メルカリのAIイラストグッズの不快感
■はじめに
今話題のメルカリ。
利用していて「なぜ?」と思うことがある。
それはAIイラストを使ったキャラクターグッズの販売である。
あまりにも多い出品数にノイズだらけになり、推しのグッズを調べたとしても、怪しげなイラストに埋め尽くされる。
なぜ「転売」よりもこの「AIイラストグッズ」に対して、私が不快感を感じるか考えてみる。
■この不快感は何か?
まず、「転売」であったとしても「AIイラストグッズ」であったとしても、「一定の消費者ニーズを満たしている」事は紛れもない事実である。しかし、同時に「本来の権利者が得るべき利益を得ている事」も事実だと言える。そしてどちらも「販売する行為自体」には権利者は不快感を感じるだろう。
この両者の決定的な違いは「商品そのものに対して権利者が不快感を感じるかどうか」ではないだろうか。「転売」であった場合、正規品であるが故に権利者が商品に対して不快感を感じる事は考えずらい。しかし、「AIイラストグッズ」は権利者が不快に感じる可能性が十分にある。
そして、それを見たときに販売者に対して「権利者が不快に思おうが利益になれば良い」事が透けて見えてしまい私が不快に感じているのだろう。
有体に言えばリスペクトゼロの行為である。
■「AIイラストグッズ」の権利関係の確認
この「AIイラストグッズ」行為だが、権利関係はどうなのだろうか。
確認をしてみる。
「名入れタオル研究所」さんがグッズ制作の際の注意点をまとめていたので引用する。
著作権については何であっても有りうる話である為、肖像権及び商標権について確認してみる。
「AIイラストグッズ」販売だが、これを見る限り少なくとも何かしらの権利侵害には該当しそうである。
■二次創作との違いは?
ただここで一つの疑問が沸いた。この「AIイラストグッズ」販売と二次創作作品との違いはなんだろうか。
見かけた製品が多かったホロライブ、にじさんじ(ANYCOLOR)、ぶいすぽっ!、原神について確認してみる。
〇ホロライブ
〇にじさんじ(ANYCOLOR)
〇ぶいすぽっ!
〇原神
いくつか見てみたが全て「収益化を目的とはしていけない」「ブランド・コンテンツイメージを損なってはいけない」「公序良俗に反してはいけない」「公式と誤認させてはいけない」「第三者の権利を害してはいけない」内容の様に見える。
二次創作物との大きな違いはこの中の「収益化を目的とはしていけない」「ブランド・コンテンツイメージを損なってはいけない」「公式と誤認させてはいけない」に該当しそうである。
もちろん、二次創作の中には「ブランド・コンテンツイメージを損なってはいけない」「公式と誤認させてはいけない」は微妙なラインの物も存在するだろう。
しかしながら、圧倒的に「収益化を目的とはしていけない」点において差異があるのではないだろうか。
と言うかそれしか目的としていないのだろう。
■メルカリの規約
では、メルカリ上記載はあるのか。
確認してみる。出品不可のに知的財産権の欄があり、そこに参考程度の記載があった。
一応は「侵害例:キャラクターを模倣してハンドメイド作品として販売すること」「侵害例:ロゴマークを許諾なく使用した商品を販売すること」等が販売禁止の対象にはなる様である。
■販売されている商品例
調べてみると「プレイマット」「バスタオル」「マウスパッド」「抱き枕カバー」「毛布」「タペストリー」に多くある様で、「PRONIKE」と書かれている事も多いようだ。
※18禁になるような製品は「シークレット」とぼかしていた。
しかしながら、信じられないくらいこう言った製品を販売しているアカウントが多い。「これはもはやレッドオーシャンでは?」と感じたが、一点当たりの利益率が高いのかもしれない。数点でも売れれば儲けもの、ぐらいなのだろう。
さらにメルカリだけではなく、Amazonやヤフオクでも同様の製品が見られた。
ある出品者を見てみると出品されている商品の殆どがプレイマットであり、何かしらのキャラクターを利用していた。これらの商品を900件近く販売している事になる。
〇Aさん
ちなみに、全て新品未使用で家に置けないから販売しているらしい。
プレイマットをこれだけおけるのだから、さぞかし長テーブルの家なのだろう。サイズ 600mm × 300mmらしいので、900個で540mの長さの机があるのかもしれない。
〇Bさん
さらに見ていくとBさんと全く同じ画像を使用しているCさんのアカウントも発見した。
〇Cさん
※ちなみに白画像で隠していないものは紫咲シオンさんの配信画面で利用されているイラストの為、公式グッズで無いなら明らかな権利侵害ですね。
〇Dさん
コレクションの整理なのに、「どこの製造元かもサークルかもわからない」商品を1000点以上保有しているの最高にクールでクレバーすね。
※以下はあくまでもメルカリの機能を紹介したリンクになります。
こんな出店もあるんだ程度の参考までに記載します。
本記事とは「「全く」」関係ありません。
■制作の考察
仮にこれらが利益目的で販売されているとして、一体どの様に制作されているのだろうか。
通常の企業であれば、先に述べた「名入れタオル研究所」の様に外注依頼が来ても「不法である」事を検知して製造しないのではないだろうか。
今まで上げた「プレイマット」にある特徴点を抽出してみよう。
・サイズ:60cm × 35cm×0.3cm or 60cm×30cm×0.3cm
・縁が縫製
・高精細ラバー製マットで水洗い可能
・裏面は黒
・平均販売価格は5,000円程度
概ねこれらが共通したが、これだけではどこに依頼するのかわからない。
制作する側からしたら「最も安い定型サイズ」を選択するはずである。
よってこのサイズから見てみるとどうやら厚さ2cmのプレイマットが多く、3cmを定型サイズとしている所は少なかった。
又、中国の安い企業に外注しているのかとも思ったが、むしろ1.5cm等の厚さサイズが多かった。
国内でもいくつか当該サイズの印刷を請け負っている会社を見つける事が出来た。
しかし、仮に印刷会社に委託されていたとしても責められるべきではないだろう。印刷会社側からすれば、それが公式なのか同人作品なのかご当地キャラなのか「AIイラストグッズ販売」なのか知る術はないし、知る必要もない。
ちなみに、最低発注ロット20個の場合の見積もりは以下になる。
1個あたりに換算すると2,200円程度だ。
これではあまり利益にならない。
100個だと1,300円程度になるが、これに送料も含まれることを考えると利益額は一つ当たり1,000円~1,500円程度になるのではないだろうか。
つまるところ、利益率で言っても30%がいいところではないだろうか。
■使用イラスト
製品の一つである「堀北鈴音」が製品画像として大きく、調査しやすいためこれで調べてみる。
いくつかサイトを見ているとStable Diffusionで生成された画像であり、
Patoronで収益化されている画像である事が分かった。
※【注意】以下リンクは18禁画像だらけです。
他製品の画像についても調べたが、概要するイラストを探し当てる事が出来なかった。しかし調べる過程でキャラクターを使ったBOOTHやFANZAでのAIイラスト販売も多く見られた。また、AIイラスト生成の投稿サイトもいくつか見られた。
正直ここまでカオスだと、「AIイラスト生成→AI生成されたイラストを購入→サイトに投稿→転載→製品利用」等されたらもはや追う事が難しくなってくる。
あまりにも「収益目的」で公開されているAIイラストが多すぎて辟易としてしまった。
例えば上記製品のイラストを調べてみると、エフェムコリアと言う韓国のインターネットコミュニティサイトにも2024.06.29に転載?されていた。
https://www.fmkorea.com/7195125199
この様に転載された画像を利用されてしまっては、最早何が元の生成画像であるのか、どこから製品の画像として利用されたのかわからなくなってくる。
■終わりに
最早、AIイラストで画像を生成される事自体を防ぐ事は不可能である。
しかし、ラバーマット等の個人で大量に買わないような商品を権利侵害してしまうと、それはもう権利保有者が得るべきだった利益を搾取している事に他ならないのではないだろうか。
メルカリ側には難しいと思うが是非対策してほしい。
「どこでどの会社から買ったかわからないキャラクターグッズ」かつ「全く同じサイズ」の「人生で数点しか買わないような商品」を100点も1000点も販売する事は個人的な処分であるはずがない。
権利侵害を助長する可能性がある事を考慮して、機能設計してほしいものだ。
少なくとも「製品の出所が不明」で「同一規格の商品」で「権利侵害になり得るキャラクター」を「大量に」出品しているアカウントに対しては、一度に出品できる製品数を制限するとか、同一キャラの販売数を制限するとか、出品あたりの合計の販売価格を制限するとかできるのではないだろうか。
※それでも複数アカウント作られてしまうとは思うが。
このままでは「普通に使いたい」ユーザーが離れてしまう。