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理系への憧れとロスト・ワールド。

ひんやり透明な雨上がりの空気。
昨日は一日中、木や稲やすすきが絶えず騒いでいたのに、今日は眠っているみたいに頭を垂れてしんとしています。

今日から長男と夫は、それぞれの外の場所へと出ていって、私は次男と二人。


次男がオンライン授業を受けているあいだは、横で私も何かしよう、と考える。
1時間目理科、2時間目算数。

時々、数学や科学の世界に身を浸せたら、と思うときがあります。
なぜ高校のときから、とても曖昧な理由で自分は文系だと決めてしまったんだろうな。

まだ世の中のことなんて全然わかっていなくて、判断するには早すぎる気がするのに、一度そう思ってしまうと苦手意識ができてしまった。
でもまあ、そこから今までずいぶんの時間があったから、言い訳でしかないけど。


ときどき、本を読んでいるとそんな数学や科学の世界につながることがあって、ドキドキします。

ずいぶん前に、小川洋子さんの『博士の愛した数式』を読んでフェルマーの最終定理がどうしても気になり、本を買って読もうとして挫折したこともあったけど…。(数学に弱いことは明らか。)
なんとなく手放せず、まだ本棚の中に入れたままです。(認めたくない。)


そしてこんどは数年前、牧野富太郎の植物画に魅せられ、そこからつながって、3冊の本を買いました。

『牧野富太郎 なぜ花は匂うか』
『湯川秀樹 詩と科学』
『中谷宇吉郎 雪を作る話』

平凡社が刊行する「STANDARD BOOKS」というシリーズ。

自然科学者が書いた随筆を読むと、頭が涼しくなります。科学と文学、科学と芸術を行き来しておもしろがる感性が、そこにあります。

実はまだ読んでいないページもあったりするので、正直に言うと、そのときの衝動とシリーズそれぞれの装幀の美しさで買ってしまったことを、認めざるを得ないのですが…。
(つまり熱しやすく冷めやすい。)

ふだんは、飾りのように…。


そんな中でも、私は中谷宇吉郎が好きです。
物理学者である中谷宇吉郎は、生涯を雪と氷の研究に捧げた人です。
その雪を作る話もよいのですが、「イグアノドンの唄 ー大人のための童話ー」という一編がとてもよいのです。

敗戦の年、吹雪に閉ざされた疎開先の北海道の地で、自分の子どもたちにコナン・ドイルの『ロスト・ワールド』を読み聞かせるエピソードてす。


次男が昆虫についての授業を受けるとなりで、久しぶりにこれを読み返していました。
(あたま・むね・はら…あしは6ぽん…)

ほんの短い話の中で、自分もその子どものひとりになって『ロスト・ワールド』に耳を傾けているような錯覚に陥り、何もない時代の、その何でも生み出せそうな豊かさにふれて、胸が傷みました。



あぁ、またこうやってね。
あれも読みたい、これも見たい、聴きたいと気持ちがあちこちに散らばって広がって、自分でも収拾できなくなってしまいます…。


そうです。
もちろん、今日も自由な時間がある故です。


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