魚で)メラは薔薇でお前はGかい!」。口から花びらこぼしながら薔薇食うのはかわいいかもしれないが、口から脚こぼしながらG食うのはホラーでしかない。でもだまされ方が素直でかわいい。
かけっこでお兄ちゃんに走り方教わったとたんめっちゃ早くなって置いていくのも笑える。早くなりすぎて画面から見切れて「YEAAAAAH!!!!!」って声だけ聞こえるの最高。あととてもうれしそうでかわいい。このシーンまわり、やたら声を張っているので、あーこの人(オームの中の人=パトリック・ウィルソン)ものすごく声が良いんだったと思い出した。さすがブロードウェイスター。前作のメイキング映像にあった(本編にはなかった)「Kill them all!」という絶叫の響きがすばらしくて何度も聞いた。「皆殺し」なんて何度も聞く内容じゃないが。
どつき回されるオーム
ついに現れたマンタにいきなり突っ込んでカウンター食らうのはお約束としても、気を付けの姿勢で吹っ飛ばされてお兄ちゃんのところに帰ってくるのはやりすぎで逆にたいへんよろしい(ブチ切れてあのアーサーに止められるとか、ほんとどれだけキャラ崩壊してるんだ)。続く戦闘で瀕死の重傷を負わされたかと思いきや、昆布巻きでまたもや微妙に笑いを取りにくるし。しかし「No one hits my brother but me.」っていろんな意味ですごい愛情表現。アーサー、オームは誰にも殴らせないんだね。でも自分は殴っていいんだね。
オーム、前作では傲岸不遜な王で、最後の闘いでアーサーに何度か地面に沈まされても肩で息してても「殺せ」ってノドさらしてても、どこか偉そうにしていた。それが今作では敵の攻撃でダメージ受けるたびにいちいち「ぼく、やられちゃったんですけど……」みたいなカオするのがほのかにおかしい。「これからやられます」みたいなタメもあるし。
笑顔が邪悪なオーム
アーサーとの再会直後、オームはいきなり説教を垂れはじめ、反発したアーサーに優しげな嘲笑を浴びせかける。「深淵の砦」到着時には意味ありげに悪人ヅラでニヤリ*としてみせる。前作での彼の「邪悪な笑い」(人に見せつけるための作り笑い)はほんっとーにバリエーションが豊富で、冷笑・嘲笑・酷薄な笑みの見本帳のようであったがここに新たなパターンが加わった。
だがその邪悪な笑みすら、お笑い担当に転身した今作ではギャグになる。マンタを追って失われた王国ネクラスに到着したアーサー一行が先を急ぐ中、橋の支柱を登るネレウスは巨大モンスターの触手に襲われ、少し上を行くオームに助けを求める。オームは状況を知って一瞬驚きの表情を浮かべた後、またもや悪人ヅラでニヤリ*としつつ、静かに支柱の陰に消える。
えっここで裏切るの?斧の件の意趣返し?(←ネレウスはオームを「信用できない」と公言し、出撃前に銃を与えず小さな斧を与えた)と思ったのも束の間、オームは支柱を回り込んで反対側から現れ、斧でモンスターの触手を叩き切りネレウスを救う。裏切るフラグかと思ったらまさかのフェイント。「(斧しかないから時間かかるけど)助けに行くよ!」という笑みだったとか、全然分からないよ……。
笑みといえば、悪魔の深奥で巨大バッタを振り切るのに成功したとき、ほっとしたオームがせっかく笑顔になったのに(誰にともなく自然と笑ったのは二部作でこの1回だけじゃないかな)、お兄ちゃんがまた悪い言葉使って茶化したのですぐ引っ込めちゃった。アーサー、オームの笑顔なんて激レアなのに引っ込めさせちゃもったいない。そしてこのときの会話は兄弟のラストシーンで再現されるのだが、それはまた別の話。
おまけ:解説員なオーム
このようにメインお笑い担当として大活躍のオームだが、その傍らアーサー陣営の優秀な解説員としても活動していた(マンタ陣営の解説員はもちろんシン博士)。アトランティスの(物理)セキュリティ&ネクラス滅亡の歴史、深淵の砦&ネクラスツアーガイド、悪魔の深奥でのオリカルクムや加熱炉の解説、古代文字の解読にトムの容態説明まで。退場直前には、二部作の総括に聞こえるスピーチもしていた。
普通の内容をたくさん話せてよかったね。お兄ちゃんと雑談もできたしね!とつい喜びたくなる。だって前作でのオームのセリフってほとんど全部が、「挑発」か「脅迫」か「殺人司令」だったから……。
最後に:Gバーガー食べるオーム
ネクラスでの最終戦にも決着が付き、かずかずの功績が認められたオームはアーサーの配慮で、死んだフリして自由の身になれることに。アーサーは地上の人々にアトランティスの存在を明かし、「ひとつの世界」への一歩を踏み出して物語は大団円を迎える。
オームのラストかつ、ある意味最大の見せ場はGバーガー。「しばらく身を隠してろ、でも遠くへは行くなよ」とアーサーに言われたオームは地上(でも海の近く)にやってきた。「地上の食べ物なんて」と文字通り食わず嫌いしていたチーズバーガーとビールを注文しおいしそうに頬張る姿に、アーサーがアトランティスの王として地上の人々に向けたスピーチ「地上と海で習慣は異なっても、偏見を乗り越えることでわれわれはより強くなり、より深く分かり合える」が重なり、なかなか感動的なシーンなのだが、この後オームはなんと、テーブルに出現したGをチーズバーガーに挟んでうれしそうに食べてしまうのだった。あーあ、お兄ちゃんがとんでもないこと教えたから……。
個人的に好きだったのは、スタッフさんが「extra greasy like you asked for」ってハンバーガー持ってくること。オーム、お兄ちゃんが「greasy cheeseburger」(「脂したたる」みたいな感じ?)って言ったのちゃんと覚えていたんだね。「ビールとチーズバーガーください。えーと、greasyなチーズバーガーを」って注文したのかな?と思ってニヤニヤしてしまった。
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