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毎日読書メモ

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2024年4月の記事一覧

額賀澪『タスキ彼方』(毎日読書メモ(532))

額賀澪『タスキ彼方』(毎日読書メモ(532))

額賀澪『タスキ彼方』(小学館)読了。令和5年~6年と、昭和15年~23年の箱根駅伝を中心とした物語が交互に語られ、2つの時代が繋ぎ合わされる物語。

額賀澪の箱根駅伝小説と言えば、『タスキメシ』、『タスキメシ箱根』(共に小学館)を思い出す。『タスキメシ』は管理栄養学を学ぶ学生が食というアプローチから箱根駅伝をサポートする物語だったが、今回の『タスキ彼方』は、その続編でもスピンオフでもない、独立した

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三浦しをん『墨のゆらめき』(毎日読書メモ(531))

三浦しをん『墨のゆらめき』(毎日読書メモ(531))

三浦しをん『墨のゆらめき』(新潮社)を読んだ。すっかり職業小説の達人となった三浦しをん、今回の職業はホテルマンと書道家である。
筆耕、という言葉を知ったのは、社会人になって数年目、陶磁器の展示会を開催するにあたって、展示品の品名を和紙の札に筆耕士さんに書いてもらうよう依頼したときだった。その時に、結婚式の招待状や席札などを書いているのも筆耕士さんであることを知った。更にリアルに筆耕士の仕事を感じた

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吉村昭『漂流』(毎日読書メモ(530))

吉村昭『漂流』(毎日読書メモ(530))

ちょっと遠出をするときに、道中の読書用の本、何冊も持っていけないから、と、父の本棚から取ってきた、吉村昭『漂流』(新潮文庫)を荷物に入れて行った。大正解。物語世界にぐっと引き込まれ、眠気もきざさず、途中で寝過ごしたりする心配もなく、手に汗握りつつ読み進める。
家に帰って、面白さを家人にとうとうと語っていたら、「君はこういう、極限状態にいる人が、どうやってその運命から脱出しようとする小説が好きなんだ

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井上荒野『照子と瑠衣』(毎日読書メモ(529))

井上荒野『照子と瑠衣』(毎日読書メモ(529))

年を経てきた女性たちの小説、江國香織『シェニール織とか黄肉のメロンとか』で堪能して、続けて井上荒野『照子と瑠衣』(祥文社)で更にワクワクする。『シェニール織とか黄肉のメロンとか』の登場人物たちが57歳くらい、照子と瑠衣は当年とって70歳!
照子と瑠衣、語感だけでもイメージできるように、ふたりの名前はリドリー・スコットの映画「テルマ&ルイーズ」から来ている。って、わたし見てないのですが、逃避行をする

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