見出し画像

デジタル教育の新潮流 : 教育者の視点から見る ICT の力

ICT の急速な発展が、教育界にも大きな変革をもたらしています。そして ICT を巧みに活用することで、児童生徒たちの学びをより魅力的かつ効果的なものにしています。

株式会社エデュテクノロジーでは、学校を訪問させていただき、授業見学や先生へのインタビューを通じて、ICT を活用した学びの現在地を知り、これからの学びについて考える機会を設けたいと考えました。初回となる第一回は、埼玉県立川口高等学校 伊藤 博之先生の授業実践等をご紹介します。

伊藤先生のご専門は国語で、今回2年生の授業「山月記」を拝見させていただきました。

「山月記」は、高名な詩人になるという夢にやぶれ、虎へと化けてしまった李徴(りちょう)という男が、その業を友人の袁傪(えんさん)に語るというもの。
今回見学させていただきました授業は、期末テスト直前の最後の授業、物語の終盤「なぜ李徴が虎になってしまったのか」についての内容でした。

授業展開は、前時の振り返りをプレゼン資料を用いながら解説していきます。そのとき、生徒は教科書、ノート、プリントに気づいたことなどを記入していきます。

ここで配布されているプリントは、これまでの授業において生徒個々が答えた内容を踏まえて、個々のプリントの内容が異なるというものだそうです。詳しくは後ほどお伝えしますが、ICT を活用した授業だからこそ実現できる教材であると思います。

本時の教育活動では、プレゼン資料も用いながらの解説、教科書の音読等が取り組まれていました。

授業後半は、Kahoot※ を用いて、授業内容に関する問いを出題し、2〜3 名を1グループとして、その問いに回答します。回答は黒板に投影され、その内容を確認しながら回答内容に対する根拠や考え方について意見交換や情報の整理を行っていました。
Kahoot:学校などの教育機関で教育工学として用いられる教育用ゲームのプラットフォーム


教育活動において ICT を日常的に活用することが当たり前という認識が広がり、活用することが目的化していることが問題視されています。

学習のねらい、教育効果といった学びを視点とした ICT 活用の重要性が指摘される中で、今回、見学させていただいた授業による ICT の活用場面は、プロジェクタによる投影、アプリケーションを用いたグループ活動と授業時間全体の割合からすれば少ないものの、生徒に理解してほしい内容を効果的に学ぶことができる ICT 活用となっていました。

伊藤先生に、授業における ICT 活用に関するお考えをいくつか聞いてみました!

Q:授業で ICT を活用することは、学びにおいてどのような意味があるとお考えですか?

A:ICT 活用によって、1つは「学習の個別化」、もう1つは「間違いに気づき学ぶ機会を得ること」だと思います。授業における ICT 活用は、1対多数の環境で生徒の学びを個別にサポートする有益な手段となります。生徒個々の視点で ICT を活用することで、より効果的な学習が可能となります。
そうした中で、多くの生徒が正解を求める傾向が見られますが、私は生徒たちが間違うことに価値があると考えていて、正誤に拘らず既有知識を用いて自分の答えを導き出すことが学びにおいて重要であると思います。間違いから学びを得ることは、成長や理解を深める上で重要な要素です。また、ICT を活用することで、生徒たちの個々のニーズに応じたカスタマイズされた学習が実現でき、間違いを起点としてより深い学びが促進されます。教育の現場において、ICT の積極的な活用は学習の質を向上させるための有力な道具であると考えます。

Q:「生徒の学習を促進する ICT 活用のポイント」を教えてください。

A:ICT を活用する上でのポイントは大きく3つあると考えています。
1つ目は「生徒個々の把握」です。ICT ツールを使って生徒たちの学習データを収集・分析することで、個々の進捗状況を把握することができます。
2つ目は「生徒のアウトプットの支援」です。「知識・技能」を問う問題は、記名制で答えさせ、既有知識に基づいた個々の学力を、また「思考・判断・表現」を問う問題については、匿名性を担保して間違っても構わない環境を提供し、自由に意見を発言してもらっています。
3つ目は「データ利活用した学びへの展開」です。2つ目にあります「知識・技能」を問う問題の解答は、個々の学習プリントとして活用します。これにより、生徒たち自身が自分の成長を振り返り、自己評価を行う機会を提供することができます。また、「思考・判断・表現」を問う問題の解答は、他の生徒の意見との交流する機会を提供することができます。
ICT の活用は、生徒の学習においてより多角的なアプローチを可能にし、自己学習と共同学習の両方を支援することができます。

Q:スライド作成や、スライドを活用する上でのポイントを教えてください。

A:スライド作成で心がけていることは、文字を大きくし、必要な情報を精査し多く書かない、また、ポイントを絞るということです。国語なので縦書きにこだわりたいところもありますが、文章が書ききれないところもあり、横書きにしています。実際に授業を行う際には、スライドの内容を板書することを伝えてはいません。スライドを見て自分で判断し、自分自身が取り組む内容はスライドを見るだけで分かるようにしています。スライドは配布せず、動画でスライドの授業の解説部分だけを別撮りして提供しているので、多くの生徒は、その動画を見て学習しています。


他にも、スライドに用いられている挿絵(イラスト)は、ご自身で描かれているものを多く用いられていることや、ICT を活用する中での教科書の位置づけについて「教科書が学びの起点(教科書をきっかけとして、どれだけ学びを広げられるか)」であることなど、様々なお考えを伺うことができました。

伊藤先生の ICT 活用に関するお考え、またその教育活動は、まさに生徒の学びの視点であり、改めてその重要性を認識させて頂く機会となりました。

第2弾は、別の学校、先生の「教育者の視点から見る ICT の力」をお届けしたいと思います。ご期待ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?