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ミヒャエル・ハネケ特集

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ミヒャエル・ハネケの作品についての記事をまとめてあります。彼の映画の意図とそれについての私の批評、また社会に対してどのような意味を持つのかなどについての考察を綴りました。
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隠された記憶 / ミヒャエル・ハネケ ー ミヒャエル・ハネケについて

隠された記憶 / ミヒャエル・ハネケ ー ミヒャエル・ハネケについて

ジュリエット・ビノシュは「これが夫婦の信頼なの⁉」と夫(ダニエル・オートゥール)に叫ぶ。彼女は、自身があるはずだと確信するものの欠落に打ちのめされる。夫はその彼女に「頭を冷やしたらどうだ」と言い放つ。私はこの彼女の演技に感動した。ハネケの映画の中に、あの無残な、涙が全く湧いてこない人間を撮るハネケの映画の中に、人間に対する確信をみたように感じた。

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私はこれでハネケの作品は4本観たことに

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71フラグメンツ / ミヒャエル・ハネケ

71フラグメンツ / ミヒャエル・ハネケ

血はゆっくりと流れる。時はゆっくりと流れる。ほとんど止まっているかのように。死にかかった生き物の呼吸のように。

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主人公が卓球の練習をするシーンがある。背景の壁は、灰色だ。彼はただひたすらにラケットを振る。機械によって一定の間隔で飛んで来る球をひたすら打ち返す。「モダン・タイムズ」でチャップリンは軽やかに面白可笑しくこれを皮肉ったが、彼の表情は変わらない。そもそも卓球は仕事ではなく、学業

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