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読書熊録

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素敵な本に出会って得た学び、喜びを文章にまとめています
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2021年5月の記事一覧

コロナ後の世界を考えるための7つのキーワード(クーリエ・ジャポン編「新しい世界」より)

コロナ後の世界を考えるための7つのキーワード(クーリエ・ジャポン編「新しい世界」より)

クーリエ・ジャポンに掲載された世界的な学者のインタビューをまとめなおした「新しい世界 世界の賢人16人が語る未来」が面白かったです。「サピエンス全史」のユヴァル・ノア・ハラリさんや、「実力も運のうち」が話題のマイケル・サンデルさんなどそうそうたるメンバー。インタビュー全て新型コロナウルス感染拡大後に行われていて、コロナによってもたされたもの、コロナ後を考えるために必要な考え方が詰まっている。キーワ

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夢と歯車ー読書感想「本のエンドロール」(安藤祐介さん)

夢と歯車ー読書感想「本のエンドロール」(安藤祐介さん)

単調な目の前の仕事に、どれだけの意味があるだろうか。あるいは反対に、夢みたいなことばかり考えていて、地に足がついていないのではないだろうか。仕事に向き合おうとするほど心を離れない葛藤がある。安藤祐介さんの小説「本のエンドロール」は、葛藤に苛まれる人にこそ響く物語だった。「5月病」に陥った新社会人にもぴったりだと思う。講談社文庫、2021年4月25日初版。

印刷会社は裏方かメーカーか舞台は印刷会社

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「三体Ⅲ 死神永生」の結末を妄想する

「三体Ⅲ 死神永生」の結末を妄想する

超弩級宇宙SF「三体」シリーズの最終巻「三体Ⅲ 死神永生」が、いよいよ5月25日に発売される。これまで読者の予想の上の上の上をいく、凄まじい展開のドラマ。そのラストを妄想する時間は、今しか残されていない。ということで、きっと当たるはずのない結末予想を書き残したいと思います。「三体」「三体Ⅱ」のネタバレを盛大に含みますので、以下、ご注意ください。

宇宙文明の公理三体は端的に言うと、地球より遥かに高

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現実を追い越してくれる物語ー読書感想「ポストコロナのSF」(日本SF作家クラブ編)

現実を追い越してくれる物語ー読書感想「ポストコロナのSF」(日本SF作家クラブ編)

閉塞した現実社会を、追い越してくれる物語を見せてーーそんな願いを叶えてくれる短編集が「ポストコロナのSF」でした。19人の小説家が参加し、新型コロナウイルス感染症の流行後の世界を共通テーマに置いている。パラレルワールドから遠い未来、コメディタッチもあればスペースオペラも。コロナの一語からこれほど広い世界が創造できる。そのことに驚き、希望を抱けました。日本SF作家クラブ編。ハヤカワ文庫JA、2021

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なんでもないことのくりかえしー読書感想「46歳で父になった社会学者」

なんでもないことのくりかえしー読書感想「46歳で父になった社会学者」

育児への怖さを少し和らげてくれました。工藤保則さん「46歳で父になった社会学者」。世間から見れば遅咲きかもしれない父親としての日々を、飾らずに語る様子が微笑ましい。育児を切り口にした社会批判や、社会理論を敷衍した育児論ではなく、社会学者がただただ家庭に向き合っていく。育児は「なんでもないことのくりかえし」がベース。だけどそれが、どこまでも愛おしいことを教えてくれました。(ミシマ社、2021年3月2

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