不在

重く暗い傍流系統の俳句を好み且つ作る人。宴と孤心ならば後者に徹する。

不在

重く暗い傍流系統の俳句を好み且つ作る人。宴と孤心ならば後者に徹する。

最近の記事

俳句

新歸朝のインタービューや百合懺悔 蜩時雨の真只中に裸身かな 鳥獣虫魚塒へ急ぐ夕立かな 麻薬者の骨の砕片夏の月 遠雷のしづかに空を裂きにけり サンダルをつっかけてゆく夏の火事 放火犯火事見の列にラムネ売る 片陰切れし塀の上なるコーヒー缶 大夕焼地球を潰すまで沈む 新郎新婦回し蹴られし片陰に 「職場=墓場」蝉吟じつつ落ち 人間は骨だけきれい蝉生まる 門前の桔梗を褒むる偽隠者 三人で見上げし虹をひとりかな 赤き服ぐったりと脱ぐ夕凪に 夕凪やまっくろくろ

    • 俳句

      玄関に壊れた傘がずっとある この男死ねば祝電送るべし 芋嵐赤児の頭部また凹ム 天神の白き血管いなびかり 辞めたのは四十一で水中花 新宿駅の人だらだらと瀧怒濤 蟻地獄もう出てこない救急車 俳句つくれぬ失語の間あり水中花 ほうぼうで人焼きつつも夏野かな 雷過ぎて悲歌朗々と夜の原 花火する全員没年未詳中 どちらから蛇に喰わすや右目・膣 無辜の声磨り潰されて蝉時雨 カンナ咲く嫌いなことがたくさんあり ミニトマト二、三個潰れのちダリア 夜の蟻走わが少年の脱

      • 俳句(いくつかの花火)

        犬殺し紫の血を黴の上 忍耐の果なる放火苔の花 夕涼み持ち合わせなき死後の顔 冷房下仕事押し付け合い時報 うるわしき乙女のイビキ冷房車 窓の向こう他界の花火炸裂す 命日かもしれぬ日を生き庭花火 水バケツひとり花火のあとの庭 大花火直下のたこ焼き屋が無人 真夏日や終日時計見続けて ブルーベリー楊子に刺してその変色 花火見る闇も美醜を裏切らず 一斉に口あけて見る大花火 大胆に花火呑み込む闇は闇 百合落つる位置の背表紙禁書室 きれいな石窓辺に置いて遠花火

        • 俳句(EXIT!)

          ソーダ水夢の国にも非常口 達筆の「打倒老害」七夕竹 聖遺物イエスの陰茎十三個 ホトトギス邪馬台国はこちらから 知事室に張られたガラス閑古鳥 海に触れぬ縊死者の足や遠花火 横たわる裸婦の隣の人面魚 わが裡の百年続く蝉時雨 鬱屈がすきな山百合散りはてぬ ラムネ掲ぐ一途に死ぬる気泡群 河童忌や黒子の毛ならとっておく 夕立後蚊取線香やはらかし 総理今月二度目の理髪雲の峰 三月三十二日と暦万愚節 華麗な馬齢眉間に皺や汗留む 朝帰り祭をすべて口実に 遠雷に

          俳句(パリ祭)

          (俳人高山れおな氏は男性、大高翔氏は女性です。間違えると高浜虚子の亡霊に呪われます。ごめんなさい、ホントです。) れおな男大高おんな仏桑花 針山に上司の顔を刺繍せり パリ祭や貴族の首でジャグリング (龍馬はピストルで応戦したらしいのでたぶん龍馬の刀痕ではないが、まあそういうことにしておこう。) てかてかの龍馬刀痕寺田屋に 書店主は無口がよろし茅舎の忌 (ノウゼンカズラは非常に繁殖力が強く、放置しておくと藪枯らし以上のタチの悪さを発揮するので近年庭に植えた人が後悔する

          俳句(パリ祭)

          俳句(ルター落雷)

          雲の峰小鳥一匹垂らしけり 昼寝覚袖より顔を出しにけり 恋情やプール深部の大腿骨 ティッシュ箱すべての棚の右側に 林檎味の唾液を交わし成就せり 雨の蚯蚓舗装の真中へと進む よく扇ぐデブの汗から漂へる リアス式入口のパブ凌霄花 梅雨寒やパスタ全断面凝視 粛清や駄女に喰はせる竹煮草 荒法師斬死喉笛へと蚯蚓 荒法師梅雨の館に拷死せり 表現の自由の裸みすぼらし 夏館サロメの首は縁側に 猫の目の虚ろやルター落雷せり 雨後の道バスに轢かれし枯蚯蚓 メニューに

          俳句(ルター落雷)

          俳句(鏡の我)

          全身鏡下腹部位置のこすり痕 退屈な蛇のようなるコード無数 目を合わさず鏡の我とさえも夏 通過せりけふは祭の駐車場 十年後のバイト店舗や草いきれ 夏館幼女の肉になにを盛らむ (1945年4月末、ミラノ近郊) 給油所にムッソリーニの逆さ吊り 百合萎れゆく青年の笑声に 一人席の灯火は淡し夜の蟬 押し倒す梅雨の閲覧室五階 (前安芸高田市長、前東京都知事選候補者) 平伏を迫る叱声藪枯らし 血管の隆起へ蚊針深きかな 此度の洪水にノアは指名されず 索引のなき大冊や

          俳句(鏡の我)

          俳句

          メトロノーム百合の奥から胎児出る 鎖骨に汗乳首はみんな二つずつ 破綻国家の首都なる氷丸かじり 身を晒す光もなくて野末の無 出水後の静脈の川剃刀歯 逆光の百合散りゆくや黒猫に ずっとお下げで白髪になるや流し雛 黒は残る炎昼の古看板に 西瓜畑の繁りに誰を隠すかな 見事な棒に見えし死体と添い寝せり 揚羽蝶屋根まで飛んでまだ消えず 処刑場氷売りつつ宮澤氏 叫声男児落雷須臾に無となりぬ 旧バイト跡地に氷菓抛るなり わが裸体美しくなる汗のいろ 前の人のレシー

          俳句(汗)

          この瞬間の全少年の汗飲んで死ね えェゐっトやンメぇ人事課長爆殺 鬼百合や殺意時には清々し 日傘持たぬ手を傘の外に振り歩く わが排尿光景「流す」ボタンの銀色に 蚯蚓木乃伊の脇通り過ぐ四回目 退屈な封書のつひに折られたし 失禁と貼られし椅子や梅雨曇 特大のごきぶりなるは上司かな ごきぶりホイホイの中にて道を啓きけり 夏空や十五の手紙開封す 過失致生の産声響く雲の峰 厭離穢土にまた産声や鬼薊 六角形の魂置かれ金曜日

          俳句

          斬首以前山百合斬首以後廃帝 日本滅ぶべし草刈れば草の死臭 たましひをオプションでつける鈍色の 亡霊は透明無臭夏の天 他者として寄り来る疲労冷奴 彼の頭上に蝿取りリボンあり職場 全自動失踪機売る夏館 夏の川恨の石塔雪崩れ込む 荒レ神が藁着て降りる夏野原 交わりつ蜂飛ぶ協和せざる羽音 二郎氏に常に眼鏡を連想せり 引っ越ーし引っ越ーし破れて久し夏布団 十薬の香の祝婚がそれぞれに 夜の蟻走君に不可逆なる天地

          俳句(黒板消し)

          いじめたくなる顔ばかり夏衣 雲の峰黒板消しばふばふ言わす 夏の夜のレーニン廟にゆきて眠れ 氷水ミイラは硬い方に賭け 玉石混淆ごまかす高度天の河 (よくある独裁国家の幹部集合写真、二句) 粛清者見事な壁に転生す 序列一位を焦点合わぬ笑みで囲む 過去として暦の残部流し目す クマのグミの鼻に楊枝を突き通す 大夕焼見ぬ人生をくべにけり 霊安室に争いなくて水中花 狗尾草黄変除草剤好調 直線も曲線も吹く青嵐 風媒花モノクロームの戦地にて 暑き古河のどこかに粕

          俳句(黒板消し)

          俳句(討ち入り)

          マイク並び居りジャコメッティ立像のごとく 接遇研修資料講師名左上に誰の指紋 また死刑囚増え夏空の暮れゆくか 中央に頭垢閉じ込めし汗の珠 汗の腕の毛の先にある頭垢 一粒 ごきぶりの二十九匹討ち入りに 感受性の専制君主即詩人 出産の窓になめくじずっと居る ゴミ箱の中みんなゴミ梅雨の肌 生え際を掻き分けてきて汗長し シャンプーの底おそろしき黴生まれ 万緑の中のアゴなら伸び初むる 半分キノコ半分彼だといふ証拠 カムパネルラ「ム」の発音を讓らざり ヒマ

          俳句(討ち入り)

          俳句(スターリン天国)

          赤児吸ふ乳首が眼玉となり睨む 渋滞全車屋根に生首こちら向く 今日未だ命日ならず蛇の殻 状差しの「キトク」を蟻の横切れる 蚊取り線香灰になるべったり折れ 鮮やかな死人の夏を充電す 世棄児の挽歌にゆらぐ天の河 扇風機二台回ってゐる空家 蜘蛛死後の白き身なれば風に乗せ 地獄のドアノブがスターリンの顔だった 大会議室ふんだんにある五月闇 椿落ちぬ片肌脱ぎの腋らへん 先天性不透明罪にて検挙 冷房つらし汗なく終はる交合に 再生の焼野に金の蛇を解く

          俳句(スターリン天国)

          俳句

          我が鬱に天動地動破砕せよ 半夏生米国製のグミを食ふ 箱庭の一葉も地震は許さざり 一寸の虫まず死ねりノーマット 四人家族トマト四体握り潰す 月紅く筆触強し熱帯夜 縊死の舌のすべて逆光五月闇 羽なき蝶無意味な日々を埋葬す 左右に踠き前進できず羽なき蝶 大胆な信号無視や梅雨曇 天の河星座としての轢死体 爪に頭垢地球に注ぐ天の河 人類を厭ふ高さの天の河 虫刺され二日痒くて蚊ではない 昼寝する隣で死んでいるけれど 昼寝終へし背は畳に咬まれたる 厭ふ人も死

          俳句

          亡国の予知なる白雨戦前や 雷雨過ぎて静寂いずれ軍靴来る 鼻糞に鼻毛ついてゐる 得感 腹見せし夢見の猫や遠花火 猫の毛のまとはり続け大雷雨 紙幣見本に斜線や骨をつまむ箸 護送車の女容疑者前を向く 藻流の女体は青き胎児抱く 水溜まりにステカンの檄反転す 無言なる母の扉を開ける音 ネコバスに消化されてサンダル片方 (「もしも宇宙が突如としてはしばみの実ほどの小さなものになったとしても、すべての物がそれに比例して小さくなったとしたら、われわれは何らその変化

          俳句

          折竹の暗きの底を出る蚊かな 夏雲に鳥たましいは真っ黒で 柿の幹より若葉蛇口として出るや 鴉朽ちて不可算になる分離かな 杏仁豆腐に射精して区別つかず 北半球無際限なる氷に虫 夏風に鼻毛散らして取り返せず 夏川の流れに沿ひて向き合ひぬ 竹林のN字の斜線やがて倒る 猫の毛の数千万の一飛びぬ 火の脱けし蚊遣ばらばらなる月夜 四千通の迷惑メール紅蜀葵 置き配を置く瞬間の秋思かな ヤマト運輸迷惑メール架空の荷物これにて六個 いま談笑せし人の陰口白雨降る 白雨