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片野秀樹著(2024)『休養学』東洋経済新報社

疲れたサラリーマンには大切な本

書店でたまたま見つけて、手に取ってみるとほぼ見開き1テーマで書かれているようだったので、読みやすいと思って購入してみた。

個人的には、高校卒業してから勤務時間が長い職場にも関わらず大学、大学院を働きながら学んでいったので、ほぼ社会人になってから四当五落状態で、ここ20年程度は3~4時間睡眠を続けてきたことが、逆に「休む」ということに違和感を感じたり、本書でも語られているけれどサボっているように思ったりして、とにかくフルスロットルになることを良いことと思っていたため、真剣に休養を考えてこなかった。

その反動なのかも知れないけれど、肺腺癌になり右肺上葉切除、その後の抗がん剤治療など、健康を害するのを通り越して、生命の危機のレベルに至ってしまったことを悔いてもいる。未だに睡眠時間が少なく、何かに熱中していないと気分がすぐれないのだけど、この辺で真剣に休むことを考えないと、このまま残り少ない生きている時間も忙しなく働いている感じがした時に書店で出会った。

本書では最初に日本ではここ数年約8割の人が疲労を抱えて生活してい問題点を上げている。多くの会社員は朝の満員電車に乗るだけでもかなりの体力を消耗するので、仕事による精神的な疲れも重なり、週末には何もしたくない感じの人も多いことだろう。著者はそれら慢性的に疲れを持つ人達の経済損失が1.2兆円にのぼることを指摘している。さらに若い人ほど日中の眠気が多いらしい。昨今は単に身体を休めたり眠ったりするだけでは疲れを上手くとることはできない。

その疲労感も、例えばコーヒーやエナジードリンクなどで一時的にマスキングできてしまうので、身体が欲する眠気などの信号を遮断し、これらが続くと、場合によっては燃え尽き症候群に陥ることもあるらしい。その疲労のもとはストレスであり、物理的、科学的、心理的、生物学的、社会的の5つに分類される。やがてストレスがかかると免疫が働かなくなるとのこと。

著者の解説によると、日本人の多くは休養しても50%しか充電できていない中で活動しているイメージであり、対策としては疲労の反義語である活力を得て、フル充電まで持っていくことが肝要という。その活力には軽い負荷が良いそうで、自分が決めたもの、仕事とは関係ないもの、それに挑戦することで自分の成長を感じ取れるもの、楽しむ余裕があるものの4つが満たされる必要があるとのこと。

そして休養にも、生理的、心理的、社会的の3つに分類でき、さらにこれらを7つのタイプに分類して、本書では各々に解説が加えられている。

後半は、休養の最も重要な要素である睡眠についてページが割かれており、全体を通じて休養に関する対応方法が理解できる仕組みになっている。個人的にはスケジュールを月曜から眺めるのではなく、土曜から眺め、平日の負荷の量によって先に土日に休養をしっかり取るという方法を解説してあり、ちょっとしたことでも試してみることはできそうな感覚を持った。

個人的には精神的な疲れがたまっているのと、コーヒーのヘビードランカーでもあるので、少しずつでも疲労のマスキング効果を少なくするよう努力しようと本書を読んで思った次第である。ちょうどよい時期に本書にめぐりあったと感じた。

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