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【出版のミライ⑱】人は感動を求める、その本に感動体験はあるのか?

本日のエッセンシャル出版社のミライ会議は、人の心を動かすCMづくりの天才!クリエイティブディレクター・サトー克也さんへのインタビューから「出版社のミライ」を考えました。

こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。

私が、”本づくり”をしていく上で、日々、どのようなことを考え、どのような目的で本をつくっているか、記事風に残していきたいと思います。

【プロフィール】

大学卒業後、年中~小学校6年生までの子を対象とした塾、花まる学習会に入社。将来メシが食える大人になること、魅力的な人になるということを教育理念の事業で、授業や野外体験の引率などを行う。授業など子どもたちに関わる傍ら、広報部、講演会事業、ブロック責任者などあらゆる業務にも携わる。現在はエッセンシャル出版社で、本づくり、広報など、出版業に関わる全てに携わる。

エッセンシャル出版社: https://www.essential-p.com/

先日、サトー克也さんというCM界で大活躍されているトップクリエイティブディレクターの方のインタビュー、動画撮影を行いました。そこでの気づきが、あらためて書籍づくりに活かせることが多いと思ったので、ミライ会議でのテーマとして扱いました。

サトー克也さんは、人の心を動かす数々のCMを作ってこられた方です。皆さんも、サトーさんの作品の中で、「あ!知っている!」というものがたくさんあるのではないかと思います。

サトー克也

クリエイティブ ディレクター。心に響くインパクトのある広告表現で、数々のCM話題作を世に送り込む、CM界のトップクリエーター。主な演出作品に、日立マクセル「ずっと、ずっと。」、コスモ石油「ココロも満タンに宣言」、東京メトロ「すすメトロ!」、大塚食品「クリスタルガイザー」、読売新聞「編集手帳」、大阪ガス「さすガっス!」「ガ、 スマート!」他多数。カンヌ国際広告祭銀賞、ギャラクシー賞、ACC賞他受賞多数。

広告業界で生きてきたサトー克也さんは、「モノづくりのコツは何か?」ということを突き詰めて考えていったときに、最終的に、「人は何のために生まれてきたのか?という問いにまでいきついたそうです。

サトーさんの見つけ出した答えは、「人は体験し、感動するために生まれてきている」ということ。だからこそ、人は、体験や感動に時間をかけたり、お金を払ったりするのではないかということでした。

その話を聞いた時、体験や感動を提供できる商品、そしてそれを伝えられる広告という視点で、あらためて、本作りや本の周辺コンテンツの提供について、考えてみようと思いました。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の出版・書店業界では、再販売価格維持という制度(再販制度)があります。つまり、簡単に言うと、本屋さんでは、ある意味、ほとんどの本を「借りている状態で販売している」ということなのです。そのため、書籍に関しては、販売価格を変更してはいけないというルールがあるのです。

一方で、今、この再販制度(取次を通して、委託販売する仕組み)がどんな歪みを生んでいるかというと、ひとつには、出版社は定価を下げたり上げたりして販売できないけれど、書籍を購入した人は、その書籍を再度、「メルカリ」や「Amazon」などに、値段を自由につけて販売ができるということがあります。

本が、中古の本として、また別の方に買って読んでもらえることは、伝えたい内容を少しでも世に広まっていくという視点では成功しているのですが、図書館や古書店、転売的な方法を通して、回し読み的なものが増えても、その部分に関しては、出版社も書店も著者にも、ほぼ全く還元されないというところが課題です。

さらには、今は、ますます、本から得た情報は、WEB記事などと同じように、読み捨てされるという状態にもなってきています。背景として、情報が大量に高速で増えている時代に、一度読んだ情報をもう一度読み直す、何度も読んで自分の血肉にしていくというよりは、新しい情報をたくさん取り入れていくような方向に動いているようにも思います。

このような背景理解、問題意識があったのですが、サトーさんがおっしゃる「人は体験し、感動するために生まれてきている」と捉えるならば、私たちが本づくりのときにもっと考えるべきは、「その本に感動体験はあるのか?」ということになります。

サトー克也さんの初の書籍『和法』に書かれている、「人が感動するツボ」には、このようなものがあります。

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「人は体験し、感動するために生まれてきている」。
そして、もう一つ、人が求めてしまうことは、「無知を既知にすること」

人が、心の底で、一番ワクワクすることは、「知らなかったことを知ること」。そうだとすれば、流行のものをそのままなぞるようなものではなく、何かしら新しい視点、知識、もしくは「新しい自分」に出会うような体験をしてもらえる情報・本というものが、人が本当に求めていることになるでしょう。
また体験という意味では、「紙の本」「電子書籍」というカタチだけにとらわれず、その周辺のサービス(体験)も一緒に考えていくことで、読者やユーザーに、心の底から求めている、ワクワクする体験を提供していけるのだろうと思います。

私は、制作してきたひとつひとつの書籍の内容にも誇りを持っていますが、それ以外に、「文字にはできない著者の方々の素晴らしさ」というものも、常に感じています。

そのため、何か壁を感じたり、悩んだりしたときは、自分がつくった本に立ち返ります。ただ情報を得ようとして買った本と、著者のあり方や生き方も知りながら作った本とでは、自分自身、感じ方、染み入り方が違うのかもしれません。

そういう意味で、エッセンシャル出版社の本を、より多くの方に「染み入る」という状態にしていただきたいという思いも込めて、今後も、著者のインタビュー動画や、著者に直接、書籍の解説などをしてもらう解説動画・音声などを積極的に発信していきたいと思います。

(まとめ)

・本づくりで常に意識する必要があるのは、「その本に感動体験はあるのか?」という問い。
・本以外の周辺コンテンツでは、「どんな感動体験ができるのか?」という視点。
・本をより活用していただくために、「本を通して、知らなかった自分に出会うためにできること」として、著者のあり方や人柄も伝わる動画・音声の企画制作。

今回、この3点を、あらためて、『和法』(エッセンシャル出版社刊)の著者であるサトー克也さんから学ばせていただきました。


サトーさん

【サトー克也】
クリエイティブ ディレクター。心に響くインパクトのある広告表現で、数々のCM話題作を世に送り込む、CM界のトップクリエーター。主な演出作品に、日立マクセル「ずっと、ずっと。」、コスモ石油「ココロも満タンに宣言」、東京メトロ「すすメトロ!」、大塚食品「クリスタルガイザー」、読売新聞「編集手帳」、大阪ガス「さすガっス!」「ガ、 スマート!」他多数。カンヌ国際広告祭銀賞、ギャラクシー賞、ACC賞他受賞多数。

三井のリハウス、テプコひかりなど、常に人間の本質を突き、見る者の感情を刺激するテレビCMは、「広告がいかに人の生活に一輪の花を咲かせられるか」という独自の哲学で生み出されている。

日立マクセルDVDのキャンペーンでは、昨年のカンヌ国際広告祭でシルバーライオンを獲得。今年は1度だけオンエアされたテレビCMが、ACCグランプリをはじめ、数々の広告賞を受賞した。廃校になる小学校の最後の卒業式までの7日間を、徹底的にリアルを追求して撮影した計8分間の映像は、ユーチューブでも話題になり、多くの人の涙を誘った。 

「ずっと残しておきたかったものが目の前で終幕を迎えるわけですから、たぶん切ないドキュメンタリーが撮れるとは思っていました。いつか大事なものがなくなってしまうからこそ、今を大切に生きることの尊さに、無意識にでも気づいてもらえればうれしいですね」

いつも心の奥には両親への感謝の思いが、強くある。家族をテーマにした企画が多いのも、リアルな自分をそこに投影できるからだ。

読売新聞の夕刊キャンペーンでは、オリジナルキャラクター「だっち君家族」のドタバタ劇を描くことで、読者にも平和な家庭をベースに、楽しく生きて欲しいとの祈りを込めている。 「企画の中に必ず自分がいることが大切なんだと思います。リアルな経験や感動を表現したときに、その広告は説得力のあるものになると思うんですね」 

95年、『地球村宣言』を著した高木善之氏や、船井幸雄氏の講演を聞いて、このまま経済至上主義が進むと地球がダメになることに気づいた。地球市民としての意識が芽生えると同時に、企業の「売らんかな」の欲望に応えるだけの広告づくりにも疑問を感じ始めたという。

「その企業や商品が人をどれだけ幸せにできたかが、ブランドの信頼感になって積み重なっていく。世の中に存在するものには、必ず人を幸せにする愛情が隠れているはずで、それを抽出して表現してあげるのが僕の役目だと思っています」



想いを込めて作った書籍を応援してもらうことに繋がり、大変嬉しく思います。 また本が売れなくなっているというこの時代に、少しでも皆様にお伝えしたいという気持ちの糧になります。