あなたが忘れても、わたしが忘れても
これは自らへのオマージュだが、この懐古的かつ憂鬱的な感情というものだった。
何処を向いても、何を見かけても、なんだか懐かしく感じられるというような、午前七時のまだ涼しい風と木漏れ日だった。
その頃の私はあまりにも臆病で、幸福的感情を持て余して、いつか無くなるのが怖い、と、また、精神的孤独が失われたことの寂しさ。
眠れなかった私は飛び起きて逃亡を企てた。ドアを静かに閉め、エレベーターのボタンを押す。私は泣いていた。
まだ日が昇る前だった。駅の方向に照明するのをやめたタワーが見え