すべて出来て 何も出来ない

湿っぽい夜さりに目を擦った。
白い壁に反射する月光が穏やかで、
今、死んでもいいと思った


久しぶりに昨晩父とドライブした。神戸方面へ。高速に乗って、流れていく照明灯をただぼんやりと眺める。特に話すこともなくiPhoneから流れる音楽と車の振動だけが車内にある音のすべて。聴いていたのはplenty、最近知ったバンドだけどもう解散してるらしい。知らない間に始まって終わってた。そんなことばかりの人生。人間そっくりって曲が好きだなぁ。

人間そっくり/plenty

"すべて出来て 何も出来ない"
今の僕にはどうしようもないくらいひどく刺さる。


先週の週明けと同時に夏休みが終わった。
始業式で伝えられたのは近々台風で休校になるかもしれないということと、同期が1人死んだこと。
7月の末の方って言ってたかな。自宅で亡くなっていたらしい。
友達と呼べる距離でもなければ知らない他人だというにも遠い、向こうは僕のことを覚えていたか分からないけど、なんとなく廊下ですれ違ったら目につく存在だった。いつも制服を着ていたのもあるかもしれない。僕の高校は基本私服で、日頃から制服を着ている生徒はあまりいない。

そんなよく知らない彼が死んだ。クラスが違うから教室の空いた席も浮いた質量だって僕は分からない。聞いたときはショックだった。でもそれ以上でも以下でもない、疲れちゃったのかなって、その程度だった。でもその日の帰り道なんだかいろいろ思い出して。友達と笑っていた顔、ちゃんと話したこともないよな、でも話し方や声の色は知ってるよなって。
そう思うと涙が溢れた。彼を想って僕は泣いている。笑ってたのに、笑ってたのにな。死ななくちゃ生きていられなかったんだろうか。そうするしかなかったんだろうか。死ぬことを悪いとは思わない。でも悲しいものは悲しいさ。

君がどんな人だったか、何一つ知らない。何を聞いて、何を食べて、何を見て生きてきたのか。なんで死んだのかも僕は知らない。でも何も知らない僕は君が死んでこんなにもかなしいんだよ。
分かってくれと切に願う。君が死んで悲しい奴はちゃんといるってこと。こんなの僕のエゴで、妄想だ。何も知らないんだから。身勝手で傲慢な僕の悪いところ。この悲しみだって明日にはもっと薄く溶けて僕の一部になって、いつかきっと思い出せなくなる。それでも、と思うよ。なにかが少しちがったら、また笑えたんじゃないかって。今はめいっぱいかなしむよ。

もうとどかないところに行ってしまったね。すべて出来て 何も出来ない。なんのために音楽をやってんだって、僕は。そんなことを言ったって自分都合な性格。あまり今日は自分語りするのも苦しいけど、また一つ許せなくなっていく。



今はただ、
もう大丈夫だから、どうか安らかに眠って。

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