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【読書】信じるなら政府じゃなく市場!/「Free to Choose」から

左派進歩主義的インテリ層/経済学者のやり玉に上がる市場原理主義、その知的バックボーンがシカゴ学派のミルトン・フリードマン。ノーベル経済学賞を受賞した著者の経済哲学が詰め込められた一冊。

要約

  • 富の分配が不公平な問題は、共産主義だろうがなんだろうが結局、どんな経済システムにも存在する。批判対象が市場なのか政府なのかの差でしかない。

  • 政府が介入するとろくなことがない(政府の失敗)。それは一部の選ばれた人間(エリート)が税金で巻き上げた他人の金(国民)を使ってやるため。

  • 人の金を使ってやる政府の施策は非効率的である。教育も環境対策も市場メカニズムを生かした施策を考えるべき。




1.本の紹介

ノーベル経済学賞受賞者で市場原理主義経済学者の巨頭であるミルトン・フリードマン/Milton Friedmanとその配偶者で同じく経済学者のローズ・フリードマン共著で本のタイトルは「Free to Choose - a personal statement」(1979年刊行)で邦訳あり(「選択の自由」)。

ミルトン・フリードマンさん

以前紹介した「Capitalism and Freedom」に続いて、フリードマンの市場原理主義的主張が力強く、明瞭かつシンプルに展開された名著。

本書のテーマでもある自由と平等に関するフリードマン教授のlegendaryな講義は下記から視聴可能。秀逸の一言。

2.本の概要

富の分配については、市場原理主義だろうが福祉国家であろうが、どんな経済・社会体制を取っても一定の批判は付き物。人間は自分を周りと比べ、なぜ自分の取り分が他の連中より少ないのかと不満に思う。そして共産主義or社会主義的システムにおいては中央政府、資本主義システムにおいては市場を批判するものである。

政府に役割とはなにか?この命題にたいして、アダム・スミスは、個人の保護(財産や自由)を最重要課題とした。そして、市場の失敗を是正しようと政府が過度な介入を行うと、政府の失敗へとつながると指摘している。例えば世界大恐慌時にまさに政府の失敗が発生した、連邦政府の初期対応(緊縮財政)は状況を悪化させたのである。

社会保障(例: 年金、障害保険、健康保険)も、他人の金を奪って被対象者に金を再配分する施策にすぎない。問題は、非常に非効率的で無駄が多いなbureaucracyが介在し、人の金を使ってなにかをやるため、十分なインセンティブが働かず、効果的な結果に繋がらない。結局、納税者は税金社会保障費が高いと不満をいい、被対象者は、貰える金額が少ないと不平をいう。

結果の平等/equality of outcomeは実現不可能な幻想に過ぎずない。根拠がない主張であるという点で宗教と同じ。富の再分配政策等は愚の骨頂であり、人々の自由を阻害する。

公共教育制度への政府投資は悪手。消費者である親の選択肢(学校を選べるようにする)を増やす施策(例: Voucher制度)を行うべき。公立校への投資(例: 補助金など?)を手厚くしても非効率。以下抜粋

…growing role that government has played in financing and administering schooling has led only to enormous waste of taxpayers’ money but also to a far poorer educational system than would have developed had voluntary cooperation continued to play a larger role.

P. 187

環境対策で産業界を規制するには悪手。polluterは業界ではなく消費者である。電力等の価格に税を上乗せするような追加料金を課すが最適。

人の手による政府介入は非効率的で、意図に関わらず、サブオプティマエルになる。よって市場原理を使うべきで、政府施策最低限、やるとしてもvoucher制度やeffluent chargesなど、市場原理に、も続いた施策にすべき。

3.感想

Capitalism and Freedomでも感じたが、彼の言葉は心に響く。その言葉は、専門的な経済学用語を使うでもなく経済理論を説明するでもない。どっちかというと政治/経済哲学に近い感じ。

基本的に彼は人の力を信じていない。冷戦中だったので、反共産/社会主義という時代背景を反映しているのだろう。戦争などで政府が巨額の財政赤字を抱えていたこともあるだろう。人の手/政府より神の手/市場を信じよう、というお話。

しかし、小泉改革の結果格差が拡大した云々と言われている日本。新自由主義/市場原理主義的改革で成長を遂げた国はないというのが進歩主義的経済学者スティグリッツさんの言葉。

これは、フリードマンの理論自体がそもそも破綻しているのか?理論はいいけど、いくつか非現実的な前提条件があったのか?フランシス・フクヤマによれば、フリードマン含め、新自由主義者は市場原理に基づいた自由主義という考えを、極端に推し進めたバージョンと言っている。人々の自由を保証する自由主義も、過度に推し進めれば弊害が出るということか。

いずれにせよ進歩主義的経済学者は大きな政府を主張するけど、実はその政府自体が非効率的である可能性を十分に加味していない気もする。だからこそ、フリードマンの言葉が刺さるのかも。

最後に一言

経済学者が大衆向けにわかりやすく書いた本。市場原理主義派もそうでない人も一読の価値あり。

本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いに思います。


併せて、他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。


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