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短編集 ~温~

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単発小説とかそういうのの置き場です。あたたかみのあるお話(作者による主観)が置いてあります。
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2020年11月の記事一覧

【完全版】 青森の救世主 (上)

【完全版】 青森の救世主 (上)

☆はじめに☆

 本作は、カクヨムにて開催された個人設営のコンクール「草食信仰森小説賞」への応募作の完全版です。応募テーマは「信仰」でした。
 このような感じの内容にも関わらず、応募規定の最大値・1万字を軽く越えてしまったため、2000字ほどを削りました。
 今回、主催者の方に転載の許可をいただき、若干の手直しをしてここに掲載するのがその全長版=完全版となります。それではお楽しみください。

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【完全版】 青森の救世主 (下)

【完全版】 青森の救世主 (下)

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 会計の際に「……ワインを頼まれたんですか?」と店員と一悶着になったり、車に乗る前に彼を撮ろうとして「写真」の概念を伝えるのに苦労したり、幾つかの騒動はあったが俺たちは車に乗り込んだ。  
「えぇっと……狭い海と広い海とがあるんですが、どっちに行くんですか」
「広い方です。おっきぃ方さ行ってくだせぇ」
 俺は胸をなでおろした。もし狭い海、日本海へ行くと言い出したら

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【短編】ビジュアル系バンドが、心霊スポットで、熱々のおでんを食べて、呪われる話【三題噺】

【短編】ビジュアル系バンドが、心霊スポットで、熱々のおでんを食べて、呪われる話【三題噺】

 ビジュアル系アマチュアロックバンド・艶夜華~adeyaka~は、いま危機に直面していた。
 結成して2年目、もはや崖っぷちとも言ってよかった。

 86回。

 これが彼らの新曲の、1週間の再生回数である。

「なぁ、こんなにいい曲なのに、なんで伸びないんだろうな?」
 ボーカルのkyoが、動画の再生回数を見て誰に向かってとでもなく呟いた。 
 八畳の和室、kyoの自宅アパートである。整頓されて

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