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余談。編集者に求められるスキルって…?

本の価値ってなんだ??

のっけから言えば、当たり前な話しですが、出版社にとって売れない本に価値はない。
ただ残念なことに、いい本に限ってなかなか売れてくれないのだ。ここは僕の主観が入るため話し半分にお読みいただければと思います。

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ならば、いい本ってそもそも何だ?って話しになりますよね。

僕の価値基準で言ういい本とは、ジャンルを問わず、人をしあわせにする本、希望や勇気を送る本、深く人生について考えさせてくれる本、生き方の規範になるような本になる。

それには、著者の生き方そのものが問われるし、人生観・哲学の深さに比例する。だから、不特定多数の人に分かるわけがないし、理解できる人は限られてしまう。そもそも理解したいとも、しようともしない人が圧倒的に多いと見ている。仮にそんな本物の人をきちんと見極められる人が大多数だったら、しあわせな社会にもっとなっているでしょう(笑)。

だからそんないい本は、出版してすぐに花火のように打ち上がらないし、何十年、何百年と読み継がれていき、長い時間をかけてベストセラーになっていく。本当にいいものは地下水脈のように、時間をかけてゆっくり浸透していくもの。

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現在、ベストセラーになっている本は、広いマーケットに刺さるテーマのものばかりだし、普段本を読まない層が読んでくれるからベストセラーになっているわけです。それと僕の言ういい本かどうかとは比例しません。

歴史を見てもそうでしょう。ここについて長々と書くつもりはないので、本題に入りますが、結局答えはシンプルで、売れる本も、長い時間をかけて買われ続けていくいい本も、著者がすべてなのだ。コンテンツがすべてなのだということ。

前の記事で、コンテンツがすべてとも言い切れないと書いたけど、それはそのコンテンツを調理する編集者の資質や熱量が低ければ台無しになることもあるからだ。やはり、コンテンツなのです。本というものは。出版は。

本を売って稼ぎたいなら、良質なコンテンツを引っ張ってくればよいだけの話し。だから、力ある編集者とは良質なコンテンツを引っ張ってくる人なのだ。これなしに、いくら編集の作業に頑張っても、コピーを磨いたり、さまざまな作業に四苦八苦しながら年間何十冊つくろうと、売れる本は作れない。

もちろんその努力を否定しているわけじゃなく、何十回も失敗しながら、売れない本ばかり作りながら、やっとベストセラーを産む編集者になっている方もいますから。量は質に転換するというのは正しいと信じている一人でもあるし。

これを言ってはもともこうもなくなりますが、出版でメシを食おうものなら良質なコンテンツを引っ張ってこれる実績ある編集者を引っ張ってくれば、何十倍、何百倍の売上になる可能性が高まります。

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しかし、次なる議論は、そもそもそんな良質なコンテンツがたくさん転がっているのか?って話しになるわけですよ。本物の人物ほど中々表には出てこないし、突き抜けた本物がでにくくなっている時代でもある。

いまやSNSで発信力をつけることが前提としてありますが、問題はSNSにはどれだけの力があるの?って話しになる。

残念ながら、きちんと日本の人口から各SNSの月間アクティブユーザーを見れば一目瞭然で、Facebook2800万、Instagram2000万。その中でインフルエンサーの影響力の到達率なんて考えれば、もっと少なくなる。

だって、Instagramのインフルエンサーの誰々なんて言ったって、誰それ??って人が沢山いるのだから。Twitterは4500万とかなりの規模にはなりますが。

何を言いたいかといえば、価値観が多様化し、様々な媒体があって、個がメディア化すればするほど、昔みたいに突出する人気者、アイドルだってそう、そんな日本を代表するようなカリスマは生まれないわけだ。本の世界だって20年前の1/10しか売れないのだから。いま1万部売れる本は20年前なら10万部級の価値という話しなわけです。

もちろんSNSで影響力ある人物は強いでしょう。あくまでフォロワー数ではなく、どんな発信をし、どんな価値を提供し、それを本当に必要としている消費者がどれだけいるかですが。

出版も、単に影響力があるから本にするという単純な発想ではなく、編集者がその影響力をテコにはするが、あくまでコンテンツの見せ方、伝え方のハンドリングが極めて大事。
そこが編集者の生命線でもある。その見せ方、伝え方という調理法が時代や人の心にマッチングしたら、底知れぬ売れ方をする。



「人生がときめく片づけの魔法」だって、片づけという大きな市場をフックにしているけれど、伝えている内容はマインドの話し、精神世界に通じるものなのだ。もし、片づけ市場だけを狙っていたら30万部いけば大成功。それがミリオンになったのだから、著者のコンテンツの素晴らしさを前提にした、編集者の力量が発揮された賜物でしょう。

本の価値は、資質×経験値×熱量×共感性×拡散力だと思っています。

◉資質はコンテンツの質。
◉経験値は体験の深さや濃さ、実績。
◉熱量は本気でそれを伝えていきたいという信念。
◉共感性は誰もが自分事として転換できる伝え方。
◉拡散力はこの文脈から言えばSNSなどによる著者の影響力です。

つまり、はじめに書いた通り、コンテンツがすべての土台にあってのSNSの威力なんですよ。それを履き違えると、単に発信力があるから売れるなんて間違いを犯します。
だから、良質なコンテンツを見極めて、著者の熱量・信念を軸にしながら時代に合わせた編集力が問われるんです。そんな編集者が出版社に一人いれば、たった一冊から云千万、億単位の売上げを作ることが可能になります。編集者なんです。著者がコンテンツなら、出版社は編集者で決まる。

僕はそう考えています。



最後に、書店営業を長年してきて分かるんだけど、一店舗だけで大展開をし、そこで売れたら、簡単にベストセラーにさせられるんですよ。かなり極論だけど。

そこでバカ売れした実績を見たり聞いたりしながら周りの書店が展開し出す。どんどん売れだしますよ。点と点が面に広がっていきます。だいたい一店舗でもバカ売れした本は、他の書店でも売れるんです。ネット書店には広げて青天井に伸ばす力はありませんから。



SNSもアクティブユーザーに触れましたが、日本人口から見れば一部の影響力でしかない。なのにいきなりマスを狙って何かやろうとするからおかしくなるし、書店展開もいきなりマスを狙って一気に受注して売ろうとするのではなく、一部の書店で仕掛けて面にしていく時代じゃないかと思うんです。

仮に一気に広げて売れたとしても市場が成熟する前に流行らせすぎると、広がり切る前に飽きられるリスクがある。と、言いながら、そもそも情報化社会にあって、静かに売り広げること自体が無理なのかもしれませんが。

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