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恋と寒空①

恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』
【第二十五話】

(ユリ)

目を覚ますと、そこにあるのはただの日常。
いつもと変わらない朝が私を待っていた。

アラームに気づかず、慌てて飛び起きる。
素早く朝食を済ませて、制服に着替え、髪を整えて。
自転車に飛び乗り、駅に向かう。

セーフ。

ギリギリ間に合い、電車に駆け込んで一息。
息が整ったら、単語帳を開いて今日の小テストのために暗記。気づいたら学校の最寄り駅に着いていて、周りは同じ制服を着た生徒たちで溢れていた。集団に紛れて、高校へ向かう。自分の席についてまた一息。

ただ、今日はその繰り返しだった毎日と一つ違う。
チラチラと頭を掠め続けている君からの返信。
昨晩寝ぼけ眼でスマホ画面を覗き、一瞬で飛び跳ねた。でもシンプルなありがとうのメッセージは、果たしてどんな意味を持つのだろう。聞きたかったけれど、踏み込みすぎてしまうことを恐れて、できなかった。

チャット欄と睨めっこをしても答えなんて出ない。
でも、一体誰に相談したら良いのだろうか。
私にはネットしかないけど、期待できない。

「おはよ~☆」
今日も明るいランが私の元へと駆け寄ってくる。
画面を素早く閉じ、スマホをポッケにしまった。

私だけの特別な気持ちを真っ黒い布で覆い隠して
今日も私が私を操るパペット劇場の幕を開ける。


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