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住宅設計者の自分の家づくり 17 住んでみて 冬〜春編

年末に無事引っ越しを終えて最初の冬と春を過ごした感想をお伝えします。

温熱環境

メインの暖房は基礎蓄熱暖房で、下の写真のように基礎に張り巡らせたチューブ内を不凍液を循環させて基礎全体を温め蓄熱させるというものです。

熱源は電気でヒートポンプで温めるので熱効率はまあまあ良い方で、冬季は1日8時間稼働が推奨されています。

このシステムは10年以上前から新築の方には推奨していて、当時から評判は良かったのですが、この10年で標準的な断熱性能がかなり上がったこともあり、より顕著に効果を感じられるようになったかもしれません。

この暖房の何が良いかというと、家に寒い場所がなくなるのと、風が吹かないので不快感もなく、あまり乾燥しません。

風呂やトイレ、玄関などが暖かいと、ちょっとしたことが億劫ではなくなり、ストレス無くのびのびと過ごせますし、加湿器無しで過ごすことができたので不要な結露も避けられます。

室温は一番寒い時期の早朝の実測で、1階は19度くらい、2階は少し下がって16度くらいでした。

2階は朝30分程度エアコンを補助的に使った日はありましたが、エアコン無しでもフリースなどを1枚着るだけで過ごせるレベルです。

外断熱なので、蓄熱は基礎だけではなく構造の柱や壁面などにも及び、壁面や床の面温度もおおよそどこでも23度くらいで、体から輻射熱があまり奪われること無く過ごせるのでひんやりした感じがありません。

2月に入ってからは稼働時間を短くして7時間にしてみましたが、それほど室温に影響は感じられず、2月後半からは家のどこでも気温が20度を切ることはなく、外気が20度近くなる日などは家全体が25度を超え半袖じゃないと暑いくらいでした。

家のどこにいても快適なので寒くて行きたくない場所というのが無くなり、玄関を含めたほぼ全室を居室として使うというコンセプト通り家族が好きな場所で過ごせたので、延床面積で25坪程度でも狭さを感じずにゆったりと暮らせました。

このシステムはコストパフォーマンスもなかなか良く、イニシャルコストは基礎面積が小さいこともありますがおおよそ材工で100万円程度と広めのLDKの全面温水床暖房と大差ない価格です。

床暖房と違い、チューブがコンクリートに埋まっているために劣化や傷付けるなどの心配が少なく、メンテナンスとしては室外機とコントローラーが壊れた場合の交換だけなのも良い点です。

ランニングコストは暖房単体では計っていませんが2月の家全体の電気代がリモートワークでほぼ家にいる状態でも16,000円程度(2021年2月時点)とマンション住まいの頃より安かったので、家全体を暖めることを考えると上々です。

暖房は3月の中旬には切りましたが、しばらくは蓄えられた熱の放熱が続き、2階は日差しの強い暖かい日だと暑くなり25度を超え、窓を開ければよいのですが花粉のために窓を開けられず半袖で我慢するということになったのは想定外でした。

このように蓄熱暖房は細かな調整が効かないために急に暑い日や寒い日が来ると調整が難しいという点はデメリットとしてありますが、それ以外の快適さを考えると許容範囲に思えました。

近年のZEH的な方向性からすると開けた土地で建物全体で日射を得られる場所であればさらに断熱性能を上げて無暖房もありかもしれませんが、住宅密集地で得られる日射が限られている場合はこのシステムはとても良いと思います。


庭の変化

左の写真が1月、右が4月

前庭は最初は常緑のソヨゴだけ葉がついていましたが、4月にはコハウチワカエデやアオダモもしっかり葉がついています。

花も常に何かしらが咲いている状態で、最初はサザンカが咲いていて、ツバキ、シキミ、ツツジ、ブルーベリー、タモなどが順番に咲いて楽しませてくれています。

暖かくなるにつれ、当然のように虫もそれなりに出てくるようになり、アブラムシがコハウチワカエデの枝を一部枯らしてしまい薬をまいたり枝を切ったりということもありました。

アブラムシとこんなにしっかりと向き合ったのは小学校以来です。

奥庭のヤマボウシもすっかり葉がついて2階から見てもだいぶ賑やかになりました。

光の変化

リモートワークとなり、一日中家にいることが多くなったために日々の光の変化はより強く感じるようになりました。

ある日突然手すりに光が当たる

夏至、冬至、春秋分の太陽光のシミュレーションはしていたのですが、当然ながら毎日太陽の角度は変わり、今まで陽が当たらなかった場所が突然照らされたりするとなかなかドラマチックに印象が変わります。

このような陽の入り方は冬の低い太陽ならではで、冬至近辺だけ楽しめる景色になります。

5月になると日の出も早くなり、早朝に階段踊り場に光が入るようになりました。

天窓から西壁に当たる光は冬至の頃は天井勾配なりだったのが、5月にはかなり垂直に近づいてきています。

ワークスペースは冬の間は一日中全く直射日光が入りませんでしたが、3月には夕方になると木漏れ日が入ってくるようになりました。

逆に南面の窓は冬はかなり日が入っていたのが最近では庇に遮られて直射日光はほとんど入らなくなり、想定通り南窓は日射遮蔽目的のブラインドは不要となりました。

次回は夏から秋にかけての様子をお伝えします。

※この記事は2021年に自社ブログに書いた内容に加筆訂正したものです
竣工後の写真などは下記リンク先でもご覧いただけます。

このシリーズをマガジンにまとめておりますので、こちらも併せて是非ごらんください。

子育てと家にまつわることも書いてます。


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