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「問十二、夜空の青を微分せよ 街の明りは無視してもよい」 恋愛チックな超解釈

問十二、夜空の青を微分せよ 街の明りは無視してもよい 
(川北天華)


 当時TwitterでTLに上がってきた短歌。久しぶりに思い出して、今またこの短歌の解釈について色々と調べてみました。


 天文学の基礎知識がある方は、微分をすると「星の明かりだけが残る」という知識を前提として、この短歌に込められた意味を解釈しているようですね。

数学の問題文を綺麗に踏襲しつつ、短歌の定型にも収まっている。作者がこの短歌を作ったのは高校時代、女子高生がこんな素敵な短歌を作ったなんて脱帽ですね。

 さて、本題。

 僕は、この短歌を見た時にパッと思い浮かんだのは、映画「耳をすませば」で主人公の雫と聖司が2人で朝陽が昇るのを眺めていたシーンでした。そこで、今回は学生の恋愛のエッセンスを取り入れて、この短歌について超解釈をしていきたいと思います。短歌も数学も学校の教科書レベルや趣味程度にしか理解していない人間の解釈ですので、それは違う!と思った方はスルーしてください。

どうやって解釈していくか

最初に人物と場面設定をしようと思います。そして、一つずつ区切ってそこに込めた意味を勝手に探っていきます。

①登場人物と場面設定

登場人物
 高校生男女2人組
 作者が女性なので、女子高生の視点で。
 名前は「Aちゃん」と「B君」にします。

場面
 “夜空が青い”時間帯。
 夕陽が沈んだ後、もしくは朝陽が昇る前。
 今回は、夕陽が沈んだ後にしてみます。
 場所は、小高い丘にある見晴らしの良い公園
   ※場所の設定意図は、後で書きます。

 ということで、今回は学校帰りの高校生男女2人組の1シーンを切り取った短歌として、これから超解釈を進めていきたいと思います。下準備はこれで終わりです。

②問十二

 「問十二」ということは、その前にも何かしら“問”があったのでしょう。お互いに他愛話をしたり、質問をしたりして、楽しく仲良く盛り上がっているのでしょう。そして、別れを惜しむかのように近所の見晴らしの良い公園で、2人で街の景色を見ながら会話を楽しんでいると想像してください。

 そんな時に、「問十二」とAちゃんからB君に質問をしたのではないのでしょうか。照れ隠しにちょっと冗談めかして、敢えてかしこまった言い方の「問十二」という言葉を選んだと解釈します。

③夜空の青を微分せよ

 “夜空の青”を“微分する”。なるほど、実に難しい。前述したように、天文学の知識がある方は、微分フィルターのような星の明かりを抽出することだと解釈できるそうですが、僕はそんな知識を持ち合わせていないので、微分について端的に考えてみます。

 中高生に分かりやすく解説する微分の説明を調べてみると、『微分=“傾き”』と表現されているのをよく見かけました。『微分せよ=傾きを求めよ』と訳して、今回は超解釈してみます。

 2人は、友達以上恋人未満。実は、AちゃんはB君に片想い中。B君はAちゃんの気持ちに気づいていない。いや、気づいているけれど気づいていないフリをしているかもしれません。街には夜の帳が下りはじめていて、まだ夜の深い闇に包まれる前だけれども夜空は青く染まってきている。

 Aちゃんは、この夜空の青を微分せよ、と数学の設問のように問いかける。微分=傾き、つまり、この夜空の青の傾き=夕陽が沈んだオレンジの空から夜の深い闇に染まるまでの傾きを見てよ、そして、夕焼けから深い夜の間に存在するこの夜空の青の傾きのように、私の想いが貴方に傾いている(=どんどん好きになっている)のを見てよ、という願いを込めているのではないでしょうか。

④街の明りは無視してもよい

 “街の明りは無視してもよい”、数学の設問でも見かけたことのある「〜〇〇でもよい。」構文が使われています。今回の“無視してもよい”というのは、無視可能性の事を指していると推察できるので、この前提で解釈を続けます。

 “街の明りは無視してもよい”、つまり、街の明りは無視して考えていいよ、となりますね。話し言葉に変えてみると、前の言葉と合わせて「この夜空の青を微分してみて。街の明りを無視して考えてもいいから。」となります。

 ここで、最初の場面設定を思い出してください。場所は、見晴らしの良い小高い丘にある公園。そこから一望できる街には明りがパラパラと付いており、少しずつ夜に包まれようとしています。見上げれば星や月が少しずつ輝き始めた青い夜、少し見下ろせば明りの灯る街。

 でも、今回の“問”は「夜空の青の微分」についてです。だから、“この夜空の青を微分するのに、街の明りはあまり関係無いから気にしなくていいよ”となります。“夜空の青”に“街の明り”は関係無い。前述した“夜空の青を微分せよ”に私の想いを重ねているのであれば、“街の明り”にも何かを重ねているのではないでしょうか。

 そして、「無視して“も”よい」です。「無視せよ」ではなく「無視してもよい」。街の明りを気にしてもいいし、気にしなくてもいいよ、となります。

 では、ここで“街の明り”に重ねたものは何でしょうか。それは、周りの友達やクラスメイトかもしれません。

 つまり、超解釈してみると、「街の明りを気にしなくてもいいよ。そして、街の明りを無視するように今は周りの事を気にしなくてもいいんだよ。」と伝えているのではないでしょうか。

 さあ、いよいよ超解釈のまとめです。

超解釈まとめ

 2人は帰り道、いつもの見晴らしの良い公園のベンチに座って他愛ない話をして盛り上がっている。そんな時、AちゃんはB君に一つの問題を出した。

問十二、夜空の青を微分せよ 街の明りは無視してもよい 

 少しずつ夜に染まっていくこの夜空の青の傾きのように、私は貴方にどんどん気持ちが傾いているの、どうかこの想いを考えてみてよ。私が貴方のことが好きだってことで周りの友達とかに冷やかされたりイジられたりしているのかもしれないけれど、この街の明りを無視するように今は周りとかを無視して私の事を考えてみてよ。考える上では、周りなんて殆ど関係無いんだから。

 …いかがでしょうか。これが、僕のこの短歌への解釈です。都会だと夜空を見る時に、どうしても街の明りは気になってしまいますよね。学生の頃の恋愛って誰が誰を好きだとか色々な噂話が気になってしまったり、自分も噂されるのではないかと思って好きな人を心の内に秘めたり、自分の気持ちに素直になれない事も多いですよね。だから、AちゃんとB君も2人で楽しく会話しながら帰る仲なのに、一歩踏み出せない状況なのではないでしょうか。だからこそ、Aちゃんは夜空の青さと自分の気持ちを重ねて、B君に問いかけたのではないでしょうか。

 ということで、僕の超解釈は以上です。完全な主観だけで語りました。この解釈もアリかも!と思ってくださった方は、スキを押してくれると泣いて喜びます。

 読んでくださって、ありがとうございました!

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