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ムーミン谷のスナフキンはなぜ「男」じゃないといけなかったのか?
孤独を愛する旅人「スナフキン」。
フィンランドの女流作家「トーベ・ヤンソン」の「ムーミン・シリーズ」に登場する、人気キャラクターのひとりだ。
存在を認識したのは子どもの時だが、好きになったのは大人になってから。
好きと言っても、愛とか、恋とか、ファンとか、推しとかとは、ちょっと違う。
自分の行動や考え方の模範となる人物のことを「ロールモデル」と呼ぶが、若干それに近い。
スナフキンが女性だったら、もっとロールモデル味が増したのに。
ムーミン谷のスナフキンはなぜ「男性」だったのか。作者である「トーベ・ヤンソン」の気持ちを思うと、そこには納得の理由があった。
恋愛小説になってしまうから
フィンランドの女流作家「トーベ・ヤンソン」のムーミンの物語は、1945年に児童小説としてはじまった。
エンタメ作品は、時代を少なからず投影する。
子どものころは、ムーミンの世界が少しこわかった。色合いとか、リズムとか。多少不穏な空気をまとって見えるのは、戦争中に描かれた物語であることにも関係している。
スウェーデンの児童文学史を語るとき、忘れてはならない1945 年という年があります。1945年は第二次世界大戦が終わった年です。
この年は、同じく有名なスウェーデンの絵本「長くつ下のピッピ」も初めて出た年で、スウェーデン児童文学の黄金時代のはじまりだと言われている。
実は、最初の物語にスナフキンは出てこない。
***
スナフキンの初登場は1946年、小説「ムーミン谷の彗星」だ。
ここでムーミンは、のちにガールフレンドになるフローレンやリトルミィ、スナフキンとはじめて出会う。
この「ムーミン谷の彗星」での出会いは、とにかく女の子が多い。
仮にスナフキンも女の子だったとすると、ムーミン谷の主要人物が女の子だらけになってしまう。さらに言えば、ムーミンとスナフキンはのちに親友になるぐらい気が合う。
もし女の子だとしたら、ムーミン谷の物語は恋愛小説になってしまうだろう。メインコンテンツはフローレンとの三角関係だ。
以前もこの記事で紹介したが、男の子同士として描かれている今でさえ、恋愛味がゼロではない。
スナフキンが女の子なら、もっとフローレンが入るスキがなくなってしまう。あまりよくない。
リトルミイと差別化しやすいから
もうひとり、スナフキンが女の子になると困るキャラクターがいる。
それが、リトルミイだ。
リトルミイとスナフキンもまた、似ている。二人とも毒舌。スナフキンが女の子だとしたら毒舌女が二人だ。
そもそも二人は異父兄弟なのをご存じだろうか。
リトルミイ:ミムラ夫人の娘(父親不明もしくは単為生殖でいない?)
スナフキン:ヨクサルとミムラ夫人の息子
二人の母親のミムラ夫人が実はナゾ多き人で、少なくとも36人の子どもがいる。
おおらかで豪快なのはいいが、自分の子どもであるリトルミイをムーミンの家に置いて帰るところをみると、ドジという言葉では片づけられない違和感がある。
単なる育児放棄にも見えるが、決めつけはよくない。ミムラ族は人間ではないからだ。
ミムラ族は、単為生殖ができるという説がある。
単為生殖=メスだけでも子を残せること
それが事実であれば、ほぼ同じ顔の子ども達がたくさんいるのも、自分の子の存在を忘れてしまうのも、女の子しか生まれないのも、まぁ、納得できる。
そもそも「ミムラ夫人」という名前もちょっと変だ。
ミムラという種族の母(=種族の源)という位置づけの存在なのであれば人間の母とはわけが違う。
そこでますます不思議なのは、スナフキン。
ミムラ族関係者としては、父親がいる時点でかなり異端だ。
その個性をさらに際立たせるためには、たしかにスナフキンは男の子のほうがわかりやすい。
モデルのアトス・ヴィルタネンが男性だから
スナフキンは、実在の人物がモデルだと言われている。
それが、ムーミンの物語の作者であるトーベ・ヤンソンと恋愛関係にあったアトス・ヴィルタネンだ。
彼は政治家であり、作家であり、哲学者であり、ジャーナリストでもあった才能あふれる人で、一度も洗った痕跡のない古ぼけた帽子をかぶっていたという。
![](https://assets.st-note.com/img/1721026466706-JlOtsvfoQt.png?width=1200)
トーベ・ヤンソンは、実際に自分の周りにいる人物を物語に登場させることが多かった。
スナフキン:アトス・ヴィルタネン
トフスランとビフスラン:トーベ・ヤンソンとヴィヴィカ・バンドラー
トゥーティッキ:トゥーリッキ・ピエティラ
離れることができない2人組として描かれたトフスランとビフスランのモデルは、当時付き合っていた舞台演出家のヴィヴィカとトーベ・ヤンソンの2人だと言われている。
現実世界では、トーベとヴィヴィカは激しく燃え上がった数週間が終わったのちは恋愛関係を続けることはできませんでした。ヴィヴィカは夫と別れるつもりがなく、後には他にたくさんの女性の恋人がいたことも判明しました。トーベはひどく傷つきましたが、やがて二人は生涯にわたって深い信頼で結ばれた友人となります。
ムーミンのお話の中のトフスランとビフスランの性別は明確にされていない。どちらもスウェーデンでは女性の愛称として使われやすい名前なのだそうだ。
また、トゥーティッキのモデルは、のちに生涯のパートナーとなったアーティストのトゥーリッキ・ピエティラ。
トーベ・ヤンソンの晩年の作品には、トゥーリッキ・ピエティラが大きくかかわっている。
***
トーベ・ヤンソンは、実在する人物を自分の物語に登場させる時、性別を変えない。
そう考えると、やっぱりスナフキンは男性でしか登場しえなかったのかもしれない。
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