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迫り来る人手不足の足音と、巨視的な視点でのキャリア形成

なんでAmazonで星4止まりなのか分からない。地に足のついた情報が詰まりまくっている名著ではないか。

私が特に興味惹かれたのは日本の労働市場において非ホワイトカラーの深刻な人手不足を論じた現状分析だ。以下に要点を記しておこう。

人口の減少に対し、衰退産業からの人材流出、女性の労働参加、高齢者の就業継続の3つの方法で凌いできた。

しかし、衰退産業からの人材流出は頭打ちとなり、女性は社会参画の質的な向上(総合職で出産後も働き続ける人の増加)を迎え、労働力として期待される前期高齢者は激減してゆく。

大卒人口の増加と女性の4年生大学進学率向上により、男女トータルのホワイトカラー労働者はまだまだ潤沢なのに比べて、非ホワイトカラー労働者は絶望的な人材難が目の前まで迫っている。

パート労働者は「いくらでも換えのきく人材」という意識がどこかに漂っているが、それは大いなる勘違いとのこと。

実際、インバウンド需要が戻る中で、宿屋はクリーニングを担当してくれる人間がいなくて満室にすることができていない。

なお、AIによる労働の代替についてもここ10年ほどは非現実的と切って捨てている。AIはあくまで知能の代替であって、AIだけでは物理的な行為が全くできないからだ。

物理的行為をするためにはロボットでないとダメだが、値段的に手が届かない。むしろ、AIによるナビゲーション機能を整え、外部から来た人材を即戦力に変えてゆく方針を採るべきと語っている。

これは私自身の肌感覚としても非常に納得がいく。

非正規やパート労働者を軽んじる人間は、人手不足を感じなくて済んだ恵まれた時代の面影を引きずっているということだ。

以前に非正規労働の方の事務仕事を見学する機会があったのだが、俗に定型業務といわれる仕事において、さまざまに機転をきかしながら仕事をしている様子に圧倒されたことがある。

この仕事が全社の中でどのような位置付けにあるのか、といった高尚な話は知らないにしても、顧客目線に立った気遣いレベルの高さは素晴らしいものがあった。

むしろ気遣いが凄すぎて、システムに落としこむのに四苦八苦するぐらいである。(条件分岐が増えて高くつき過ぎる)

なお、冒頭の本では外国籍労働者が日本に定着するまでのサイクルも解説されている。留学→就業→永住という外国人受け入れの流れはもはや引き返せないところまで来ている。

近いうちに、保険事務の世界にも飲食と同じように外国人労働者の波が押し寄せてくるだろう。

日本人同士での阿吽の呼吸による運営はもはや成り立たなくなる。前述のAIナビゲーターの開発と、それを用いた即戦力化の取り組みは待ったなしだ。

後書きにて著者は、教育関連、労働組合、職業訓練、社会保障などを「雇用総体」として一体のものと捉えている。

だからこそ、人手不足〜外国人労働者まで一本の筋道を通して語れるのだ。私もこんな風に大きな絵を描きながらキャリアや勉強を続けてゆきたいと思わされる本だった。

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