戸魚

あんまり吟味せず書くところです|もうちょっとしっかりした置き場所: https://s…

戸魚

あんまり吟味せず書くところです|もうちょっとしっかりした置き場所: https://slib.net/a/11332/

最近の記事

そこにいました

あの山で人がしんで しろい花弁の振りつもる 乾いた晴天 ひとり ひとり ひとり また もういなくなって そのたびごとに うつくしい座敷 (ブロック塀の透かし) 川をながめる (缶ビールと、子どものためのジュース) あの山で人がしんで それももう だれが語り・つぐ 四月一日や 帰郷 再会 それらに なにを期待していたのだろう 振りかえれば 青い山脈だけが ただもう もう

    • 青いまちと電車

      私と 電車でかえろうね 都市は青く光って これから今日のおしまいに向かうもの でも ちょっと寄り道してもいいよ 航空灯はなにかの郷愁 ぽかんと開いた休み時間だ たいへんなことと 家のあいだに なんでもいい帰路があって すこしだけ自由になれる あ また光った かえろうね それが決まっているから くねくねした道も喜んでいられる いつもと少し 変えてもいいよ ファミレスで食べて帰ろうか きょうはたいへんだったね だから 私たちは見なれぬワンピースをまとって ずるずるして

      • cottage

        小別荘 子どもの裸足が 夜露にぬれる 背の低い草を ふんでは 翠髪、 山は煙る とおくから流れてきた 霧の おそろしさも介せず 子は咲っている 母の弦が弾かれ こぼれた七音の 漂う  みずの粒とともに この夜を覆う雨がはじまり 音の靄は うつろっている あの山脈まで ゆくのだろうか いつかたどり着く高山 ここへ立っていようか知ら すでに失ったものだとしても よるは閉じているのだから 当たり前のように ぬれる 子どもの裸足が 小別荘

        • き・みの背骨に花がさく

          き・みの背骨に花がさく 囲い・籠め温室の底で 苔むしていく踝をかかえ 宙天は閉じられる あたたかな錠が降り じきに流星が垂れ下がるよ 目じりの 卑しく逆向いた睫をとおって ほおに透ける血いろのうえへ おろかなうまれたての産毛

        そこにいました

          ほんとうにただの夢日記

          (やっぱりわたしは夢が好きだよ ネエ)  下町そしてサイバーパンク わたしはわたしでおんなであるが、ロールとして男である。ん? なんらかの落語をしたじきにしているけど、翻案みたいな映画があるのだ。(なんかそれを、自分たちで上演する)まちは薄暗くて、ちらほらある娼館からあかりが漏れ出る、彼女らは「終わったあとに」なけなしの金で飯を食う、それが素うどんであれおでんの残りものであれ (たぶん、この段階で、わたしは登場しない)  伊勢志摩にもういちどいく、という夢もみたが。箸休め

          ほんとうにただの夢日記

          かき集めて、焚き上げる

           祖父が庭先で落葉を燃している。それがなにか、催しごとのように思ってわたしは遠まきに見ている、日産サニー  かつての子どもは手指のしもやけを気にして、手入れの方法を雑誌ふろくの小冊子から学んでいたらしい。母の小棚を引っかきまわして、興味もない、小学生のおしゃれの頁を捲っている。指紋にまとわりつく藁半紙の、粉っぽいそれを畳へ擦り落としながら 祈らせておくれよ ただそこにあった夏と冬のあいだ

          かき集めて、焚き上げる

          泥土梨夢

          水が降ってくる 夜想(野草) 森の奥から 呼び声 it calls your life or タイを正して この制服で 濡れた樹間に入るとは とても佳いもの なにかに呼ばれ  呼ばれたいという欲望   希え    みちびかれていたい     この私の意思など           いらない 泥中へしずんで還らない(帰らない) もう十分だ もうなにも求めないから、許してほしい この糸をあざやかに裁ち浮遊する その歌のなかへ 壜詰めしたらもうなにも変わらない ただそこに満た

          泥土梨夢

          嵐、台風、窓の外について

          窓外は嵐の海 Ⅰ 嵐の底 閉ざされていること ここから先にも、あとにも、なにもないことは安心で、ぱらぱらとふる雨粒ではなく、吹きすさび世界を覆ってくれる霧のような嵐、その底にいる夜半 どことも知れぬ山中あるいはビル群のさなかに窓はあり ただ嵐や夜がそこから先を閉ざしている 安心 安心して意味なく揺蕩うがいい(あんたの運命は揺蕩っておる)冷えきった深海のくらげ それよりなまあたたかいこの台風 なにもかも赦された非常事態 だから沈まんとする船でいまわたしは わたしは ここでし

          嵐、台風、窓の外について

          母とむすめの幻視

          母子は市外の小さな資料館、 あるいは公民館のワークショップ、休日の、ひとのいない遊園地。 それが休日だったということ。 おさない子どもが、葉ずれの音をひろいながら眼を細めている、 なんだって有りうるじゃないか。 ルーフをあけたちいさな車の、 道すがらがもっとも楽しくて、 安心なことが、どれだけ、 だから、おもいでを辿るように、 いつか言えなかった気もちを指で捲りひらくように、かざす幻燈の、 いくつも過ごした日々が織り、つもっていくほど、 当然のように、時間のおもみが それがこ

          母とむすめの幻視

          祈れ、一条の存在のまま

           いろんなことができず、いろんなことができている。できた事なんか、私たちのこころには残らない。当たり前のことは、はなから眼に映っていない。  たまには、他人と分かりあおうとしてみたり。でもそこに距離がなければ、やさしくなどなれっこない。私・たちは別の存在ですから。そう思う以外に、他人を尊重する方法があるだろうか?  ほとんどのことは、人間どうし、口を出し合う領域になんてないのではないか。この、存在の隔たりを――間隔の孤独を引き受けながらでなければ、尊重など、できないのではな

          祈れ、一条の存在のまま

          MY LITTLE 2000s

          オホーツクの凍る海のむこうで それは流れている 音楽 沈みゆく惑星の環がかつての 虹色だった 地球のむこうの海へいこう 夢想が このなかにあって ただ 漂っている星雲 穹窿をくぐって よころびの旅よ 銀河のはての泉 夢をみる この星が できたころの 嵐のことを考えている 暗闇にともる篝 その火はまだ手にいれられない 名もない夜 想像力だ このエアコンのおと も 切り出した氷の ひんやりした鏡面を 覚えている 夢である 星嵐はいつでもそばにあった 床に広げたドリルがかぜで

          MY LITTLE 2000s

          いくつもある橋

          「攫われないようにね」 紅い波に つれていかれるよ いつでも待っている いくつもの手をのばして かえろうか██の果て 彼此の滲んだこのあわいに 赤赤と声の跡だけがのこる 以下、memorandum かえらない過去を待つ 帰ってこないとわかっていてなにを待つか やっぱり未来なのかな あーなんかちがう 来る/来ない可能性どっちも待つ? いや待っている間結果が出ることはない(世界が決まらない)、来たらそこで終わりだ 大事なのは、「来なかった」が確定しないことではなかった

          いくつもある橋

          慮ろうか

          蔦 廃墟(そのあとの、世界) 生活の痕跡 時間の痕跡 痕跡、あったことの そこから流れ出している 地下道 石壁  あの濡れた道である はじまり いま世界に陽がさした 石造りの遺跡が、 その表面が 風雨にさらされて 巨木に埋まってゆく偶像 極楽鳥 このほしに埋もれた 生活の 跡 なにかがここにあったこと 不在の痕跡が その抜けた穴だけが ある 読めない筆跡 半分だけのお顔 弧をえがかないアーチ みなみなさま ――ひとつにはこうのたしょうをはかりかのらいし

          慮ろうか

          帰れたり、帰れなかったり

           私が受け取った主題の距離が近いので、歩いて帰ろう(斉藤和義)、Bob Lennon(浦沢直樹)、新世界より(の、家路)をだいたい同じものだと思っているふしがある。  あと、色あいとして梨本P「惨事のハニー」「リピート」が頭の中で近い場所にあって、数珠つなぎに思い出されたりする。そこまでいくと、Life is Strangeの「Obstacles」も出てくる。これは完全に作品に引っ張られている。私の中でこれらは、どうしようもないことがどうしようもなく過ぎ去ったあとのエンドロ

          帰れたり、帰れなかったり

          間隔、あるいはparade

          学生のころ書いた短篇の一部 供養です  液体はそうしているうちにも、机上に広がっていく。「失敗だ」という言葉が聞こえた。頭の奥、あるいは触れることのできない過去や、体が憶えているあらゆる遠い場所から。  これは失敗だ。失敗したのだ。  皮膚全体が浮き上がってヒリヒリしている。 「失敗してごめんなさい」  少年が口篭りながらそう言って、小さくうずくまって震えている。それは、誰であったか。のぞき込んで見えるその顔は、自分だったのではないか。 「酔ったのか? 珍しいな。まあ、拭き

          間隔、あるいはparade

          それで、合ってる?

          過ぎ去った 夏だけが 私たちのあいだに横たわる 夏について いつも語るのはここにない夏のことだ いつかなくしてしまった 得たかも分からぬ思い出 望んでいただけで 手に入れることができなかったものを 失ったと言って安心している(それで、合ってる?) ほんとうは? わたしは、わたしたちは、あの夏にいたのではないか? あの日落としたボールに触れえないとすれば、もうたしかめるすべはない。 痕跡とは失ってしまったというこのこころ であれば。 いつか、わたしは夏を持っていたのではないか

          それで、合ってる?