小窓

通り雨のような情動を

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通り雨のような情動を

最近の記事

神様を見たことがありますか

高2になって、電車にも荒い運転と安全な運転があることに気づいた。毎朝同じ時間だけ電車に揺られて、工場ロボットのように足を進める。本当に行きたかった場所は海馬の蜃気楼に溶けていった。規則正しく動く社会で軋む歯車の音が聞こえた。 さて、人生はつまらないという。しかし、つまらないことは人生を悲観する理由にはならないのである。つまらないとは案外素晴らしい。ぼくらはどこにでもあるような道を歩く。しかしずっと平坦というわけにはいかないだろう。地球は誰にとっても丸く、山も海も丘も谷も、誰

    • 不純

      小学校高学年ごろの話。あの頃、家はとても居心地の悪い場所だった。 父と母はよくぼくら(ぼくには1人弟がいる)の前で喧嘩をした。聞こえてくる怒鳴り声には時々自分の名前が混じっていた。それは今でも再生可能なカセットテープで、グルグルと何度も頭の中で再生された。嫌な記憶。 2人は仲が悪いんだと思っていたし、いつか離婚するのかな、なんてこともぼんやりと思っていた。今でも思ってる。ぼくたちが家から出て行く年になったらもう2人は一緒にいる必要がないのかもしれないなって。当時、名字が変わっ

      • 月の君

        「今朝、月が出ていたからまだ夜だと思ったの」 そう言ってはにかむ彼女が登校してきたのは5限が始まる直前だった。 あの大人にも同じように言ったのか「先生に呼ばれたからちょっと待ってて!」と言って、足早に教員室に向かった彼女はもう30分も帰ってこない。 さて、どうしたものか。部活は疾うに始まっているだろうし彼女が戻ってくる気配もない。先に行くことにしようと思い、ペンを持つ。"先に部室に行っています"。そう書き置いて教室を出た。スルスルと見慣れた廊下を進んでいく。歩くのが速いらし

        • 昼下がりの雨上がり

          概念としての雨上がり。草花や鉄柵から滴る雫、アスファルトの水溜まり、雲間から覗く薄光は木漏れ日みたいなおひさま。頭の中はこんなに綺麗なのに現実はきったないね。濡れた土の匂いはあの頃を思い出す。ほら顔を上げて。 最近いろんなことを覚えていられない。昨日何をしたとか、何を食べたとか。あの頃本当に欲しかったものとか。がんばらなきゃ思い出せない。乾いた砂のように両手からこぼれ落ちていく。怖くてたまらない。自分から掬おうとしなくたってそういうものはずっと自然に僕の一部で、何か特別なこ

        神様を見たことがありますか

          木端微塵

          突風が吹いた。櫛でとかしたこの長い髪。玄関のドアを開けた瞬間から嫌な予感はしていたんだ。30分前の後悔。あぁ考えるだけ無駄。音楽がファッションならそれだっていいし、恋ってそんなに尊いもの?どうしたってもう生きている! 京都へ向かう。 愛想を纏う。第1ボタンまでちゃんと閉めるよ。外は息苦しいくらいがちょうどいい。肺に少しの僕を残して揺られる満員の電車、座れやしない。ふざけんな。 ただ今日は空が晴れて、許してやらないこともない。と思う 本の最初のページってなんだか躊躇わない?

          木端微塵

          覚えていたいよ

          涙は急に溢れるからまだまだ修行が足りないな こんな日は子どもみたいに泣き喚いて、花畑の真ん中で晴れきった空に慰められたかった 最近は春の風が心地いい 17回目の春だ 桜は散るから綺麗だ いつか春から追い出される日が来ても喜んでそれを受け入れるよ 神様の助けがなくても、僕は生きていける。 世界中で雨が降った日があれば戦争なんて無くなっていたのかな 雨のベールが地球を包んでどこが青くってどこが緑だったか 誰も分からなくなってしまう そんな日が1日でもあったなら僕ら手を取り合

          覚えていたいよ

          顔を知らないあなたと話したい

          そろそろ人と会うのが疲れてきたこの頃。早く春が来ればいい。毎日同じ顔みてると飽きてくるなあ。学校が休みなだけ救いなのに相も変わらず現状に満足しない。夜空が降ってでもくれば少しは楽しいかも。夜空の水溜まりを歩いてみたい。 ぼくらにずっとなんて有り得ないんだけど、人間の苦悩はあまり変わっていなかったりする。明治くらいから人は自分の幸せについて考えて、その過程に生まれる不条理や理不尽な不幸にもみくちゃにされながら苦しい苦しいって死んでいく。厭世的思考は果たして幸せになれるのか。も

          顔を知らないあなたと話したい

          夏よ来い

          今日、テストが終わった。たった5日でも地獄であることに変わりはなかった。でも案外、友人としんどいしんどいって言いながら眠らない夜を過ごすのは楽しかったりする。これもあと何回できることなんだろうと考えると少し寂しい。 最近は寒い。なんなら1月とかより寒い気がする、何故。そろそろ夏が恋しいな。キラキラした記憶の中の夏。ぼくは馬鹿だから、夏の暑さを忘れてしまう。きっと夏になっても同じように冬に思いを寄せる。元カノに連絡をするのってこんな気持ち? ひとつ分かるのは、きっとぼくは夏の

          夏よ来い

          人はひとりじゃ生きられないんだって

          うーん、今日は何を書こうかなと思って。日々考えること、感じることを書き留めているメモを見ていた。メモを開いてすぐ、過去の自分がおもしろい発見をしていたので紹介します。 自分の本当の顔って見たことがない!ていうか一生見れない!! これは当時結構な発見だ!とめちゃ上がりました。何とか細胞を見つけたあの研究者も、超長い横文字昆虫を発見したどこかの昆虫学者も、こんな気持ちだったのかなって少し分かった気にもなりました。ごめんなさい! どういうことかと言うと、簡単であたりまえな話で、

          人はひとりじゃ生きられないんだって

          夜明けの海を想像してみて。

          一日が始まる瞬間、あまり好きではないです。でも、夜明けという言葉は綺麗です。 そして、海。海は美しいけれど、大きすぎて同時に怖くもありますね。畏れという言葉がしっくりきます。 では、夜明けの海。 なんでなのか分からないけど、夜明けの海の言葉のイメージは晩夏、夏の終わりです。薄明かりの中、淡い夢みたいなグラデーションの空。寒色の空気が昇る朝日に照らされながらだんだん暖かい雰囲気を帯びていく。海は未だ寝静まっているようで、風も凪いで、静かな潮音だけがその空間を司る。そこにいつ

          夜明けの海を想像してみて。

          無印のマサラチャイが美味しいらしい

          言葉が好きだ。日本語が好きだ。音楽が好きだ。私は音楽家である。ここでくらい胸を張って言わせてほしい。一歩外に出れば、競争社会の一員で負け犬なのだ。作曲家で、浪費家で、馬鹿だ。馬鹿だけど馬鹿なりに少し自信を持てるのが音楽だった。 もう何年になるんだろう。 苦しかった。生きていけない、もう無理だと思ったあの日から。 初めは単なるストレスの発散だった。抗って、もがいて、走っても進まない逆向きのエスカレーターに乗っているような日々の熱。どこかに逃さないと暴発すると思ったそれをノー

          無印のマサラチャイが美味しいらしい

          あの世までの遠回り

          耳なんてなければ、誰かの泣き叫ぶ声を聞かなくて済んだのかい。 口なんてなければ、言葉で傷つけ合わずに済んだのかい。この目がなければ、孤独で悲しい夜の底に落ちていかずに済んだのかい。鼻がなければ、この両手がなければ、足も、脳も、記憶も、思い出も。 ぼくなんていなければ。 きっと違うだろう。そんなことが言いたいんじゃない。耳があるからあなたの哀を抱きしめられる。口があるから苦しいよって泣けるんだ。目はぼくを外の世界に連れ出してくれる。匂いがない世界じゃ記憶に輪郭がなくなって

          あの世までの遠回り

          山あり谷あり、嬉嬉鬱鬱鬱

          きっとこうも高頻度で書くものではないと思うのだけど、しょうがない、言いたいことで溢れている。 ここをみんなはどんな場所として使っているんだろうか。教えてくれ。無知は危険だ。 妄想性障害というのがある。簡単に言えば思い込みが激しい。 ぼくは他人に思考を読まれていると思い続けている。今これを電車で打ち込む瞬間も周りの人間に全てを晒しているんじゃないかって。ずっとそんな気がしてならない。何とも厄介である。いや、実際本当にぼくの頭は覗かれているのかもしれないけど。それは強いストレス

          山あり谷あり、嬉嬉鬱鬱鬱

          NOと言うこと

          歳をとるごとにだんだん人にNOと言えなくなる。 ある日は友人から、またある日には家族から言われた「優しいね」。ぼくはその言葉を聞くたびに心底死にたくなる。ぼくはやさしくなんかない。そうやって言われるたびに自分の醜さと人から向けられる好意のギャップに耐えられなくなるんだ。 ぼくはNOと言わない。それは自分でも気づいている。むしろ意識的にそうしている。人を否定しない。マイルールと言ってもいいかもしれない。それくらい人に嫌だとか駄目だとか伝えることに抵抗がある。そして、ぼくはそ

          NOと言うこと

          自然より自然な不自然だけ

          頭の中はいつもガチャガチャしていて、片付けが苦手なぼくには向いていない場所の一つだ。常に思考の点が原子みたいに飛び回っていて、主人のぼくに何の遠慮もなくぶつかり合っては互いを邪魔してる。時々点と点が線になってつながったり、その線が絡まって面倒なことになったり。窮屈な頭からいくつも外に飛び出して誰かの点や線と同じようなことを繰り返すことも少なくない。どうしてこうも気になることばかりなんだ世の中は。 そんな厄介な思考の住人の中にはおもしろそうなやつもいて今日はそいつについて話そう

          自然より自然な不自然だけ

          許せないもの

          朝のない日曜。週6日の高校。親に行かせてもらっている高校。受験のない高校。その癖まともに通うこともできない高校。それをただの怠惰にも関わらず精神耗弱による何かの病気だと逃走を図る自分。溢れることば。知らない言葉。割に合わない思考。痛み。弱いやつ。強いやつ。いつも笑ってるやつ。すぐに泣くやつ。馬鹿なガキ。聡いガキ。教師。ずっと遠く大きくて、それでいてきっと大して変わらない大人。他人に期待する自分。騙し、裏切る彼奴ら。ぼく。切がない。 春先の、淡い黄色の空気に紛れて海の方へ歩い

          許せないもの