クリエイター集合☆著作権★合同座談会お茶会★「これって、どう思う?」 開催レポート
こんにちは。名古屋の弁護士、「知的財産権」科目の大学講師や、著作権マンガの監修、著作権ボードゲームの創作も行っている、鈴木恵美です。
大学の講義や講演などで、しばしばお話することは、交通ルールはみな知っているのに、赤信号に遭遇するよりも沢山触れているインターネットに関わる著作権のルールは、ほとんどの人が知らない、ということです。
そんな状況は、創作する人にも、これを楽しむ人にも、心地よい状態とはいえないのではないかと感じています。そこで、著作権の世界観が、みなのためになる、身近に感じてもらえる道具として、ゲームや漫画を考案することに挑戦してきました。クリエイターも、その作品を楽しむ私たちも、著作権を知りたくないわけではなく、知りたくてもその術や機会がないだけだと思うからです。
「2020年代の必須科目30」として、雑誌WIRED36号に、「ボードゲーム学」の記事が掲載されているのをみて、ますます、著作権ゲームfun©’s treeを、多くの人に知っていただけたらなという気持ちになりました。
情報は、すぐそばにあるけど、沢山ありすぎて、
自分に合うものをタイムリーに選び取ることは、簡単ではありません。情報が増えるほど、触れに行くことすら困難であるともいえます。そこで、私が担当している大学の講義が春休みの間に、大人クリエイター版著作権ゼミ(座談会)を企画してみたい、と思い立ちました。
先ほどご紹介した雑誌WIREDでも連載をされている水野先生は、このように述べておられます。
「野球やサッカーのルールを知らないでプレーする人は(ほとんど)いないように、自分がいる分野を司る法律や契約の最低限の知識を身につけることすら忌避しようとするのは、単に無知か怠惰なのだと思います。起業家の会社法や投資契約しかり、クリエイターの著作権や業務委託契約しかり。」
(水野祐 CITY LIGHTS LAW@TasukuMizuno)Twitterより
私は、法律の世界は、どこかフィギュアスケートのようだと例えることもあります。フィギュアスケートのプログラムをどう設計するかは、どのジャンプが何点か、これを意識して決められているでしょう。そして、しっかりと着地し、評点が満点となるかは、ジャッジの解釈に委ねられています。この試合が、ゲームが、世界が、どのようなルールでなされているかを知ることは、特にそのエリアで活躍する人のための出発点であり、みながルールに違和感を持てば、それを変更すればよい。法律も、スポーツのルールも、時代に合わせて変化しています。また、そのルールの中でどのようにするか、を考えるのも面白いといえます。
大人クリエイター版著作権ゼミ(座談会)を企画し、以下のようなビジョンと想いで、告知したところ、ほどなくして定員になり、嬉しかったです。
フラワーアーティスト、カメラマン、建築デザイナー、現代アーティスト、ウォルドルフ人形作家。多種多様な名古屋のクリエイターが集まり、著作権座談会を開くことができました。
しかも、座談会の場所は、参加してくださったクリエイターの一人がデザインされたカフェで、みなのテンションも上がりました。
★ ビジョン
クリエイターが直面した著作権に関するもやもやを気軽に語り合う場を作ることで著作権への心理的、物理的、距離をぐっと縮める。
著作物を生み出し楽しむ循環の中で生まれるギザギザを、加速する氷のように溶かし繋ぐ。
key word きっかけの理解と縁を切り拓く
☆ 得られるもの
著作権についてもやもやしたときにどの事例が自分に合うのか分かる。
どの法律の定めが何を指しているか分かる。
もやもやしたときに自分が気になることの表現の仕方、伝え方、契約書や規約の作り方が感じ取れる。
仲間。作り手と受け手との良い関係、コミュニケーションのあり方としての契約づくり。
【開催レポート】
当日シェアされた、クリエイターもやもやを、ここに少しご紹介します。話題は、著作権だけでなく、契約、そのほかの権利の問題にも渡りました。
★ 真似されたくないけれど、沢山の人に知って欲しい。(SNSなどにどこまで写真を掲載するか。展示会に来てくださった人に、どこまで写真撮影や投稿を許可するか。)
★ 一定のライセンスを経た人のみが使える技術、商標のもとに作品を製作しているのに、非ライセンス者による作品にもロゴ等が無断で使われている。
★ 注文者からの依頼を細かく確認のうえ製作を進めても、完成品を見せた際、こんなはずではなかった!と言われることがよくある。
★ 契約書では、著作権は注文主に帰属する、人格権は不行使とする、とあるが、後から、自分の個展などで使用するときは逐一尋ねれば何とかなるでしょうか。
★ 作品をみるひとの動作が重なって完成するという作品の場合に、作品をみる不特定多数の人の権利に配慮する必要はあるのでしょうか。
それぞれの活躍するフィールドは異なるものの、みなに共通する悩みや示唆があり、充実した座談会となりました。これらの疑問に対する私のコメントやアドバイスなど、この続きは、noteか、私のweb【知的財産権の森】にて紹介できたらと思っています。
【後日談】座談会は、初対面のクリエイターばかりでした。しかし、座談会後、それぞれの作品に互いに興味を持ち、早速、観に行こうとされる素敵な関係に繋がっていました。また、馴染みのない著作権を語る場の第1回を、「楽しかった」、と言ってくださるクリエイター、「勉強になった、みんなの話を聞いて頭がぐるぐるした」、と話してくださったクリエイタ―、「表現の自由についても知りたい」と言ってくださるクリエイターもいました。
何か大切なエッセンスに触れると、文字通り雫から面に広がる、次の行動が生まれる、次の知りたいが生まれる、一歩ずつ双六のマスが増えていくように、いつのまにか自分の世界の一部になる、そんな感想を持ちました。エッセンスを知らないと、調べること、探すこともできません。(一歩ずつ双六のマスが増えていくゲームは、実在します!)
とはいえ、クリエイターひとりひとりが声をあげて、煩雑な契約、交渉に勇気の一歩を踏み出すのは、簡単なことではないと思います。だからこそ、みなが著作権のエッセンスを知り、みなが共有できること、が大切だと感じています。
私からのフィードバックだけでなく、クリエイター同士が集える、話せる、リアルの場や繋がりは貴重だなと感じました。今回の座談会は、私以外みな初対面でしたが、集まってすぐ、ほんの1時間半程度で、かなり盛り上がりました(私の感想ですが・・・)。知的財産権がより身近になるきっかけとなっていますように。また、どこかで、名古屋だけではなく、日本や世界中つないだりもして、開催できたらいいなと思っています!名古屋で開催するなら、次は、著作権モーニングもいいなと思っています。
著作権ゲームのデザイン、ルール原案、意匠、すべてを、あまりクリエイティブでない私が担当しています。 noteの手描きイラスト画像も自作ですが、いつかデザイン面など、プロの方にお願いできたらいいな、と考えています。 応援いただけたら嬉しいです!