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小説❤︎春風に仕事忘るる恋天使 第一話

あらすじ
恋愛の成就を生業としているキューピッド株式会社の契約社員である青羽翔は、社内で発生した恋愛崩壊事件の緊急対策を命じられ、人間界へ向かうことに。
正社員である天使たちの大半が機能不全の中、どのように恋の矢と赤い糸を紡ぐのか。そして、パートナーの美香との関係は?
春の浮かれポンチな雰囲気を背景に、日本中の恋愛を背負って立ち上がる主人公の活躍にご期待下さい♫

『春風に 仕事忘るる 恋天使』

 仕事に向かう道中、上司からそんな念報(メールみたいなもの)を受信した俺は首を傾げた。

 ——どういう意味だろう?

 まあ、職場につけばわかるだろうと足を早める。
 会社に着くと、いつもと違う天使が受付をしていた。

「キューピッド株式会社へようこそ。お客様ですか?」
「一応社員だよ」
「そうでしたか。それでは、こちらで魂認証してください」

 その声を受けて、俺は社員用ゲートに向かい念を放つ。
 すると、俺の魂を認証したゲートが俺の情報を表示する。

「えっと……青羽翔さんですね。え? 人間さんですか?」
「ああ。恋愛部の契約社員だよ」
「そうでしたか、すみません。人間の方にお会いしたのは初めてでして……」

 この会社で俺(人間)を初めて見る社員は必ず驚くからもう慣れている。

「気にしなくていいよ。それよりも、いつもの受付の娘は休み?」
「そうなんです。今日はあちこちでお休みが発生していて急遽応援でして……」

 はにかむその娘に手を振り職場に入ると、さすがの俺も異変に気づいた。
 たしかに、正社員の天使たちが半数も出社していない。出社している社員は各所からのクレーム念報の対応でおおわらわだ。

「翔くん、至急頼みたいことがある」

 そう声をかけてきたのはラファエル大天使。恋愛部の部長だ。俺の雇い主であり上司ということになる。

「ラファエルさん、何があったんですか?」
「さっき念報で送った通りの状況だ」

『春風に 仕事忘るる 恋天使』

 音にして十七文字。文字にして十一文字。

 ——天使じゃない俺が、こんな暗号みたいな文章の意味を理解できるわけないだろ?

「ああ、そっか。すまん、天使演算能力を持たない君には説明不足だったかもしれない」

 俺の不満そうな表情を見て、ようやく俺が状況を理解できていないことは伝わったようだ。

「我々が、春風に恋愛促進の効果を含ませていることは知っているだろう?」
「はい」

 もちろん知っている。
 当社にとって最も注力している市場である人間界の某国において、卒業式、花見、入学式、そしてゴールデンウィークを迎える春シーズンはクリスマスに次ぐ大商戦期間である。営業の天使たちが恋愛機運を高めるために人間界に赴きあちこちで春風を起こす時期だ。
 その風を浴びた人間たちが恋愛を成就することで、天使たちは恋愛成就の幸せ感を会社の収入として稼ぎ貢献する。

「実は昨夜から、我が恋愛部の天使たちがその春風に当てられてしまったようでな……大多数が長期病欠を余儀なくされた」
「え!?」

 俺は唖然となった。
 ちょっと待てよ。春風を操ることが仕事の天使たちが、その春風に当てられるなんて……キャバクラ嬢が同僚のキャバクラ嬢にぞっこんになっちゃったくらいの異常事態じゃないか?

「……原因は?」
「まだわかっていない。今、ミカエルCEOが緊急調査部隊を組成して原因追及を始めたところだ」
「そうですか……」

 原因はいずれはっきりするだろう。でも時間はかかりそうだ。
 ホッとできる状況ではない。

「で、俺に頼みたいこととは?」

 嫌な予感しかしないが、聞かざるを得ないだろう。

「そう。そのことだ。営業天使の大半が休暇に入ったことで、人間界での春シーズンの営業活動が低迷している。原因追及を待っていてはせっかくの刈入れシーズンが終わってしまう。だから、君には人間界に戻って天使に替わって春シーズンの恋愛成就を実現し成果を刈り取ってほしい」
「ええええ!?それは無理ですよ!」

 流石にビビる。うちの会社には約三兆(正確には約三兆百六十六万)に及ぶ天使社員がいるんだろ?
 そのうちの三十%が恋愛部として、その五十%が病欠に入ったと仮定したらその影響は約五千万天使分になる。そんな天文学的な数の天使の役割を、一契約社員の人間である俺が補填できるわけがない。

 しかし、ラファエルはニコリと笑うと、無常に言い放った。

「無理じゃないさ。できないならハデス株式会社に出向してもらうから、荷物を整えておいてね」

 極めてにこやかに地獄の宣告をする上司。
 ちょっと待てよ。その発言……人間界なら速攻パワハラ認定なんだけど?

「……わかりました。と、とにかく、人間界に行ってみます」
「ああ、よかった。さすがはわたしの部下。いい判断だよ」

 満面の笑みを見ても嬉しくない。むしろ心臓が縮む思いだ。

「ああ、そうだ。一人では大変だろうと思ってね。パートナーも選定しているんだ」
「パ、パートナー?」

 それはありがたい……なんて気持ちは一切起こらない。
 嫌な予感が十倍に増すだけだ。

「うん。君と同じ派遣社員の左近美香くんを君のパートナーにしてあげよう」
「え!?」

 覚悟はできていたつもりだった。
 でも足りなかったようだ。

 まさか、恋愛部派遣社員の中でも、最も鈍臭いと評判の、あの『美香』を押し付けられるとは……

      続く


おまけ:あとで消しますが、キャラ設定です。

ミカエルCEO
ラファエル恋愛部長
ガブリエル婚姻部長
ウリエル熟年愛部長
ラグエル念令部長
イオフィエル天使データセンター長 
俺(青羽翔) 恋愛部派遣社員(諜報員)
相棒(左近美香)念令部派遣社員

あと、創作大賞への出品作品の宣伝です(^^♪

よろしければ応援くださいね🎵


真面目にプロット書いて執筆した超本格小説です🎵


多分ほとんどの人が知らないであろうw私がまだまじめだったころの記事ですw……とお茶らけていますが、冗談ぬきにM&A考えるときの教科書として使えるレベルだと思います(私も、たまに自分のこの当時の記事を見直しつつ案件を進めていますw)
ぜひ、ご参考にしてくださいね🎵

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