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oohama
2021年3月16日 08:17
詩人の伊藤比呂美の本を読んでいたら「どうしようもなくなったら詩人になりなさい」とあった。瀬戸内寂聴さんも「小説家になりなさい」って言うらしいから半分冗談だと思っている。それぐらい生活が大変だった時代、アートに生きることは無頼だったと思う。今回、好きな詩についてちょこっと書きたいなって思ったって、つい、調べ物をしたら、作品と作者の人格は違うと頭の中で強調しないとならなかった。でも、調べていくと、
2021年3月11日 06:38
夏の夜の博覧会は、かなしからずや中原中也夏の夜の博覧会は、哀しからずや雨ちよと降りて、やがてもあがりぬ夏の夜の、博覧会は、哀しからずや女房買物をなす間、象の前に僕と坊やとはゐぬ、二人蹲(しやが)んでゐぬ、かなしからずや、やがて女房きぬ三人博覧会を出でぬかなしからずや不忍(しのばず)ノ池の前に立ちぬ、坊や眺めてありぬそは坊やの見し、水の中にて最も大なるものなりき、かなしか
2021年3月10日 08:06
月夜の浜辺月夜の晩に、ボタンが一つ波打際(なみうちぎわ)に、落ちていた。それを拾って、役立てようと僕は思ったわけでもないがなぜだかそれを捨てるに忍びず僕はそれを、袂(たもと)に入れた。月夜の晩に、ボタンが一つ波打際に、落ちていた。それを拾って、役立てようと僕は思ったわけでもないが 月に向ってそれは抛(ほう)れず 浪に向ってそれは抛れず僕はそれを、袂に入れた。月
2021年3月7日 08:59
3.11が近づき、震災関係の報道が続いている。そのとき、ふらちにも頭にうかびあがってくるのは中原中也のこの詩です。汚れつちまつた悲しみに……汚れつちまつた悲しみに今日も小雪の降りかかる汚れつちまつた悲しみに今日も風さへ吹きすぎる汚れつちまつた悲しみはたとへば狐の革裘(かはごろも)汚れつちまつた悲しみは小雪のかかつてちぢこまる汚れつちまつた悲しみはなにのぞむなくねがふな
2021年3月6日 09:56
初恋まだあげ初(そ)めし前髪(まへがみ)の林檎(りんご)のもとに見えしとき前にさしたる花櫛(はなぐし)の花ある君と思ひけりやさしく白き手をのべて林檎をわれにあたへしは薄紅(うすくれなゐ)の秋の実(み)に人こひ初(そ)めしはじめなりわがこゝろなきためいきのその髪の毛にかゝるときたのしき恋の盃(さかづき)を君が情(なさけ)に酌(く)みしかな林檎畑の樹(こ)の下に初
2021年3月3日 06:43
甃(いし)のうへあはれ花びらながれをみなごに花びらながれをみなごしめやかに語らひあゆみうららかの跫音(あしあと)空にながれをりふしに瞳(ひとみ)をあげて翳(かげり)なきみ寺の春をすぎゆくなりみ寺の甍(いらか)みどりにうるほひ廂(ひさし)々に風鐸(ふうたく)のすがたしづかなればひとりなるわが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ桜が散るころ、必ずこの詩を思い出す。コーラスをや
2021年2月28日 10:23
その子 二十歳 櫛にながるる 黒髪の おごりの花の うつくしきかなみだれ髪与謝野 晶子歌集みだれ髪の名前の元になった短歌。自分の中の官能を堂々と歌ったナルシズムが心地いい。明治の大きな特徴は思春期の発見じゃないかと思っている。それまでは16歳ぐらいになると結婚と子育てが始まってしまっていた。高等教育がはじまって青春を楽しむようになったと思う。夏目漱石なんか読んでると、娘義太夫に
2021年2月25日 08:05
山本周五郎の戦前の千葉県浦安の生活をえがいた「青べか物語」に貧しい女給にだまされるインテリ青年が出てくる。原民喜も同じようなことをした。不幸な女性を助けることで自分を助けると錯覚した。そのことは恥ずかしくて一生黙っていたそうだ。小林多喜二も、似たようなことをしたらしいし、あの頃の青年のひとつの行動パターンなんだろうと思う。それぐらい、立身出世する青年の幅は狭まっていて非人間的だったのだろう
2021年1月16日 16:27
小岩井農場わたくしはずゐぶんすばやく汽車からおりたそのために雲がぎらつとひかつたくらゐだけれどももつとはやいひとはある化学の並川さんによく肖(に)たひとだあのオリーブのせびろなどはそつくりおとなしい農学士ださつき盛岡のていしやばでもたしかにわたくしはさうおもつてゐた春と修羅宮沢賢治詩集「春と修羅」のなかの「小岩井農場」の始まり。小岩井農場を今はない軽便鉄道で訪問したとき
2021年1月14日 08:53
春すぎて夏来るらし白妙の衣ほしたり天の香久山 万葉集 持統天皇この歌は高校で覚えさせられた百人一首の二番目だったから今でも覚えてるというのもあるけど、大好きな詩だ。「ほしたり」と言い切っているの歯切れがよくっていいなって思う。夏が好きだ。田舎の海辺の砂浜でぼんやり見た青空が好きだ。梅雨明け
2021年1月13日 13:41
世界のための豚屠殺者機具製作者、小麦の積上げ手鉄道の賭博師、全国の貨物取扱い人がみがみ怒鳴る、ガラガラ声の、喧嘩早いでっかい肩の都市(安藤一郎訳、岩波文庫)シカゴ詩集から カール・サンドバーグ 初めての詩集は新潮文庫の「カール・サンドバーグ詩集」だった。本屋さんの棚の様子まで覚えている。読んでみると近所の工場のトタンの壁から聞こえてくる機械音が浮かんだ。この抜粋は20世紀初