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ビクトル・エリセの映画たち

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#復活

天使のようなあなたへ―ビクトル・エリセ『瞳をとじて』

天使のようなあなたへ―ビクトル・エリセ『瞳をとじて』

               

Ⅰ テオ・アンゲロプロスに倣いて 親愛なるエリセ
 待ちに待ったあなたの新作、拝見しました。あなたがこんなにもテオ・アンゲロプロスを愛しておられたなんて!

 撮影中に俳優が失踪し、後にテレビ番組の企画で追跡するという筋書きは、アンゲロプロスの『こうのとり、たちずさんで』(1991)を想起させます。『こうのとり』では、政治家が突然、失踪し、後にテレビの企画で彼を追

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10分間の奇跡―ビクトル・エリセ『ライフライン』

10分間の奇跡―ビクトル・エリセ『ライフライン』


はじめに わずか10分の映画で、奇跡を描いている、といわれたら、みなさんはどう思われるだろうか? そんなの無理でしょ、と思う方が大半だろう。
 しかし、それを実現してしまったのが、ビクトル・エリセの『ライフライン』である。オムニバス映画『10ミニッツ・オールダー』(2002)に収められており、1940年6月30日生まれのエリセの自伝的要素が強い、白黒映画となっている。

※ニコニコ動画で観られま

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死せる工場、復活す―ビクトル・エリセ『割れたガラス』

死せる工場、復活す―ビクトル・エリセ『割れたガラス』


Ⅰ 奇跡を描き続けて 親愛なるエリセ

あなたのドキュメンタリー『割れたガラス』(2012年のオムニバス映画『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』所収)を初めて観たときは、そのよさがよくわかりませんでした。

※予告編の、52秒〜1分19秒が『割れたガラス』の紹介です。53〜56秒が廃墟となり、窓ガラスが割れた工場のショットです。工員たちの写真は1分5〜1分18秒をご覧く

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