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思いやりや優しさは「善」だけど、人助けする前に気にかけて欲しいあれこれ

自分のミスで
周囲の人に迷惑をかけてしまった・・。
授業が全然うまくいかなかった・・。
よかれと思ってしたことが
空回りして
生徒に不快な思いをさせてしまった・・。

仕事・人間関係がうまくいかず、
気持ちも凹んでしまい、
なんとなく孤独な思いを抱えながら、
人気(ひとけ)の少ない職員室で、
夜遅くまで仕事をしていると、

おつかれさま!
これ、どうぞ!!

といってお菓子の差し入れとか
もらったりすることがあります。
こういうときって、
嬉しいですよね。

言葉数は決して多くないのだけど、
気遣ってくれていることが
態度ではっきりわかると
嬉しいやら、気恥ずかしいやら。

何年経っても忘れられなかったりするほど
ありがたいものです。
そういう先輩方・同僚のご好意で
今の自分があるなあ、としみじみ思います。


だけど、
これ、
逆の立場になったときに
少しだけ注意してもらいたいんです。

というのも、
仕事で失敗したり、
思い通りにいかなくて
凹んでいる後輩や生徒に対して、

私たちは、
ついつい何かをしてあげたくなる。
言葉でも、モノでもいい、
気にかけているよーー、という
気持ちをなんらかの形で表現したいんですね。

特に「教師」という仕事を
職業に選ぶような方は、
基本的に、
思いやりや共感力が高く、
相手の心の痛みや苦しみを
敏感に察知するアンテナが高いですから、
(たまにアンテナの全くない方も見かけますが 苦笑)

自分の領域内で、
明らかに落ち込んでいる姿を見かけると、
放っておけなくなるタイプなんですよね。

もちろん、
自分に「余裕」があるときならいい。
「余裕」というのは、
心の余裕でもあるし、
体力、気力、
時間的なゆとり、
金銭的な蓄えを
さすのですが、
そういう諸々に余裕がある状態なら、
苦しんでいる人を助けようとすることは
全然問題ないんです。

でも、
自分に「余裕」がないときに、
苦しんでいる人を放っておけなくて
手助けしようとすると、
共倒れする可能性が非常に高くなるので
要注意。

動機が「やさしさ」であり、
教師として至極当然のふるまいですから、
「やめろ」ということに
今まで抵抗があったのですが、
近年、あまりに共倒れするケースを見てきたので、

自分に余裕がないうちは、
まず自分を大切にしよう

と言うようになりました。


シャンパンタワーの法則という言い方もありますが、

他人を満たす前には、
まず自分を満たしておくことが
「義務」(やらねばならぬこと)なんですね。

その順番を間違えて、
満たされていない自分を、
満たされていない人のために差し出すと、
お互い、不幸になるだけで、
動機が「善」だけに、
不憫さが増すばかりになります。
絶対、やめたほうがいい。

心理家 河合隼雄さんと
小説家 村上春樹さんの対談本に
オウム真理教 麻原彰晃に言及する
以下のようなやり取りがありました。

村上春樹 
たとえば、麻原彰晃という人はその善悪の「基準線」という意味においてはかなり病んでいる人ではないかとぼくは思うのですが、ああいう人は治癒される可能性というのはあるんでしょうか?

河合隼雄
それは会う人によるでしょうね。
しかし、結局は、まあ、言ってみれば器の勝負みたいなもので、彼よりもぼくが大きい器を持っていたら彼に会えるし、彼の器が大きかったらもうだめですね。だから、ほんとうに人間と人間の勝負です。それはもう不思議なことに、6歳の子でも、ぼくより器が大きかったらこっちは負けるわけです。

河合隼雄さんは、
ユング心理学を日本に広めて、
今のスクールカウンセラーの制度を整備した
カウンセリングの始祖ともいえる方です。

その人が、
病んでいる人を
治癒できるか否かを

人間と人間の『勝負』

と捉えているのが
実に興味深くて、
僕は、生徒や同僚が
病んで(苦しんで)いる姿を見る時、
いつも、
この「勝負」を
意識しています。

負け戦はしません。
「これは(今の自分では)ムリだ」と
思えば、即撤退します。
若いころは、
逃げるを「恥」と思った時期もありましたが、
それは思い上がりに過ぎませんでした。
自分には自分が助けられるだけの
キャパシティーしかないのです。

逃げっぱなしで終わらせず、
後援を頼んで後日、
戦を挑むときもありますし、
撤退したまま
静観せざるをえないときもあります。
実際は、静観が多いかもしれません。

もちろん、
勝てる戦であれば、
もう先陣切って勇み足で、
その人のもとに行きますね!

戦の経験値が高まれば高まるほど、
勝ちパターンも身についていきますから、
あとは常に自分に「余裕」を蓄えておいて、
いざというとき、出陣です。

とにかく、
「無理」「無茶」はしてはいけない。
どんなに動機が「善」で「正しく」ても、
負けて討ち死にだけは避けるべきです。

今年度、
自分の所属する学校現場でも
2人の先生が休職(病休)中。
どちらも心理的な要因です。

今、学校現場は、
一言で
人手不足です。
1人1人に「余裕」がありません。

だからこそ、
困っている人、悩んでいる人を
助けることは素敵なことだけど、

くれぐれも注意してね

ということを伝えたくて、
今コラムを書きました。

ちなみに、
心に余裕があるかどうかを測る基準があります。

それは、

〇〇してあげたのに!!!

というネガティブな気持ちが湧き上がるなら、
今のあなたには「余裕」がないかもしれません。

〇〇してあげることに、
一切の見返りを求めず、
自分がしたいからやっている
という心持ちであれば
「余裕」があるので、
自分を削ることはないと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
これを読んでくださったあなたの
少しでもお役に立てたら嬉しいです。

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