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「やさしさの正体」とはなにか科学的に分析してみた

世界的に有名な心理学者、C.G.ユングは言った。

人と人とのつながり方には、思考、感情、感覚、直感の4つがあると。

このうち目に見えるモノは「思考(=論理)」だけ。

もっと人とつながりたければ、想像力を研ぎ澄ませたり、時に共感したりしないと相手の本当の気持ちは見えてこない。

だから、至極あいまいな「やさしさ」をムリヤリ他の言葉で言いかえるとしたら。

想像力と共感力を手のひらにのせて、おだんごみたいに丸めたものだとわたしは思う。


目に見えるモノしか見ない人の正体


突然上司に、会議室へと呼ばれた。

「なんかさ、枝豆さんの目標設定の書き方が他のみんなとちょっと違ってるんだ」

「…はい」

「評価しずらくて…変えてもらっていい?」

「…えっとどんな風に…?」

「みんなは〇〇なので、同じように〇〇で…こっちも同じように△△で」

「…(え?)」

もうそんなの、わたしの目標じゃない。

みんなのそれと同じようにキレイに型抜きされた文章のかたまりなんて、心の中にとどまり続ける目標になるわけがない。

別に何か不都合が出てしまうなら、周りにあわせたいと思う。あわせたいとは思うけど、にしてももう少し部下に対して納得しやすい言葉に翻訳できなかったのだろうか。

「評価しずらくて」なんて。

わたしがこの言葉を言われた後にどう思うか、一度でも想像力を働かせる努力をしたのだろうか。

「この人は自分の管理能力のなさを棚に上げて、部下のモチベーションを上げることよりも、自分の仕事の効率化を優先する人なんだな」

明日も明後日も、わたしはこの人の顔を見るたびにこう思ったことを反芻してしまう。信頼できない。

そうなってしまわないかと、一度でも考えてみたのだろうか。

目に見えるモノしか見ない人は、やさしくない。

やさしくない人は、信頼されない。

「やさしさ」は目に見えない


目にみえるモノしか見ない人は、たくさんいる。

別にそれ自体は悪いことじゃない。

100%客観:0%主観の人間なんて存在しないし、わたしだって、目の前にいる人が見ている世界が100%くっきりはっきり見えるなんて、そんな横暴なこと思っていない。

そんなのは自分の体から魂が飛び出て、目の前にいる人の体の中にもぐりこみ、魂をのっとらないかぎりはムリなはなしだ。

でも、だとしても透過率の調整ダイアルを50%ぐらいまで上げて、あとは想像力と共感力でどうにかする努力ぐらいはしなくちゃと、常日頃から思ってる。

だってそれが、「やさしさ」の正体だと思うから。

現代人が直面している危機の正体


金沢大学の論文によると、子どもたちの想像力は低下している。

1)形象をイメージ化できない子どもたちの増加
2)「僕は何をすればよいですか」という質問の増加

(中略)
例えば、二年生の「お手紙」の授業において「がまくんはこのとき、どんな気分なのかな。」という先生の問いかけに、首をかしげてばかりの子どもがいる。
(中略)
また、「それをやったらどうなるか」が想像できない子どもも多い。校舎の二階から机を投げ落としたらどうなるか。コンビニエンスストアの前に大人数で座り込んでいたらどうなのか。

引用:子どものコミュニケーション不全と想像力の低下|金沢大学

さらにアメリカの研究によると、大学生の共感力も落ちている。

アメリカのミシガン大学で行われた14,000人以上の大学生を対象にした調査によると、2000年以降に入学した大学生の共感レベルは、それ以前の大学生に比べて40%も減少している。

・若者は子供の頃に自由に遊ぶ機会が少なく、年長者ほど他の子供たちと知り合ったり、彼らを気遣ったりすることを学ばなかった。
・「自分のやりたいことをやれ」という個人主義感覚が今日の若者の共感力の欠如の一因となっているのかもしれない。
・共感を育むには、まず相互依存の価値を理解する必要がある

引用:Empathy Dropped 40% in College Students Since 2000

人間の頭の中には、神経細胞「ミラーニューロン」が存在する。

ミラーニューロンは他人の行動をみて、自分が行動したかのように脳内で模倣することができる大事な機能で、その結果「相手がどう感じているか」を推測できる。

推測することができれば、自分自身の危険を回避し、生存率を上げることができる。

むやみやたらに命が狙われることはなくなった現代で、どんどん人のやさしさが失われている。

その理由は、親子や友人とのコミュニケーション不足であるというのがますますこわい。

人は人とのコミュニケーションの中でしか、やさしさを育てることができない。

***

かつて頭痛薬「バファリン」のCMにこんなコピーが使われていた。

「バファリンの半分はやさしさで出来ている」

バファリンのやさしさの正体は、合成ヒドロタルサイトだ。

【バファリンの成分表】
・アセチルサリチル酸(アスピリン)…330mg
・合成ヒドロタルサイト(ダイバッファーHT)…100mg

引用:一般用医薬品 : バファリンA

胃を荒らしてしまうアセチルサリチル酸を、胃の粘膜を保護する合成ヒドロタルサイトと一緒に服用するだけで、バファリンはやさしくなる。

人間のやさしさも合成ヒドロタルサイトみたいに目にみえたらいいのに。

やさしさが減っている。これは人類共通の危機だ。

そしてさらにこの危機は、目に見えるモノしか見ない人には気がついてもらえないという二重の危機に、今、わたしたちは直面している。

せめて、自分は、目の前の人の体に魂をワープさせる努力をしたい。それが、とりあえず今わたしができる、人類の危機に抗うことだと思うから。



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