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かをりのよろこび

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日本の伝統的な香りについていろいろコラムを書いています。
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#日本文化

夢中になるということ

夢中になるということ

夢中になるものはありますか?

私は30年くらい香道に夢中です。毎回、毎月新しいことに出会えるのが楽しくてなりません。よく考えると30年毎月新しい学びを感じる、というのはなかなかあるものではないのではと思います。香道では組香といういくつかの種類(匂いが少し違う)香木を用意し、テーマに合わせて打ちまぜてたくことでそのテーマをよりよく表現する遊びがあります。組香に参加してお香を聞いている時間、私はいつ

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今こそ平安貴族の薫物(たきもの)をおススメする理由

今こそ平安貴族の薫物(たきもの)をおススメする理由

「お香って初めて知りました。どういうものですか?」
ということをしばしば聞かれます。そして、「話を聞いたらすごく良かったです。だからアロマを生活に取り入れました!ありがとうございました!!」と言っていただいて、ちょっと複雑な気分になります。お香の良さが伝わる嬉しさ、そして、手軽に取り入れづらい難しさ。まだまだ現代の日本人にとってアロマよりはるかに高い壁をお香について感じている人が多いのだなあ、と思

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日本初の推し活

日本初の推し活

「源氏物語が読みたい」と1000年前に等身大の薬師仏を作らせて、一日中一心不乱に祈っていた女の子がいます。菅原孝標娘です。

沼にはまった女の子父親の仕事の都合により東国で暮らすことになった菅原孝標娘さんは、義母から聞く宮仕えのキラキラした話、とりわけ当時大人気だった『源氏物語』の話を聞いて即のめりこみました。日本史上初の沼にはまった、という人で有名です。寝ても覚めても源氏物語のことばかり。当時は

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さざれ石の香りが忘れられないとそのひとは言った

さざれ石の香りが忘れられないとそのひとは言った

「さざれ石の香りが忘れられない」と初めて香を聞いた男性は言いました。
パリのとある美術館にしつらえられた香席でのことです。私たちはここで香道をするために招かれて来ていました。ちなみにさざれ石というのは当日行われた渚香、という組香で使用した香木の銘(名前)のことです。

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香りはひとの記憶を刺激する

香りはひとの記憶を刺激する

夕方、仕事の帰り道にどこからともなくカレーの匂いが漂ってきました。
夕方のカレーは小学生の頃のことを思い出します。あのころはなんにも考えず、夕方になるまで思いっきり遊んでいたなあ。一日が長かった。家に帰るときにカレーの匂いがすると、うれしくなって走って帰ったものだなあ。

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