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星野源『そして生活はつづく』文春文庫を読んで。

星野源(2012)『そして生活はつづく』文春文庫、読了。

何気ない日常を創作者として懸命に生きてきた星野源の処女作。さえない少年だった彼が、いかにしてその才能を見出だされ、開花させてきたのかが垣間見えるエッセイである。「普通の人が」オブラートに包むところをことごとく包まない潔さと、下品さは彼の真骨頂なのだと思う。

彼の音楽を思うと、とても美しく、どこか親近感を覚えるが、その作品に通底する品性の裏には有象無象の「下品さ」が溢れており、それは活火山からマグマが吹き出るようなエネルギーを持っているように見える。

「「なにげない日常の中に素晴らしいものがある」どや顔でそんなことを言う人は苦手です。「なにげない日常」の中には「なにげない日常」しかない。素晴らしいものなんてない。その中から素晴らしさ、おもしろさを見いだすには、努力と根性がいります。黙ってても日常はおもしろくなってはくれない。見つめ直し、向き合って、物事を拡大し新しい解釈を加えて日常を改めて制作していかなきゃならない。毎日をおもしろくするのは自分自身だし、それをやるには必死にならなきゃ何の意味もない。(203頁より引用)」
という星野源の言葉には、創作者としての本気やプライドが滲む。私も大いに共感するものがある。この本の読者は、きっとおもしろく生きられる。そう思った。

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