黒衣の人

黒色こくしょく
ころもを纏う人
裾は重さでかたく張り
生地も判らぬほどの黒が
あなたに寄り添っている

風もない夜
あなたの
たましいのするどさが
なにも彼もを裂いてやまないのに
月あかりも
寄る辺ない灯火も
紫檀の文机に跳ね返った
一抹の晶光

しんと吸い込んでは やけに
その瞳だけが煌いて

それでは
これを
着ていましょうか

灯が消えたとき
乳香と 細い指先が
わたしを掻い潜って
後れ毛を耳へかけた
あなたの

あなたの精神が
その黒色にうつる
鋭利なそれを
呑み込んで音もなく均す沈黙
あなたの

あなたの瞳が
わたしにふれていました

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