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『ミッドナイト•ファミリー』 🇲🇽🚑🎥 | 映画感想

概要

先日、映画配給会社MadeGood.Filmsさんからリリースされた社会派ドキュメンタリー映画『ミッドナイト•ファミリー』の試聴&感想投稿のお話がありました。
映画の内容•詳細は上記のリンクからご覧下さい。

普段、鑑賞映画はSNSでサクッと感想•考察文を書いたり、irOdoriとのコラボで動画を出しているのですが、せっかくなので長文で載せたいなと思います。

本作のルーク•ローレンツェン監督は、メキシコ社会の貧困の闇に対してリアリティーを追求するため、3年をかけて撮影を行いました。
被写体となるモグリの救急隊員業を営むオチョア家の父と息子2人のリアルな職場や生活を密に捉えながらも、彼らの喜怒哀楽がよく滲み出た撮影方法と編集、シナリオ構成で魅せる技巧派な若手監督だなと思います。
もちろん、彼が言うように、オチョア家の手厚い協力と信頼から為せることも事実です。

奇遇にも私にとってメキシコは、約4年住んだ思い出の地🇲🇽
この映画が撮影された2016年は、正にメキシコシティーのど真ん中に住んでました。
2014年にメキシコに渡り、2015年からメキシコ進出する日系企業のための企業法務、人事労務、財務などの総合コンサルタントを務めてました。
その前には、現地で短期ですが、旅行会社で編集者をしてた経験もあります。
この映画ほど危険な取材ではなかったのですが、本作を鑑賞しながら見慣れた風景が見れたり、聞き慣れた通りや地区の名前を耳にしました。

メキシコは、近年だとNetflixの人気ドラマ『ナルコス』や『クイーン•オブ•ザ•サウス』などが有名ですね。
フィクションにしろ、現実問題でドラッグ、人身売買、汚職、違法労働などメキシコにはネガティブなイメージが付きまといます。
皮肉なことに、そういう違法薬物の需要や、違法商売を無視•放任し利得を得ることを黙認してるのは、メキシコと隣接した地の利を活かすアメリカの責任でもあります。
私は現地の人づてや仕事絡みから得た情報でメキシコの短期利益主義で享楽的な性質、アメリカの超合理主義で偽善者ぶった欺瞞的な性質を冷ややかに見て過ごしてました。
なので、私は本作を通じて、私の五感で経験してきたメキシコ社会の特徴を、日本の比較も交えて書いていきます。

ソーシャル•クラスの闇

メキシコ社会の特徴として、まず著しい階級社会です。
その視覚化できる差は、日本の比ではないです。
しかも残念なことに、肌の色や血筋による差異がはっきりしてます。
スペイン人を主としたラテン民族(フランスを含む南ヨーロッパ系)は、アングロ・サクソン系やドイツ系などの北方人種によるアメリカ大陸の統治方式とは違い、アステカやマヤ文明の古来の伝統で生きていた現地のインディオ達と混血していきます。
その人たちをメスティーソと呼び、現在、メキシコ人約1.3億人の6割がそうです。

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