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恋と寒空③

恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』
【第二十七話】

(ユリ)

偽りの時間。
それはいつもよりゆっくりと長く目の前を通過していく。

カンナ先輩が久しぶりにウクレレ教室に顔を出し、一緒にカフェに来た。「久しぶり、ヒロ」と先輩が挨拶をする。そういえばヒロって呼んでいたな。
たったそれだけ。
だけど私の心にヒヤリと氷柱の先が当たる。


私もそうやって呼べるようになれたらいいのに。


いつも一人でいる席に二人で座っていると、やっぱり少し違和感があった。ここはもう「カンナ先輩と来る場所」ではなく、「私の場所」になっていたらしい。

席に着くとすぐ、先輩はカフェオレを二人分頼んだ。
いつもとは違うオーダー。君はチラッとこちらを向き、私は頷いた。

いつもより一歩遠い距離感。
カンナ先輩の方が君に近いように感じて、胸の中で絡まる糸が解けない。そんな中、ふと思う。


先輩はいつから君のことを知っているのだろう。


そんな疑問が浮かんでもぶつけられないまま
ただ流されるままに
私は先輩の彼氏自慢話を聞いていた。

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