マガジンのカバー画像

感覚或夢

29
眠る直前の、想像力豊かな瞬間
運営しているクリエイター

記事一覧

春と夏、青とグレーの臨界点、輪郭が蝋みたく溶けて、微睡に沈んで夢の中へ、紫陽花の淡さが窓を蹴破って、花のような雨と踊りだした、いつか蒼い落雷に打たれ、脆く潤んだ瞳孔は、流線的柔らかさを含有する火焔、疼き出した痣は宇宙、丁寧に星屑を乱反射して、夜を越えて、朝鳥の囀りに微笑み返す。

独白
3年前
2

シーツの上にはドライフラワー、金魚の死骸、カーテンの隙間から溢れた砂時計の金平糖、最後の一粒落ちきって暗闇、遠くで響くオルゴールはセピア色、加速したメリーゴーランドは遂に、繭を弾けさせ、煌めいて舞うは鱗粉、電飾は檸檬色の絢爛、眩しさに耐えかねて目を開く、その虹彩が反射したのは、

独白
3年前
3

氷柱みたいな鬱、いくつも刺さってしまって、隙間なく黒鉛のノート、無味、色彩すら死亡、バイタルサインと真っ白なシーツ、祈りの日々、窓から見た月、砕けて散らばった氷、湖面、結晶化して、気づかない、見慣れない夢、気づいて、言葉にできない、傷つけないように、そっと包んで、大切に、大切に。

独白
4年前

幾重にも堆積した水色の空、手を伸ばしてひと掴み、指解けど空虚、覆水この手に帰らず、重力に逆らえるのは、少女が不注意で手離した白い風船だけ、しゃがみ込んで栓を抜けば、渦を巻いて、世界が逆転する、鬱は溶けてゆく、ヘリウムや熱せられた煤は急速に落ちてきて、代わりに涙が空へ昇りはじめた。

独白
3年前
1

三寒思案、吹雪は止まず、不信、嫌悪、私の心は弱っていた。手足の悴み、頭痛、どうだこの惨状は。ブルータス、後悔はしていない、ただそれは、鬱の原因であるだけだ、傘をたたみ、盲目の星座を見よ。それは曇天に隠れて、青白く光るだけで、当たり前だ。辛いときには、だんまり決めて失笑が吉。

独白
3年前

今日も振り翳すは正義か?いいかい、道徳は、忘れちゃいけない。動けないんだ、鉄剤、或いはお前の猫背、冗談だ、血を血では流せないが、油汚れは有機溶媒で洗うのがよい。罪は償うまでなくならないが、償えないからなくならない。閉じろ、パンドラの猫箱。重ね合わせのまま、二度と戻ってくるな。

独白
3年前

背面黒板に二人ぼっち、泣き止ませられない事申し訳なし、理由が解らないんだもの、曲がり角は慚愧にて逃亡、夕日に焼かれた空と湖、これ以上ない赤で、動悸、過呼吸、足が痺れて、目眩、ふらり、提灯に嫌気、放置しすぎた綿菓子、口の中すら痛い、泥だらけのワイシャツでも、仲良うなれるかしら。

銀杏が金木犀が彼岸花が、天球を染めていく、何故か?だってね、時間軸は逆行しているんだ。もう、帰る時間だよ。然して電灯は付けたまま、消したらそこでお終いだと思ったから。指が震えるのを、呼吸が止まりそうなのを、何でもない風に繕って、平気な風を装って、微笑した。或いはそれは苦笑だった。

独白
3年前

重苦しい毛布から抜け出して、ト音記号で丑の刻、トンネルの中では寡黙、向日葵は眠って、外灯一つ無い道路、寒さで凍るか、まだ早い、木々を抜けて、鈴の音に振り返れば、神様、平伏するより他に無し、無意識、涙、私はここへ来た、鳥居の下で迎える、早朝5時のオリオン座、静かに、夜が落ちていく。

独白
4年前

誰もいない教室、揺蕩う微熱、ミルクティーが喉の奥を凍らせて焦がす、窓際、前から四番目の席、余白の多すぎるノート、あの子がここで泣いていた日も、命日すら忘れて、溜息、怠さ、境目を失って、溶けてみたい、もう少し傍にいて、何も言わないで、カーテンを閉めて、ここは私だけの箱庭だから。 

独白
4年前

透明な空、涙に溶けて、指で鳥を描くも、透ける、防護服に包まれて、水風船に溺れる、白昼夢、まやかして、触れていたい、遠くでチャイムの音が木霊する、知覚、体温が下がる、君が居なくなった、雪が降らなかった、焦燥、空回り、赤信号、寒い、振り向かないで、まだ覚えていて、ごめんね、じゃあね。

独白
4年前

少女は今日も安易に、永遠を誓いたがる。春雷に驚いて臍隠すように、聖なる夜に眠るように、地面に寝転んで星を見るように、毛布に隠れてひそひそ話をするように、大団円で終わる映画のように、御伽噺の天使のように、ねえ先生、お空は、どうしてあんなに青いの?それはね、お前を食べるためだよ。

独白
3年前

今日も、夜を歩く。僕らが手に入れたのは、闇ひとつ。真っ暗な水族館へ忍び込み、そのまま、海へ。砂を、サラサラ掻き分けて、帰り道は、遠回りしよう。夜は、ゆっくり歩かなくちゃいけない。急ぐと、魔法使いにカナチョロにされちゃうんだ。本当だよ、しかも、不可逆。そう、バイブルに書いてあった。

独白
3年前

夏の手を、絵具で真っ青にして、雨の中、ずっと歩いていて、赤い階段を上ったり、ブランコに乗った、多量に反射した日光に服を濡らしたり、虹が消えれば、蜻蛉の大群が空一面を覆ったり、曲がり角に大きな向日葵が咲いていたり、トンネルの中では手を繋いで、そうして決まって泣いていて、鳥居を潜る。