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脳は永遠に成長し続ける

今回は、医学博士で脳科学者の加藤俊徳先生の著書
「一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方」
という本の内容を紹介します。

多くの人は、人間の脳のピークが20歳頃だと思っているかも
しれませんが、それは誤解です。
年齢とともに体力が低下するのは事実ですが、大人になってからの脳は、
学生時代よりも確実に「いい状態」になっているので、大人になった
今こそが、勉強したり、何か新しいことを始めるのに最適な時期なのです。

筋トレをすれば何歳からでも筋力がアップするように、脳が成長する
働きかけをすれば、脳の機能は何歳からでも伸ばせるということが、
脳科学的にも明らかになっています。

今回の内容を通して、若い頃よりもいい状態になった脳を
フル回転させていきましょう。





つまらない筈の勉強が面白い・・・

さて皆さんは、次のように思ったことは無いでしょうか。

・大人になった今だからこそ勉強したい!
・今ならば、もっと真面目に学校の授業を聞くのに!
・子どもの頃に、何故もっと真面目に勉強しなかったんだろう!

このような気持ちを持っているとすると、それは大変素晴らしい事で、
脳の機能が年齢と共にきちんと成長し、成熟している証です。
断言しておきましょう、勉強したいと思っている人の脳には
「伸びしろ」しかありません。
これから、さらに脳機能を伸ばしていくためのアドバイスを
行っていきますので、自信を持ってどんどん伸ばしましょう。

少し考えてみてほしいのですが、学生時代には多くの人が
「勉強はつまらないもの」だと感じていたはずなのに、
なぜ大人になってから、つまらない筈の勉強に興味を持ち、
「やればよかった」とか、「今からやってみたい」と思うように
なるのでしょうか?

・・・・・・

それには、実は脳の仕組みが関係しています。
というのも、人間の脳は年を取ってからの方が、あらゆる物事に興味が
増していき、面白がれるという特徴があるからです。
年を取るにつれて私たちは様々な経験を積み重ねていったり、
知識を積み重ねていきますので、目の前の物事を面白がれるのです。



そして、「勉強することに興味を抱いている状態」というのが、
脳にとっては最高の状態です。
学生の頃も、好きな教科とか、興味がある教科というのは
勉強していても苦じゃなかったと思います。

面白がれるからこそ、脳全体が活性化して理解が深まり、
さらに面白くなっていくという好循環に入っていくためのカギが、
「学びたい」という気持ちなのです。
学生時代は、この最初のステップを乗り越えるのがとても大変で、
みんな勉強なんてつまらないし、無理矢理やらされているものだから、
興味を持つはずもありません。

しかし、大人になった皆さんは違います。
この最初のステップを軽々と乗り越えた先にいる人は、
勉強を始めるのに今ほど適したタイミングはありません。






脳のピークは20歳よりもだいぶ先だった

興味を持って英語の勉強を始めてみたり、資格の勉強を始めてみたものの、
やる気があったのは最初だけで、途中で挫けてしまったという人が
結構多いのは、勉強法が深く関わっているからです。

もしもあなたが、「年を取ったから物覚えが悪くなってしまった」などと
言い訳をして、学生時代と全く同じやり方で勉強をしているのであれば、
本当にもったいないことをしています。
大人には大人に合った最適な勉強法がありますので、学生時代と同じ
勉強法では、内容が入ってこないのも至極当然です。
それは、高校生くらいまでの人と、大人になってからの人では、
脳の働き方がガラリと変わっているからです。

そのため、大人になってから学生時代の勉強法をなぞるように行っても
時間が無駄になるばかりか、いくら勉強しても内容を理解するのが難しく、
やる気が削がれてしまったということになるのです。

あなたが20代であれば、昔と同じ勉強法でも上手くいくかもしれませんが、
30代以降では絶対にうまくいきません。
この20代と30代以降の差は何なのかというと、脳が大人になった状態と
言えるのが30歳頃だからです。
これは、30歳以降の脳が悪いという意味ではなく、学生の頃よりも
成熟した大人の脳の方が、判断力、決断力、記憶力など、
あらゆる面でレベルアップしていることに間違いありません。



脳というのは永遠に成長を続ける臓器ですから、いくつになっても
右肩上がりで成長してくれます。
脳が大人になる30歳を境にして、脳機能はどんどん成長していくため、
40歳、50歳、60歳を超えて、ようやく本来の力を
発揮できるようになります。

著者は言います、
「あらゆる点を考慮すると、脳のピークは30代~50代で、その中でも
45歳~55歳は脳の最盛期である」
この年齢こそが、何かを学ぶのには絶好の時期です。

脳は一生成長し続けるという話をすると、脳について詳しい方から
「脳細胞は20歳頃からだんだん減少していくのでは?」という指摘が
あるかもしれません。
確かに、20歳頃から脳細胞が減少していくのは事実ですが、脳細胞の減少が
脳の成長とは関係ないと分かっています。
そもそも、一生の中で脳細胞が最も多い時期を皆さんは知っていますか?

・・・・・・

実は、1歳前の乳児期なのです。

ですが、脳細胞が最も多い乳児期よりも、脳はむしろ言葉を喋れるように
なってからの方が成長します。
これは、脳細胞自体が成長していくのもそうですが、脳細胞同士をつなぐ
ネットワークが育っていくからで、脳細胞の数がどれだけたくさんあっても
細胞同士をつなぐネットワークが脆弱だと、脳を機能的に
働かせることができないのです。

つまり、脳の成長にはネットワークの発達が関係しているということです。
そして、このネットワークが30歳を超えてもどんどん発達していくので、
脳細胞の数は減っていてもネットワーク自体は様々な経験を
積み重ねることによって、どんどん広がっています。

これこそが脳の成長の仕組みであり、何歳になってからでも
脳が成長し続けるのは、このネットワークが広がっていくからなのです。
大人になって、子供の頃よりも広いネットワークを持った人が、
また学びたいという意欲を持っているとしたら、これはもう
最高の状態です。

学びたいという意欲は、脳にとって最高のご馳走ですから、
この機会を見逃さず、脳が喜んで働く勉強法を身につけましょう。
大人になって成熟した脳は、学生時代よりも遥かに効率よく、
たくさんのことを学んでいけるはずなのです。






大人の勉強法

加齢とともに記憶力が悪くなっていくのだから、やる気をもって
勉強しても、頭の中に入れるには時間が掛かると思っている人が
多いかもしれません。
認知症などを想像して、「記憶力は年々落ちていくものだ」とか、
学生時代がピークだと思い込んでいる人もいるでしょう。

しかし、これは大人の脳の使い方が出来ていないので、記憶力が下がったと
勘違いしているだけです。
脳科学的にはっきりしていることですが、記憶力は加齢によっては
下がりません。
ただし、記憶の仕方や方法というのが、学生時代と大人になってからとでは
大きく変わってしまうため、成熟した脳の使い方を知らない多くの人が、
記憶力が低下したと感じているだけなのです。

実は、学生時代と比べて確実に大人が劣っている脳の機能があります。
それが「丸暗記」です。

よく考えていただければ分かるのですが、丸暗記が得意なのは
小学生くらいまでです。
高校生や大学生の頃でも、かろうじて丸暗記は出来るかもしれませんが、
それでも昔に比べると苦手になっていた筈です。

そして、大人になった今は丸暗記という戦術は、
もはや使えないものと考えた方が良いでしょう。
成熟した今のあなたの脳には、丸暗記という方法は適しておらず、
他の暗記方法を使うと効率的に覚えることができます。
大人脳に向いている記憶の方法は、「意味記憶」です。
この意味記憶という言葉を理解するために、反対の意味である
無意味記憶という言葉の説明をさせてください。

子ども時代にとても勉強ができたということを脳科学的に翻訳すると、
「耳から聞いた情報を素直に記憶する力が強かった」
いうことになります。
これが無意味記憶で、この能力のおかげで子供は知らない言葉でも
記憶することができます。

例えば、子供の頃に読み聞かせの絵本で初めて聞く「親孝行」という
言葉を、音の響きだけで覚えます。
これは、親孝行という言葉の意味を理解したから覚えたのではなく、
子供の頃は音の響きだけで覚えることが出来るのです。

一方で、大人の脳はこのような記憶の仕方(丸暗記)は
非常に苦手とされています。
大人になると、思考系や理解系が発達しているので、
「え?それってどういう意味なんだろう」と、記憶するよりも前に
疑問が湧いてきて、意味を理解してから記憶するという
意味記憶が優勢となるのです。



ですから、何かを覚えたいときには「覚えよう」ではなく、
「意味を理解しよう」と頭を働かせる必要があります。
この脳の使い方に慣れると、丸暗記していた時よりも遥かに複雑なものを
長期間整理して記憶することが可能になります。

大人の脳は丸暗記には向いていませんから、この意味記憶による暗記方法を
活用できるように、自分の勉強法を変えていくことが大切です。
大人には大人なりの脳の使い方があって、それが出来れば学生時代よりも
記憶力を高めることができるのです。






成長に応じて脳の使い方を変える

多くの人が、学生の頃の方が記憶が出来たと感じているのは、
大人の脳の使い方を理解できていないからで、ひたすら丸暗記しようと
頑張っているからです。

脳のメカニズムに逆らって丸暗記しようと頑張っても、
上手くいかないのは当然で、大人になってから記憶力が落ちたと
勘違いするのはこのためです。

また、勉強をする際に、テキストに付箋を貼ったり、重要な言葉や文章に
蛍光ペンなどで線を引いたりしている人もいると思います。
しかし、これは大人脳には効果的ではありません。
学生時代は蛍光ペンで線を引くという作業だけでも、丸暗記に近いことが
出来ていたかもしれませんが、大人の場合は付箋を貼ったり蛍光ペンで
線を引いたりして得られるのは「勉強している気分」だけです。



正直、大人になってこの方法で記憶できるのは、記憶力に優れた
ほんのわずかの人だけですから、殆どの人はこの方法では
何も記憶することは出来ません。
大人になってからの暗記というのは、とにかく頭の中で考えて理解し、
それを記憶に刻み込むという過程が大切です。

大人になったら脳細胞の数は減少しますが、脳内のネットワークが
広がっていくので、脳機能のピークは年を取ってから
やってくると書きましたが、記憶に関しても脳内のネットワークを
広げるような感覚で行っていきましょう。

つまり、思考を司る脳の部位、理解を司る脳の部位、
記憶を司る脳の部位など、あらゆる脳の部位を総動員して
記憶しようとすることで脳のネットワークが広がって、より効率的に
記憶できるようになるばかりか、脳機能自体もパワーアップして
いくということです。

記憶に関しては、短期記憶と長期記憶についても
説明しておかなければなりません。
短期記憶というのは一時的な記憶のことで、すぐに忘れてしまう記憶です。
一方で長期記憶というのは、長い期間続く記憶のことです。
資格試験に挑む場合や、実生活で使う場合は長期記憶に覚えたいことを
入れておかなければ、忘れてしまって活用することができません。



ですから、効率よく長期記憶に保存することが重要なのですが、
脳が長期記憶に残そうとするのは、自分が生き延びる上で必要な危機や、
命に係わるような重要な情報だけなのです。
つまり、勉強で覚えたいと思っている英文法も、法律も、計算式も、
長期記憶として残らないということです。
そこに何とかして、勉強したことを長期記憶へと送り込みたいのですが、
そのために重要なのが喜怒哀楽の感情です。

記憶と感情は結びつくと分かっているので、例えば「テレビで見た」とか、
「ドライブに出掛けた」などの出来事は、楽しいとか嬉しいなどの
感情が伴っています。
こういったストーリー性のある記憶は、日常とは区別される
「エピソード記憶」と呼ばれています。

記憶の調整役である海馬の隣には、感情に関わる偏桃体という
部分があって、感情が大きく動く出来事があると偏桃体からの刺激が
海馬に届き、海馬はそれを重要な情報だと判断します。
つまり、エピソード記憶は無条件で長期記憶へと送られるのが
脳の仕組みとなっているのです。



ですから、勉強する際には感情を刺激してやるということが重要です。
特に、ワクワクしたポジティブな感情に海馬は騙されると分かって
いるので、勉強に感情が伴うだけで、記憶力はグンとアップします。

というのも、ワクワクした感情を確認すると、海馬からは
シータ波と呼ばれる4Hz~8Hz未満の脳波が出ます。
このシータ波が出ている時は海馬が活発に働いて、
長期記憶へと繋がるルートを解放してくれるのです。
好きな教科は簡単に記憶できるのに、嫌いな教科が
なかなか頭に入ってこないのは、このような理由からです。

子供の頃にやっていた勉強というのは、学校や親から「やれ!」と言われて
やらされていた嫌々の勉強でしたから、そんな勉強は楽しい筈が無いし、
楽しくならないと海馬も長期記憶として記憶してくれません。
結果として、勉強した内容も頭に入っていかないので、余計勉強が嫌いに
なってしまうという悪循環に陥ってしまうのです。

ですが、大人になって勉強したいと思えるようになった人の脳は、
勉強に最適化された準備万端の状態です。
あとは学生時代にやっていた丸暗記という方法を止めて、
意味記憶で勉強を始めるだけです。

これだけで、勉強した記憶は脳に定着していくことでしょう。






やりたくない勉強をする時は・・・

「会社から命令されて資格を受けなきゃいけない」とか、
「あまり興味はないけれど、資格を取らなきゃいけない」など、
嫌々勉強しなければいけない場面があるかもしれません。

嫌々勉強に取り組んでいると、ストレスホルモンが分泌されるので、
海馬が委縮して記憶力の低下を招き、余計にやる気をなくすということに
なってしまいます。
そのような時には、嫌な勉強を何とかして(興味を持って)好きに
なるというのが一番ですが、なかなかそれが難しいというのも事実です。
そういった時のために、脳をだまして楽しいと錯覚させる方法があります。

先ほど書きましたが、ワクワクとしたポジティブな感情で勉強すると
海馬が騙されるのですが、これは勉強する内容とは無関係です。
どういうことかと言うと、仮に勉強の内容が嫌いであったとしても、
ワクワクした環境の中で勉強するなどして、気持ちがワクワクしていれば
長期記憶のルートが開かれるということです。

学生時代に好きじゃなかった教科も、教えてくれる先生が好きだったから
楽しく勉強出来ていたという経験がある人もいると思います。
教えてくれる先生が好きだったら、たとえ苦手だと思っていた教科でも
心がワクワクしているお蔭で、長期記憶にスルスル入っていくのです。

このメカニズムを活用して勉強してみましょう。
例えば、喫茶店に行って大好きなものを飲みながら(食べながら)
勉強したり、海や山などの好きな場所まで行って勉強するようにしたり、
とにかく自分がワクワクする環境で勉強すれば、脳が自然と最適化されて
長期記憶のルートが開かれます。

海馬からシータ波が出ている時は、通常時と比べて学習速度が
2倍~4倍になるという研究結果もありますので、ワクワク感を
操ることが出来れば、あなたの勉強効率は必ずアップする筈です。






毎日少しでも、利き手じゃない手を使う

脳機能をパワーアップさせるためには、普段加わらない刺激を
脳に与えてみてください。
同じ刺激ばかり加えていても、それに慣れてしまうと刺激だと
感じにくくなってしまいます。

そこでお勧めなのは、利き手とは逆の手を使うということです。
右利きの人は、右手に指令を出す左脳が活発になっていて、
左利きの人はその反対で、右脳が活発に働きます。

また、利き手ばかりを使っていると、指令を出さない方の脳は
どんどん刺激が無くなってしまうので、脳が成長できなくなって
しまいます。
そうすると、機能が衰えてしまって脳の老化が始まるかもしれません。

利き手と逆の手を使えば、両方の脳に刺激を与えることに加えて、
右脳と左脳の交流も活発になるというメリットがあります。
脳は、様々な部位を同時に使ってあげることによって活性化するので、
利き手じゃない方を使って、いつもとは違う刺激を与えてみましょう。

例えば、毎日の歯磨きを利き手ではない方で行ってみてください。
最初は違和感を覚えますが、その違和感こそが脳への刺激となります。
また、利き手とは逆の手で箸を持ってみたり、文字を書いたりすることで、
より効果的に脳に刺激を与えることも出来ます。






仕事が終わったら別の行動をする

仕事中に使う脳の部位は、基本的に決まっています。
仕事中は、同じ脳の部位を使っているからこそ、仕事が終わった直後は
脳が疲れているような感覚がある訳です。

しかし、脳全体が疲れている訳ではなく、実際には長時間使い続けた
脳の部分しか疲れていません。
そこで、仕事が終わった直後に、普段は使っていない脳の部位を
使うような行動をしてみましょう。
仕事が終わったら脳を休めて好きなことをしたいという人が多いのかも
しれませんが、脳の休憩という観点からは、それでは不十分です。

日中ほとんど使うことがなかった脳の部位を刺激してあげることで、
脳はリフレッシュすることが出来るのです。
「疲れているから運動なんて無理」ではなく、
「疲れているからこそ運動して脳の疲れを取る」というのが正解です。

しかし、仕事の延長線上にあるような運動を行っていたのでは、
さらに疲れが溜まってしまうだけなので、やり方を変えてください。
例えば、仕事がデスクワークの人は、仕事が終わったら1駅分でも
歩いて帰ることを心掛けたり、立ち仕事が多い人であれば、
仕事が終わった後は図書館に寄って読書をしたり、
勉強するのも良いでしょう。

このように、脳を働かせるといっても様々な脳の使い方があるので、
仕事で使っている脳とは別の場所を働かせることによって、
あなたの脳はリフレッシュします。



終わり

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