モラルとはいつ習得するのだろうか
エピソード 1
私は中 1 のとき、両親に理不尽に怒られたことがある。社会科のノートに書いた文言に関してだ。
「エスキモー: アザラシやオットセイを殺し、食肉または衣類にする連中」
厳密には上記ではないかもしれないが、重要なのは 「連中」 という 2 文字なのでここでは大きな問題ではない。
今でこそ 「連中」 という単語に、何か蔑むような意味があることは理解している。
ネットの辞書にも下記のように書いてある。
私は 「親しみを込めて言う」 の方しか認識していなかった。だから 「連中」 と呼ぶことに特に違和感を覚えていなかった。
社会のテスト勉強を母親に手伝ってもらっていた (ノート内から出題してもらう) ときにその文章を母親に見とがめられ、その場に居合わせた父親にもダブルで怒られた。
ちょっと待っていただきたい。
私は教師が黒板に書いたものをソックリそのまま転写しただけである。
「エスキモー: (中略) ~する人々」
と、教師が板書したものを私が 「悪意をもって」 ノートに 「連中」 と書き換えたというのだろうか。
もしそうだとしたら、何のために?
12 歳の少女 (?) が、遠い遠い国の、存在すら知らなかったような人達に、なんの恨みがあるというのだ。
当時の私にとって 「エスキモー」 といえば、アイスのブランドである。
「ビエネッタ」 という、当時からめちゃくちゃおいしいと思っていたアイスを出していたブランドだ。
↑ 余談だが高級アイス (500 円くらい) だった。イギリスのスーパーで比較的安価 (1.5 ポンド = 当時 230 円くらい) で売られていたのを見たときビックリした。
なぜエスキモーのビエネッタがイギリスに!
しかし元々イギリスで開発されたものだということで納得。
よく買って食べていた。ちなみにイギリスではハーゲンダッツのパイントも安い (2 ポンド程度)。
そもそも教師がなぜわざわざ (?) その単語を選んだのかは分らない。
若い世代に自分が教えることで、その人物の中に何を形成する (もしくはしてしまう) のか、という視点が充分にあったのかな、という疑問は残る。
それにしてもちょっとうちの親は 「その経緯」 を吟味せず、短絡的に怒る傾向があったため、怒られながら 「えー…… (-_-)」 と思っていた。
エピソード 2
私は 10 代の時、PC ショップでアルバイトをしていた。
主に時給がよい (当時の最低賃金 + 300 円) という理由で。
当時、パソコンはよく売れていた。ちょうど一般家庭にも徐々に浸透していくようになった頃である。
毎日毎日、「そんなにパソコンって売れるの!?」 と驚くくらい、飛ぶように売れて行った。
今でこそ 10 万円を切る PC も多くあるし、当時から自作 PC は安価でもできたが、基本的には 「20 万円/1 台」 が相場であった。
一般家庭にも普及し始めた頃だから、色んな人達が買いに来て、それぞれの家庭の懐事情もさまざまだった。
現金一括で買う人もいれば、ダイナースやアメックスで買っていく人もいる。
もちろん、カードの分割やリボ払いも対応していたし、カードを持っていない人はその場でローンを組むことができた。
あえなく、カードの審査がおりずに断念する人もいた。
一度、大学生がひとりで買いに来たことがある。現金一括では払えず、カードもないのでローンを組みたいとのことだった。
しかし、その人の場合は確か保証人が必要で、それは会社勤めをしている父親に頼むという話だった。
基本的には成人した本人の申し込みを受け、本人のみの審査で完了するため、ちょっとしたレア ケースだった。
通常は信販会社から申込者の勤務先に在籍確認の電話がいくのだが、当然当人が申し込んでいるのだからそれは承知の上だ。
しかし、このご子息はどうやら父親に保証人のことを話していなかったらしく、父親の会社に突然 (でもないんだけど) 信販会社から連絡がいったらしい。
しかもどうやらそのときに信販会社が、相手先の電話交換手に、自社の社名を言わずに何かお茶を濁すような言い方をしたとのことだった。
そのことで 「会社で変なウワサ (何か借金しているんじゃないか、とか) が立ってしまった」 と、その父親からなぜかうちの店にクレームが入った (というか私が電話を受けた)。
いや知らんがな~、という感じだが、仕方ないので話を聞いて謝罪し、一応信販会社にも伝えておいた。
まぁ、やり場のない怒りの矛先がたまたまウチだったということなのだろう。
接客業ではよくあるとばっちりである。
しかしそれを聞いて 「(同僚の人が) 怖いな~」 とも思ったし、「自分に人望がないからなのでは?」 と失礼ながらに思った。
このとき 10 代の私はまったくの無知であった。
エピソード 3
前の会社での話である。
そこそこ大きな企業だったため、「カマかけ」 の営業のような電話が、誰宛でもなくよくかかってきていた。
「あ~、えーっとお名前忘れちゃったんですけどー、30 代の独身の男性! 前にお話したことあるんですよ~!!」
などと言ってくる。
普通、電話をかけるのに相手の名前が分らないなどということが起こるだろうか?
答えは否である。
また、社用の個人携帯ではなく固定電話にかけてくる時点で 「話したい相手とそれほどの仲ではない」 ということも事実だろう。
しかも相手が30 代 & 独身であることは覚えていて、名前が分らないって何だろう。
そもそも取引先の人にそんな情報 (年齢・婚姻状況) 言うか?
名前すら忘れるほど過去のことなら、とっくに既婚 or 40 代になっているかもしれないではないか。
特定するには精度が低いし、相手の怪しさ 120% である。
多分本当に会社の代表番号のお姉様ならもっと厳しく 「それだけではお繋ぎできません!」 とおっしゃるのだろう。
※ 実は私も入社すぐの出勤前に困ったことが発生し、同じ課の人の携帯番号が分らなくて代表番号にかけたことがあるからだ。
かなり詳細にその人の部署名や氏名の漢字を知っていないと繋いでもらえない。
私にはそのお姉様のようなスキルもないし、繋ぐ気もないので 「相手が誰か!?」 探しには真摯に対応せず、テキトーに 「いやぁ、分らない or いないですねぇ」 といって流していた。
そもそも 「独身の」 で人探しって何だろう。
そんなもの入社したばかりの人間や、異動してきた人間が知っていることなのだろうか。
同僚の婚姻状況を把握しているのが普通なのか??
同じ課ならまだしも、違う課なら知らんのだ。結婚くらいは報告するかもしれないが、離婚した場合も逐一言うのかね?
そんな感じで、結構頻繁に同様の電話がかかってきていたようである。
あるとき別の課の女性が同様の電話を取ってしまい、(こちら側の) 相手が誰か分らなくて困っていたそうだ。
私はそこに居合わせなかったので、後から人伝に話を聞いた。
そこにベテラン女性が助け舟を出し、なんとか相手を見付けようとしたようだが見付からなかったそうだ。
多分、今回も誰宛でもなかったのだろう。
その職場は 20 代でも割と既婚の男性が多かった。だから 「独身男性」 というところがまず間違っている。
(独身男性に売りたい商品だったのかもしれないが)
そしてこのベテラン女性がほかの課の男性についてこう言ったのだ。
「きっと (電話の相手は) 〇〇 さんで、借金でもしてんじゃないの!」
なんというフラッシュ バックだろう。
エピソード 2 で間接的に聞いていた状況が、約 10 年越しに私の目の前で再現されたのだ。
しかもこの 〇〇 さんは既婚者であった (私は一緒に仕事をしたことがあるため知っていた)。
だからエピソード 2 とは異なり、まったくの濡れ衣である。
エピソード 2 は正直、そのご子息が一番の原因だと思っている。
そしてそういう状況 (保証人を立てる) になったら父親に一言いうこと、という教育は可能だったであろう。
これから賃貸で一人暮しするなどで保証人立てる必要もあったかもしれないし。
現代は保証会社にお金を払うが、まだ当時は保証人を立てるのが主流だったはずだ。
一応、そのベテラン女性に 〇〇 さんは独身ではないことを伝え、結果として 「おそらく誰宛でもないカマかけの電話」 であろうことは言っておいた。
しかし、〇〇 さんは非常に優秀かつ誰に対しても優しく、丁寧な方であった。
いくら知らないとはいえど、「借金でもしてんじゃないの!」 と言われてしまうとは。
「人望がないからそんなことを言われるのではないか」
とエピソード 2 で解釈した私は 100% 間違っていた m(_ _)m
悪意がなくてもそのように解釈し、口に出してしまう人はいるのだ。
エピソード 4
会社の飲み会って、何を話せば正解なのだろうか。
正直、私は飲み会で仕事の話は聞きたくない。
自分の時間とお金を遣って、なぜまだ仕事の話を聞いているのだ (^^;)
仕事を中心に形成されているメンバーで集まるため、ある程度は致し方ないと思っている。
それでもやはり 「そこにいない人の噂話」 を聞くのは気が進まない。
大抵 「本人が自分からは話したくない内容」 に終始するからだ。
誰それが離婚しそうだだの、誰それが会社を辞めたのはこんな理由だっただの。
そんなの 「口外してはいけないこと」 ではないのか?
精神を病んで休職の上辞めてしまった方もいた。
よく言われるように 「凄くいい人で真面目な人」 だった。
いい人ゆえ、人の上に足を載せることができない。
いい人ゆえ、理不尽なことがあっても反論も相談もせず一人で耐えてしまう。
その結果その人は壊れてしまった。
その人のことはさすがに 「面白おかしく」 話していたわけではないが、「口外されたくない事情」 を暴露してしまったら、同じ事ではないのか。
「上司」 という立場が自ら漏らしていいのか。
「黙っておく」 という優しさは、なくていいのか。
そしてその翌日のことである。
その日飲み会にいたメンバーが、飲酒でよく覚えていないのか、単純に私の影が薄かったからなのかは不明だが、
(後者かもしれない。なんせ 10 人もいなかったし)
その人が退社した理由
を私に詳しく話してきたのだ。
い、いや私も昨日その場にいましたよ (^^;)
とは言わず、「そうなんですか~」 と聞いていた。私がいたことを認識していない状態で今話しているのは確実だろう。ならば知らんふりして初耳のように聞いたってバレはしないだろう。
私がその内容を 「知らない」 と思って話しているのだろうから、「知ってますよ!」 とは言われたくないだろう。
外での私は、大抵どんな話でも 「そうなんですか~」 と聞いてしまう。
「絶対嘘でしょ!」 みたいな話でも。
反応を間違えると怒り出す人というのが一定数いるので、「触らぬ神に祟りなし」 が身に付いているのだ。
しかし内心は 「ええ~! もうそれ喋っちゃうの!? (^^;)」 とビックリしていた。
あまり雰囲気はよくなかったから、私も辞めるに至ったのだろう。
まとめ
エピソード 4 で、勇気をもって 「そんなこと言ったらいけないと思います」 と言わなかった私も、偉そうに言えた口ではない。
しかしモラルというものはいつ、どのようにして身に付けるのだろうか。
エピソード 1 で理不尽に怒られたが、両親が私に教えようとしていたことは
差別 (軽蔑) するな
である。
特に差別するつもりは今も昔もないが、両親が敏感に反応したせいで、私は 「連中」 という言葉を調べ、
「あぁ、だから両親は怒ったのか」
と合点がいった。
いやしかし母親が差別的な発言をするのを聞いたこともある (^^;)
おいおい、それは言ったらイカンだろっていうレベルの (ここには書けない)。
私も含め、人はしばしば不合理で矛盾した言動を取ってしまうが、なるべく 「それは発言してもいいことかどうか?」 ということは、常に考えるようにしたい。
特に生徒であったり子孫であったり、「自分の発言の影響を強く受ける」 存在に放つ言葉には、注意が必要だと思う。
私は今水耕栽培でルッコラとシソの育成を見守っているが、言葉も種のように着床 (植物の場合の類語が見つからない!) して、いつかその人の中で育ってしまう。
可能な限り、健全に。プラスの言葉が育つといいなと思うのだ。
お読みくださりありがとうございました (^^)
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