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原美弥子著(2011)『歌集 走れジャッキー』短歌研究社

人生を感じさせてくれる歌集

この歌集が手元にあるのも、実は不思議な御縁でもある。本書は2013年にアマゾンで中古本として購入したもので、それ以来、積読本として読まれずに積み重ねられていた…

そして何気なく積読本を整理していたら、目に入ることとなり、深夜に読み始めた次第…

実は、この著者と同姓同名の人を2人知っていて、1人は前々職での知り合い、もうひとりはFacebook友達である。ただ、この歌集を書かれた人は、生まれも育ちも東京だけど、その後、山形に移住されていたそうなので、これら2人とは全く関係ない同姓同名の人ということである。

題名にもある「ジャッキー」とは、ゴールデンレトリバーの犬のことで、息子さん二人が一人前として巣立っていった後を、まるでもう一人の子どものように無邪気に庭を駆け回る犬が、その寂しさを埋めていたであろうことが伝わってくる。

全てが短歌として綴られているが、その中から息子の成長や旦那さんへの愛情、姑さんとの良好な関係、そしてジャッキーとの戯れがイメージできる作品集としての短歌集となっている。

特に本書では、姑さんの介護や看取り、そしてジャッキーの延命措置と他界など、初老の読み手としては、支えを失う哀しい寂しさの時間をも短歌として表現されている…

これらの短歌をひとつひとつ読み進めていると、それはまるで小説を読んでいるかのように、その歌の情景を想像してしまう。その時々の細かな感情や想いが短歌の中に上手く表現されている、その妙を読者は感じ取れることだろう。

ページの角を折ってしまった…

実は、本書で素晴らしい短歌が掲載されているページの角を折ってしまったのだけど、その角を折ったページもかなりの数に上った。この読後メモに関しても掲載されている短歌を複数取り扱ってみたいけれど、本書は最初から一つ一つ読み進めてみた方が、歌人の心情を良くわかると思うので、あえてその素晴らしき歌たちを掲載することを控えた。

短歌集で、読者の心に響く不思議な読後感を得ることが出来た。
ジャッキーは虹の橋を渡っていったけれど、まだまだこの短歌集の中では、庭を勢いよく走り回っている光景をイメージすることができる…

良い作品を残された、その志に感謝。

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