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宇宙のお試し~共に生きてく~

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ある日の夢に出てきた少年と私の物語(フィクションです)
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宇宙のお試し

宇宙のお試し

わたしは物書きになりたかった。

一冊の本を開くと、そこは至上の地。

中から飛び出す立体絵本のように

読む人を別次元へ運んでいけるような

そんなビックリな文章が書きたかった…

 まだ草木が土の中で眠っている立春の寒い朝。

突然、目の前に雷のごとく閃光が走り

次の瞬間、天からある言葉がゆっくりと降ってきた。

「お前にこの子が救えるか?」

一瞬たじろいだが、もう一度冷静に耳をすまし

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瞳を読む少年

瞳を読む少年

私はある小学校の学童保育の支援員をしている。

自らも子育てをしてきた経験から

小学校という大切な子供さんの今を

少しでも支援できたらと思いこの仕事に就いた。

今年度も忙しくなるぞと覚悟して

その計り知れない子供たちのパワーに負けないように

わざと口角を上げて「にっ」と力を込めた。

私なりの決意表明!

そこへ転校生の子供さんがやってきた。

細く長いスラッとした脚。

長い前髪を何度

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球体絵本

球体絵本

桜の時が終わり、花が散った木をただ茫然と見ていた。

あの散った花びらは風と共にどこに飛んでいったのかな?

桜の花びらってどうしてこうも人を切なくさせるの…

窓の外に目をやりながら、台ふきを洗っていたとき

後ろで声がして、ふと我に返って慌てて振り向いた。

「先生。これ見て!!」

入学したての一年生の女の子がノートを開いて

こちらにどや顔でにっこりと笑って言った。

そこには夏のヒマワリ

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太陽にも青はある

太陽にも青はある

『先生はどうしていつもサンサン太陽みたいなの?』

描きかけの絵に目をやりながら、彼は私に尋ねた。

星矢君のアトリエは球体の秘密基地の中にある。

そこは地上の楽園のような居心地の良いオアシスだった。

キラキラな空間に連れてこられた私はまるで

魔法にかけられたように彼に話し始めた・・・

「お前はいつも上から目線で…勝手に決めんな!」

一学年下の主人とは大学のサークルで出会った。

結婚を

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音のない門

音のない門

「せいやん! そろそろ行こうか」

『たくみくん、ちょっと待って…』

僕は描きかけの絵を急いでカバンにしまい込み

荷物のなくなった殺風景な部屋をゆっくりと見渡して

心の中で“さよなら”を言ってから扉を閉めた。

今日、僕は生まれて初めて“引っ越し”という大移動を経験する。

たくみ叔父さんの転勤先の海の見える田舎の町へ。

僕の父は、トンネルを作る仕事をしていて、

僕が生まれてすぐに、作業

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星を産んだ蝶〔自由詩〕

星を産んだ蝶〔自由詩〕

あの日
あなたは
小さく細い指で
握りしめたその手
で私の頬に触れて大
きな欠伸をしたんです

その濡れた碧の瞳の中に
母になった私の顔が映って
可愛くて愛らしくてたまらず
くちびる寄せてその桃色の頬に
そっとそっとキスをした夏の夕べ

神様はどうしてこんなにも優しくて
影の宿るわたしなんかにこんな天使を
この身に委ねて与えて下さったのでしょ

神様はどうしてこんなにも無常で冷たくて
この天使を闇

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門を開く音

門を開く音

ଘ♡ଓ*:゚+。.໒꒱°*。⋈。♡:* :゚+。ଘ☆:゚+。⋈。

トキハアキ

ワタシハヒトリ タビニデル

コレスナワチ

トキ・キタリ☆彡

ଘ♡ଓ*:゚+。.໒꒱°*。⋈。♡:* :゚+。ଘ☆:゚+。⋈。

私は彼と巡り合い、そして

自分の中にいつの間にか

彼が存在して(住んでいる)ことに気付いた

でもそれは大きな間違いであった

いや、思い違いか…やっぱりそうか。

ずっとずっと、

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幸せの音

幸せの音

遠く・・・

遠くから微かに・・・

聞こえる風が葉を揺らす

閉園を知らせる蛍の光

閑散とした庭に独り

閃光の合図に我に返る

情熱と冷静の閒の瞬き

闘わずしてその門を開く・・・

☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡

真っ黒な雲が空を覆い隠し

視界は遮られ暗黒に包まれる

これは夢か、はたまた現実か

どうすればこの闇を抜けられる?

私に何ができる?

心の耳を研ぎ澄ましてそっと目を閉じる…

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